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20,行商お嬢様

活動報告にて本日の投稿はないと言いましたがあれは嘘です。すみません。

投稿できました。

 高笑いをする旅服お嬢様キャラを前にして、私は固まってしまう。


 どこから突っ込めばいいかわからない!



「それで?どうしますの?」



 お嬢様はグイっと身を乗り出し、覗き込むようにこちらを見る。

 お嬢様の馬車というイーストンに行く手だてが見つかったのは喜ばしいことなのだが、それよりも問題がある。



「い、いやぁ…ちょっと気が変わっちゃったというか…」



 だって、このお嬢様、どう見てもお嬢様じゃん!一国の貴族の子とかだったらどうするの?失礼があってありとあらゆる街から締め出されたりしたらもうまともにプレイできないよ!?


 彼女の服装がそこそこ良い値がしそうな旅服だということも気になる。


 貴族がお忍びで着た最低限の服。でも庶民からするといい服、感がすごい!!あのいい具合のちょうどよさが彼女の素性をわかりずらくしまくってる!



「あら?あなたがあの村長が言っていた冒険者じゃないのかしら?ですが見たところ他に冒険者なんていいませんわね…もしかして私が村長に嵌められた?ふふっ、村長も偉くなったものね、取引の量を減らされてもいいってことかしら?」


 私がしり込みしていると事態がとんでもない方向に動こうとし始めていた。

 このお嬢様傍若無人すぎるでしょ!いや、私も優柔不断なとこあったよ?でもその結論に至るには早すぎる!!



「あぁ!い、いや違います!私です!乗ります!乗らせてください!!!」



 私があわてたように言うとお嬢様はけろっとした表情でこちらに振り替える。



「あら?そう。まったく、最初からそう言っていればよかったのよ。

 あなた、冒険者で同乗希望ってことは護衛をかねて~、だのなんだの言おうとしてたんでしょう?だったらこれから荷下ろしするから手伝ってくださいまし。取引が終わったら出発いたしますわ。」


「あ、え、あ、は、はい…」



 すみません、がっつりただ乗りするつもりでした。

 というか、お嬢さま私にカマかけてたの?私が村長の言ってた冒険者だって気が付いてたみたいだし。

 この年で一人で行商人してるんだもんなぁ…わたしのちょっとした嘘何てバレバレってこと?まぁ、貴族のご令嬢がなんで行商人やってるかなんて聞きたくないけど…


 そんなことを考えていると私の目の前にずいッと木箱が差し出された。



「ほら、ぼーっとしてないで、これをもってってくださいまし!」


「あ、はい!!」



 私はお嬢様に木箱を渡され、早く働けと催促される。

 ゲームの世界でも仕事だなんて、昨今は世知辛いですね!


 しかし、お嬢様相手に文句を言えるはずもなく、私はただひたすらお嬢様の手と足になって働いた。




 ……




「それじゃあ、村長。また次の機会に。」



「はい、行商人様。またよろしくお願いいたします。

 冒険者様も息災で。」



「はい、村長さんこそ。」



 取引を終えた私たちは村長に別れを告げ、村からイーストンに向かった。

 お嬢様はこの村で非常に人気を誇っていて、恐れ知らずの子供たちがお嬢様に群がるたび私はひやひやしながらそれを見ていた。

 子供たち、どうなっても知らんぞ…



「い、いやー…お嬢様は老若男女問わず人気を誇っていらっしゃいましたね。」



 現在私は商品が傷つくと困るという理由で御者台のお嬢様の隣に座らせられている。そのため、馬車が揺れるたびお嬢様の縦巻きロールやおみ足が私に当たるので、気まずいを通り越してド緊張してしまっている。



 あぁ!ああぁ!!!足が!足がぁ!!感じる!柔らか味と体温を感じる!髪もすごい!なんかいいにおいする!あぁぁぁ!!もういろいろ混じって頭がおかしくなる!



「あら、わたくしが大人気なのは当たり前のことですわ。

 それにしても、あなた少し緊張しすぎじゃなくて?お嬢様お嬢様って、わたくしにはカトリーナという素敵な名前がありますのに。まだ、言っていなかったかしら?」



 ぐっちゃぐちゃになった感情を何とかをフラットにしようとして絞り出した私の問いかけに対し、お嬢様はクスッと笑いそう答える。


 おい…カトリーナさんよぉ、笑うんじゃぁねぇよ、惚れちまうだろが…

 私の感情は振り切ることによって冷静さを取り戻した。



「か、かしこまりました!これよりはカトリーナ様と呼ばせていただきます!あ、あ、私の名前はチョコと言いまして…」



 おっ、どうやら振り切りすぎて緊張に戻ってきたようだ。いいぞー私、いつも道理なさけないぞー。


 私の変わらぬ緊張ぶりを、カトリーナは変わらぬ微笑で受け取ってくれる。



「えぇ、村長から名前は聞いてるわ。よろしくたのむわよ、セントランから出たら御者から降りて護衛してもらうから。」


「は、はい!頑張ります!」



 あぁ…だめだ、緊張しっぱなしで持たないかもしれない…

 緊張しっぱなしの私がおかしいのかカトリーナは何の気なしにこう言ってきた。



「まったく、そんなに緊張すること無いじゃない。同じ平民なんですから。」


「え?」


「なに?村長はこのことも話してなかったの?全くあの年でいたずら好きとか困っちゃいますわ。」



 はぁ!?このしゃべり方、この髪型で平民!!??なに?時代の流行はこれなの?私が遅れてるだけ!?いや、そんなわけあるか!きっとこれは私の緊張を溶かすための話術的なサムシングで…



「ふふふ、信じれられないって顔してるわね。その反応うれしいわ、わたくしがお嬢様を目指してるっていうのは本当のことだからね。」



 お、お嬢様願望持ちの一般行商人だったってことか…村の皆もそれをしてたからあんなに気やすく……というか村長言えや!あの時のウィンクはこういうことかコンチクショウ!!


