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23,荒野の塔 2

誤字報告ありがとうございます。

修正させていただきました。

 カトリーナと別れたのち、私はダンジョン街に向かった。

 ダンジョン街への道は歩いても一日ほどで付くと言われたが馬車のほうが早いそうなので、それに3000Gで乗った。



 草木がちらほらと見える荒野を走り、私たちは半日ほどかけてダンジョン街へたどり着いた。ついた時点で時間も遅かったのでちょっとだけログアウトしたのちゲーム時間の朝にまた戻ってきた



 ガメルもかなりの賑わいに思えたが、ここに比べれば都会と街の商店街ほどの差があるだろう。


 ダンジョン街イーストン、別称王都イーストンは溢れかえらんばかりの冒険者と商人で大盛り上がりだった。これで通常運転だと言うのだから恐ろしい。


 イーストンの正門から東側に見えるのはイーストンの王城。

 白い城壁が淡白な荒野に美しく映える、現実なら確実に世界遺産であろうと思わせる麗美な城だ。

 その城の北に聳えているのがこの国自慢のダンジョン「荒野の塔」だ。

 先細りの円柱が地面からまっすぐ生えており、おそらくレンガ造りであろうそれは塔であるにもかかわらず内部では下に下に降りていくものらしい。



「ようし、まずはいっちょ行ってみよう!」



 私は人ごみの中に飛び込み、懸命にダンジョンを目指していった。




 ……




「だぁ!…やっと出てこれた…」



 まだ朝だというのに大変混雑しているイーストンは塔にたどり着くだけでも一苦労だった。


 人ごみの中で私の小さい体は流されて大変だった。もう二度と入りたくない…

 目的地のダンジョンは近くで見ると遠目で見た時よりもかなり大きく見えた。

 そのふもとには露店や商人の姿はなく、冒険者ギルドのマークが施された建物がいくつか並んでいた。ここで依頼や準備を済ませるらしい。



 鍛冶屋、鍛冶屋…あっ、あった!



 私はダンジョンに入る前に以前からずっと考えていた装備を作ってもらうことにした。

 ここならコボルトの素材をある程度出してもばれないだろうし、公式イベントでは着れないかもだけど…


 とにかくいつまでもこの初期装備というのは忍びない。コボルト素材で私の装備が作れるかお願いしてみよう。



「すみませーん…」



 私は鍛冶屋の売り場で、既製品の手入れをしている男性に声をかけた。



「はいっす!何かおもとめで?」



 男性は手入れの手を止めることなくしっかりとこちらを見て私に反応する。

 さすがはダンジョン街の店員と言ったところか、お客の対応が手馴れている。



「すみませんこの素材で軽装備を作っていただきたいんですけど…」


「ちょっと見せてもらっていいすか?

 あー、コボルトの毛皮っすね、お嬢さん一応だけど職業は?」


「盗賊です。」


「ですよねぇ…あんまり向いてるとは言えねぇっすけど、見たところ初心者用の装備してるみたいですし。まぁ、今よりはいいものになると思うっすよ。どうするっす?」



 男性は素材と職業を聞いだけで、ぱっとそこまで判断してくれた。

 すげぇ…まさしく職人って感じだ。この人に売り子させるってどんな職場なんだここ…



「あの、お兄さんが作ってくれるんですよね?」



 少し気になったので聞いてみた。



「いんや、違うっすよ?俺はまだ見習いなんで中にいる兄貴たちや親分が作るはずっす!今は中で作業中なんで出てこないっすけど、いつかお嬢さんがすごい素材を持ってきたりすれば中から出てくるかもっす!」



 やっぱり違うのか…レベルが高い職場だなぁ、こんな人たちに鍛冶希望のプレイヤーはかなうのか?それに、すごい素材か、これもNPCとの出会いイベントみたいなものなのかな?マザーコボルトの素材が少し惜しくなってきた…



