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15/40

14,目的地発見

誤字報告本当にありがとうございます。

修正させていただきました。

「あの…皆…」


「大丈夫だよチョコ、私たちはもう何も聞かないから、今は楽しくゲームしましょ。ね?」


「僕もそれに賛成だよ。」



 もうこの人たちに何言っても駄目だ…完全に優しい目でこっちを見てる…

 皆の優しい言葉と瞳で私の心がダメージを負っていく。

 ちなみに、血は三分もすれば消えたらしい。確認できないからわからない、確認したくないけど。



「なんか相談したいことがあるってんなら相談に乗るからな。」


「甘いものとか摂るといいらしいよ?」



 ハルキ…フユ…君たちそういう感情の機微に疎いタイプじゃないんですか?キャラブレはよくないですよ?

 こんな調子で私は先ほどから皆にやさしくいじめられている。



 コボルトの討伐を行った私たちは、一匹相手なら難なく勝利できると判断し、もう少し奥まで進むことにした。まぁ、依頼内容がコボルトの異変の調査だから奥地に行くことに変わりはないんだけどね。何となく自信がある状態で進めるということだ。

 コボルトからは牙と一束の毛が手に入った。用途はわからないが一応戦利品なので持ち帰る。また、一度戦闘をこなしたからか私のスキルにコボルトが登録されたので一匹で浮いているコボルトがいたら狩りながら進むことに。

 現時点じゃ収入が足りないからね。せめて全員が300Gぐらい手に入れて帰りたい、つまりあと9体だ。結構多いな、最悪明日も森に入らなきゃ。


 コボルトとの戦闘は非常に楽しかったなぁ。パーティーで戦っているのもそうだがやはり自分でとどめを刺せたのもよかった。自信になるよあれは。


 しかし、パーティーメンバーは私のことを気遣ってか先ほどの戦闘の件を一度も話題に出してこない。

 ちくしょう!自分で蒔いた種とはいえもっと褒めてもらえるはずだったのに!あっ、コボルトいた…



「みんな、コボルトいたよ。」



 クソぉ…全部お前のせいだ、お前が盛大に血を吹き出すからいけないんだ!

 八つ当たりの復讐を誓い私は皆をコボルトのもとに案内しはじめた。





 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯





「よし、じゃあ今日もやっていこうか。」



 あの後私たちは結局6体のコボルトを狩り、日が落ちてきたため一度ログアウトすることとなった。このゲームは町などのセーフエリア以外でログアウトするとアバターがゲーム内に残り続けるので、魔物がうろつく場所で見張りも立てずにログアウトするとほぼ確実にリスポンさせられる。そのため、私たちは一度街に戻ってログアウトし、もう一度この森の入り口に集まっている。



「いつも思うけど変な感じ。」



 フユがポツリとつぶやく。

 現実世界では一日立っていないのに、ゲーム内では日付が進んでいることを言っているのだろうだろう。いくら私たちがVRMMOに慣れているとは言えこの感覚はいつまでたっても慣れない。一日が90時間ぐらいあるのと同じことだからね。



「まぁ、おもろいことが増えるって考えるといいんだけどな…」



 ハルキは少し嫌そうな顔をしてそう返す。

 多分学生時代の、いや今学生って可能性もあるのか、まぁどちらでもいいが宿題のことを言っているのだろう。教師連中はVRが普及されるようになってから課題の量を増やし始めた。曰く、ゲームの中でできるだろ?だそうだ。正直その通りなので言い返せない。だからこそ嫌な気持ちになるのだが。



「ハルキ、そういうのはチョコがいない時にして。気を使わせちゃうでしょ。」



 アキが年齢を特定できてしまいそうな話題を口走ったハルキを注意する。



「あぁ、そっか、わりぃチョコ配慮に欠けてた。」



「まぁまぁ、これから気を付けてくれればいいから。」



 私も皆のリアル事情など興味はないので気を付けてくれるのはありがたい。

 ゲーム上の関係だからこそってのもあるんだから、やぱっりリアルの話は野暮だよねぇ…



「話は終わったかい?そろそろ行かないとフユが寝ちゃうよ?」



 ナツがフユの方を指さしながら私たちに催促する。

 ゲームに関係ない話をしていたのは私たちとはいえ、この数分で寝ることを選択するフユさんサイドにも問題があると思います…




 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯




 再び森に入った私たちはコボルト狩りを再開した。


 4時間ほど狩り続けただろうか。私たちはそれぞれレベルアップを果たした。



 ――――――――――――――――


 チョコ Lv8 ↗


 種族:獣人(猫)