 私は心のノートに村長を刻み込む。いつかあの村に戻る理由ができたな…


 私が村長に復讐を誓っている間、カトリーナは横目でこちらを見ており、


「だいぶ緊張が抜けたみたいね、良かったわ。村長が何も言わなかったとしてもこれでわたくしの隠し事?は何もないわ。今度はそっちの話を聞かせて頂戴。」


 と笑って言った。



「か、かっか、かしこまりました!」


「あら?まだ駄目だったかしら?」



 カトリーナは不思議そうに首をかしげる。

 あぁ!もうそういうとこ!私はあなたの身分だけに緊張してたんじゃない!あなたのそういう無邪気って言いうか可愛いっていうか、それでも清楚っていうか…そういう笑顔や仕草に緊張してるんだ!


 私の心の雄たけびは、どこにも届くことなくむなしく消えていった。



「え、え~と、まず私は―――」



 いつまでも心の中の葛藤と戦っていてもしょうがないので、私は自分が渡り人であるということとイーストンに行く目的がダンジョンに挑戦することと伝える。

 すると、今度はカトリーナがだんまりを決め込んでしまう。


 え!なに!?私今変なこと言った!?さすがに暗殺者ギルドのこととかは言ってないけど、おかしなことは何ひとつ…



「チョコ、あなた自分のことを渡り人だって言った?」


「え?あ、はい言いましたけど…」


「だったらお願い!わたくしのパトロンに!出資者になってくれませんこと!!」



 カトリーナがグッと私に顔を寄せてくる。その状態でどうやって馬の手綱を握っていられているのかはわからない。


 あぁ!お客様!おやめください!私の心臓が持ちません!!!というか出資者ってなに!?渡り人ってそんな金を生む卵なんかじゃ…いや、金の卵どころじゃない…最強の情報網と四次元ポケ〇トあるわ…


 おそらく、この世界の住民は私たち渡り人が何らかの手段で大勢と情報共有をしていることと、大量の収納鞄的何かを持っていることを知っているのだろう。そんなもの商人からしたら喉から手が出るほど欲しいはずだ。カトリーナがこうなるのも頷ける。



 私はカトリーナのパトロンになってもいいものかと考える。

 うーん、カトリーナのパトロンになって私に悪影響ってあるのかな?

 もしカトリーナが悪い奴で、色々危ないことやってるーってなったとしても、それこさ掲示板で書き込んだらカトリーナの店が何らかの手段でぶっつぶれるだけだよね…


 私は鼻息を荒くしてこちらを見ているカトリーナを見て唸る。


 むぅ…どうしたもんか、面白そうだからパトロンになってみたいっていうのはあるんだけど……

 あっそうだ、こっちからも条件を出して私有利な状況にしてみよう。


 私はいいことを思いついたと言わんばかりにニヤリとカトリーナの目を見つめる。このころには緊張は忘れていた。



「カトリーナ様、わかりました私はあなたのパトロンになります。

 その代わり一つ条件があるのですがよろしいですか?」



 先ほどまでかみっかみだった私が急に流暢に話し出したのを見てカトリーナも真剣なまなざしでこちらを見つめ返してきた。



「ええ、私にできることだったらやらせてもらうわ。」


「じゃあ、これとこれをあげるので秘密にしておいてください。カトリーナ様がこのことを誰かに言ったと私が判断した時点であなたの顔と名前の悪評を流しまくります。」



 そういって私は録画機能をスタートさせる。

 思いっきり肖像権を犯しているがまだ掲示板に上げてないのでセーフのはずだ。

 それに彼女が偽名と変装をしていたら終わりなのだがその時はもういい。私だって半分偽名でやってるんだし、ばらされた時には私がどこのギルド所属かを味合わせてやるだけだ。



 私はインベントリからマザーコボルトの爪と中級魔石を取り出した。



「こ、これは…」


 カトリーナさんはマザーコボルトの爪を見て言葉を失っている。


 どうだ!中級魔石はどんな価値なのかわかんないけどこっちは結構珍しかろう!なんせオスが長になるコボルト種でメスの長期政権を築いた傑物の逸品だよ?そんなコボルトそういないだろう!



「チョコ、あなたこれをどこで…」


「それを話せるかどうかもカトリーナさん次第ですよ!」




 さぁ!なんか形勢逆転だ!返事を聞かせてもらおうじゃないか!!









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― 新着の感想 ―
[良い点] 女の子同士のいちゃいちゃが見れると聞きました。 ありがとうございました。 [一言] これからも応援してます!
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