「お嬢さん?」



 男性が反応の無くなった私をいぶかしんで私の顔の前で手を振っている。



「あ、すいません。少し考え事をしちゃって…。装備の件は大丈夫です。値段と出来上がる日時を教えていただけますか?」



「はいっす!コボルトの皮装備一式で30000Gっす。日時は明後日にはできるんじゃないすかね?お金は前払い、後払いできるっすけどお嬢さんどうします?」



 後払いできるの!?この店の人は凄い自信があるんだなぁ。まぁ、こんなできそうな人を小間使いみたいに扱えるんだから当然か。

 私の今の所持金は馬車で3000G使ったため、3000Gとちょっと。差し引きで十分の一ほどしか持っていない。

 でも払う手立てがないわけじゃない。



「じゃあ、後払いでお願いします。」



 あとで、冒険者ギルドにも寄っておこう。カトリーナが魔石とマザーの礼金を入れてくれているはずだ。

 私はいらないって言ったんだけど、一方的な関係はいやだ!とか言われて押しきられちゃった。まあ、そのおかげで装備の更新をしようと思えたんだからいいけど。

 私はすでに恋しく感じているあの茶髪縦巻きロールを思い出す。結局引っ張らせてもらえなかったなー。



「はいっす!じゃあ二日後、お待ちしてますっす。次は隠れるのがうまい奴の素材を持ってくるっすよ!」



 男性はアドバイスまで残して、作業に集中し始めた。

 人気店なんだろうな、対応が神がかってる。掲示板に書いて置こうかな?


 ひとまず、鍛冶屋でやることは済ませたので、今度は冒険者ギルドに向かう。


 よし、私も依頼だけ受けてダンジョンに行ってみよう、初めてだしちょっとだけ初見で!




 ……




「それでは、こちらの魔方陣にお乗りください。」


 冒険者ギルドで依頼を受けてきた私は、ダンジョンの受付があるようなのでそちらに行き魔方陣の上に乗せられていた。どうやらここからダンジョン内に入るらしい。



「それでは間もなく転移が始まります。方陣の上から出ないでください。」



 お姉さんがそう言うと淡く光っていた魔方陣が輝きだし私の意識は一瞬途切れ、気が付くと光るキノコに照らされた洞窟の中にいた。



 おぉ、ここがダンジョンか!雰囲気あるなぁ!!


 洞窟内の岩肌と、見たこともないキノコに私はテンションを上げる。


 今までの世界も十分に異世界だったけど、これはかなりの異世界感だよ!くぅ~、私ゲームしてる!!


 くるくるとあたりを見渡しながら最高の非現実間に浸る。



 数分ほどそうしていただろうか、ダンジョンの空気感を十分に堪能した私は一度依頼を確認する。



『依頼:「緑狩り」


 ダンジョンに初めて来た方はこちらの依頼をお勧めします。

 ダンジョン内に生息するゴブリンを狩り、その素材を10個納品してください。


 報酬:回復のポーション(小)×3 』



 そう、これも異世界感を演出している一つの理由。

 ファンタジー界の常連、ゴブリン先生だ。彼らと戦わないことには物語は始まらない。


 いやー、最初の魔物がコボルトってなんか変だな…って思ってたら、ちゃんとここに初心者用として存在していたよ。風紀的なあれで出禁かと思ってた!


 しかし、今回の目当てはあくまでこの報酬のポーションだ。いままで使ったことがなかったから貰ってみようとクエストを受けた。

 どの程度効果があるのかはわからないけどボスとかに挑むんだったら絶対に必要になってくるだろうしね!しっかりと確認しておかないと。


 今回はダンジョンの雰囲気確かめみたいなものだ。私としてはイベントが始まる前に区切りの良いところまで行きたいと思っているので、ゴブリンを倒したらすぐに帰還し、情報を得て今日中に再アタックしたい。



 そうと決まれば「嗅覚」「聴覚」「隠密」を使って出発としよう!

 この三つは旅の最中も使っていたんだけどねー、なぜか全然レベルが上がらなかった。危険地帯やスキルが有効な場所にいないとだめだったのかな?馬車団も安全と言えば安全だったし。とにかく、このダンジョンで上げられるものは上げよう。イベントでも重要になってくるはずだ。



 やるべきことを再び確認すると、私は気合を入れてダンジョンを探索し始めた。



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[良い点] グダグダじゃ無いところかな? [気になる点] 暗殺ギルドやナナさん視点かな? [一言] うぽつです。毎日楽しみに見てます。
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