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4,ギルド加入

な、なんだこれ

イベントか?チュートリアル無視してお兄さんに気に入られるとこんなことになるのか?


「あ、暗殺者ギルドですか…」


「そう、暗殺者ギルド。君にはぴったりだと思うんだ。」


お兄さんが目を細め、若干の怪しさを込めて口角を上げる。


いやぁ…こういうイベントごとは回避せずに、突っ込んでいくのがゲームの正しい楽しみ方なんだろうけど…でも暗殺者ギルドかぁ……ってことは、あれだよな、あれがあるんだよな………うーーーん、申し訳ないけどここは断るしかないなぁ。


私はいまだニコニコとした表情を崩さないお兄さんに対して断る旨を伝えた。


「そうか…君のあの動きを見る限りこっちの世界でもかなりやっていけると思うんだけどなぁ…一応理由を聞いてもいいかい?」


断ればすぐに引くか「話してしまったからには仕方がない…」と切り捨てられるかと思っていたが、存外粘りを見せてきた。

まぁ、隠してても意味のないことだし話してもいいか。


「実は、私は血がちょっと苦手で…」


そうなのだ。これこそが私が暗殺者ギルドへの加入を断った最大の理由!私は血が苦手なのだ、ちょっとどころではなく、大の苦手なのだ!

理由は特にないが、昔からとにかく血がダメだった…予防接種とかは大丈夫なんだけど、血液検査ともなると私は大暴れをした。

なんでかなぁ…ふつうは刃物や鋭いもので傷つけられることを怖がるんだろうけど、それよりも血を見るのが嫌なんだよなぁ…お母さんも私の血嫌いには苦労してたみたいだし…アレルギー検査が特にひどかったって聞いたことがある。


『メッセージが届きました!』


んん!?メッセージ?このタイミングで?お兄さんが目の前で私の勧誘を続けてるんですけど!

というか「直になれる。」とか「昆虫系の魔物から慣らしていこう。」とかどんだけ私をギルドに入れたいんだ!人員不足なのか!?暗殺者ギルドは!!というか暗殺者ギルドが人員不足になる世界ってどんなだよ!!


チュートリアルおじさんの話を聞いていなかった私は四苦八苦しながらメッセージを開く。


『本作品は幅広い年齢層の皆様に楽しんでいただくべく、フィルター機能を搭載しております。出血表現や、NPCの遺体表現。装備品の露出度制限など小さなお子様にも安心して楽しんでいただける機能が満載です。気になる表現がある方は、設定のフィルター機能からオートフィルター。または、セルフフィルターを選択し設定を行ってください。』


はい。出ました、フィルター機能。いや、ね。こんな機能今時どんなゲームでも搭載してるのよ。でもね、リアルさを追求するVR型ゲームっていうのは大抵流血表現をゼロにすることはできない――――

できる…だと……

キタ…キタナァ!!私の時代がキタ!!入る!入るよ!あたし暗殺者ギルド入る!

んなレアイベントを自分の身体的事情でスルーするのはあまりにもつまらないと思っていたんだよ!!


「――――でね、どんな生物でも血が出やすいところや出にくいところがあって………」


「入ります。」


お兄さんの顔を見上げて私ははっきりと口にする。


「ん?そうかい!いやぁ、君ほどの人材をみすみす手放してしまうのは心苦しかったんだ!血が苦手だというのに、君の勇気ある決断に感謝するよ!」


お兄さんは心底嬉しそうに私の入会(?)を歓迎してくれる。

やってやる!フィルター機能でグロ表現は全部、全部ゼロにした!これから私が狩ることになるのはすべて人形!ぬいぐるみ!そこに魂はあれど、血が通っていなければ何の問題もありゃせんのだ!



――――――――――――



「詳しい話はギルドでしよう。私に付いてきてくれ!」


お兄さんはいまだ興奮冷めやらぬといった感じで私を案内してくれた。


私たちは人通りの多い道を避け、どんどん暗がりのほうへ進んでいった。

さすがは殺人ギルド。国からも目をつけられているのか、かなり入り組んだ道を来たため通常のプレイでは発見することができないだろうと確信する。まぁ、利用客には国のお偉いさんもいるんでしょうけど。もちろんターゲットにも。


そんなこんなで裏道をぐるぐるした私とお兄さんは一つのマンホールらしき鉄塊の前にいる。


この世界にマンホールを扱うほどの文明が発達しているのか定かではないが、少なくともここ以外でマンホールを見かけなかったため、暗殺者ギルドの看板みたいな役割をしているのだろう。


お兄さんがマンホールを開け、私に入るよう促す。


「さぁ、ここを降りたらすぐだ。」


勧められるがまま私はマンホールに吸い込まれていく。マンホールの底は見えず、それなりに深い穴なのだと感じた。

鉄製の足場を踏みしめ、降りていった先には、某探偵アニメ御用達のCM扉が。あそこまで大きくはないが壁に揺らめく松明もあり雰囲気は抜群だった。


「それじゃあ入ろうか。」


体も頭脳も小さい私をよそに、お兄さんは慣れた足取りで扉の先に入っていく。


扉が開いているのに中が見えないのはゲーム上の仕様だろうか。白い靄が私の視界を阻んでいた。

少しばかり足がすくんだが、このまま立ち往生してお兄さんを困らせると申し訳ないので意を決して――――

なんてこともなく、お兄さんが入ったすぐ後に私もズカズカと靄に突っ込む。


『暗殺者ギルドに認められました。暗殺者ギルドに加入しますか?』


白い靄の中で私の脳内にメッセージが届く。

先ほどのものとは違い、メッセージボックスを開く必要がなかった。


「はい」


『プレーヤー、チョコが暗殺者ギルドに加入しました!』


再び脳内にメッセージが鳴り響く。

これで、私は正式なギルドメンバーだ。

あと一歩でも動けば暗殺者ギルドの面々が私を待ち構えているだろう。


「ここからがゲームの始まりよ!」


さぁ、気合十分で行こうじゃないか!





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