 HP:19/19 ↗

 MP:12/12 ↗


 力:14↗

 守:12↗

 速:24 ↗

 頭:9 ↗


 器用度:1


 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯


「嗅覚」:Lv4  「聴覚」:Lv4

「集中」:Lv1  「本気」:Lv1

「ジャイアントキリング」:Lv1「手探り」Lv3

「隠密」:Lv3  「バックスタブ」:Lv2

「暗殺の才能」:Lv1 


 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 称号:暗殺者

 ――――――――――――――――



 Lv8になったにもかかわらず相変わらずの頭のでき、私悲しくなってしまいますわ。

 その他のステータスはしっかりと伸びている。「速」に関してはすさまじい伸びだ、コボルトの攻撃はよっぽど体勢を崩されない限り当たらないだろう。


 スキルのほうも強化されたり、新しいものを手に入れたりとなかなか充実している。

 まずは強化されたスキルから。

 毎度おなじみ「嗅覚」「聴覚」スキル。常時発動と称号、才能の効果によってガンガンレベルが上がっていく。強化されているところもいつもの通り効果範囲で、初期に比べるとだいぶ広い範囲の情報を拾えている感覚がある。


「手探り」スキルもレベルが上がった。あきらめずに触り続けてよかった。

 足跡らしきものに触れても反応がなかったのはどうやらスキルレベルが足りていなかったようで、今では足跡に触れるとどんな動物の足跡なのか知ることができるし、対峙したことのある生き物の足跡なら視界で青白く光らすことができる。しかし、この機能はMPを1使用するので常用はできない。まぁ自然MP回復と合わせて使っていこう。


「隠密」が上がったのは暗殺者として一歩前進したように感じられてうれしい。

 レベルが上がったことにより足跡の残りずらい歩き方を習得した。使い道はわからない。PK対策かな?

 今は通常の移動の際も「隠密」を使用して歩いているのでまたそのうちレベルアップするだろう。



 そして新たなスキルである「バックスタブ」

 このスキルは最初からLv2の状態で手に入った。おそらく暗殺系のスキルとして手に入れたタイミングと盗賊スキルとして手に入ったタイミングが被ったのだろう。

 スキルの効果は背後からの攻撃に補正がかかるというもの。暗殺スキルの効果かわからないが、敵が戦闘状態でないときのほうが補正が大きい。これからの暗殺がより楽しみになるスキルだね。



 他の皆もレベルが8になった。そう!私はようやく皆に追いついたのだ!

 正直、足手まとい感はもう感じていなかったが、ここまで一緒に遊んできた身として同じレベルになれたのはより仲良くなった感じがしてうれしい。この依頼が今日で終わろうと終わらなかろうとログアウトの前にフレンド申請をしておこう。きっと受け取ってくれるはずだ。



「チョコ、Lv8になったんだよね?おめでとうこれで同じレベルだね!」



 アキが私の両手を握り満面の笑みで喜んでくれる。

 あぁ!美少女の体温!!ぬくい!ぬくいぞぉぉ!!



「まぁ、俺たちはそのうち9レベになっちゃうだろうけどな。」



 私がアキの交友を深めていると、横からハルキが冷水をぶっかけてくる。お前空気読めるのか読めないのかどっちなんだよ。わざとやってんなら出るとこ出るぞ?????

 私がハルキをしかめっ面でにらんでいると、その様子を見ていたナツがクスクスと笑っていた。わらっとんちゃうぞそこ。


 ハルキの発言にアキも不満を感じたのか、眉をしかめて舌打ちをする。

 あぁ!アキ私のためにそんなに怒ってくれるなんて!!これが友情ですってやつですわね!でも長い戦いはご勘弁を。



「アキ、早く先に進もう?」



 諍いが始まってしまうことを察したフユが珍しくアキを諫める。いや、普段からフユも止めたりするのかな、私の付き合いが短いから知らないだけかも……悲しいね。



「助かったわねハルキ…今日のところは見逃してあげるわ。」



 アキはそう言って矛を収める。ハルキもハルキで何やら不満そうにぶつぶつ呟いていたが結局先に進みたい気持ちが勝ったのかそれ以上は言ってこなかった。



「チョコ、次の獲物はどこ?」



「次はねぇ…」



 とはいえ、なんだかこの諍いにも段々と慣れてきた。いいこと…なのか?いや、いいことだよ。多分…

 時たまアキとハルキが言い争っているが、なんだかんだ各々役割があるいいパーティーだなと私は思うのであった。




 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯




「あ、あった。」


「どうしたのチョコ?」


「多分依頼の目的地見つけた、やたらとコボルトがいる場所がある。」



 私のレベルアップからおよそ一時間後、私以外の皆がレベル9になった頃に私はそれを発見した。

 それはおそらくコボルトの集落で、私たちが狩ってきたコボルトが約500匹ほど集まっていた。

 道理で人里付近で見かけるわけだよ、こいつらを食わしていくにはウサギも積極的に狩らないとだめだ。


 私は皆にも大体の数を伝える。



「それは多すぎるね…」



 さすがのナツもこのコボルトの数には驚きを隠せないようだ。そもそも私たちパーティーが5人がかりで戦って圧倒できる強さなのだ。私たちの実力じゃあ3匹もいたらやられるだろう。



「そうだな、ギルドに依頼すれば討伐隊組んでもらえるかもしれないぜ。案外これが依頼の着地点なのかもな。」


「私もそれでいいと思う。」



 ハルキの意見にフユも同意する。私ももちろん賛成だ。

 さっきも言った通り、コボルトはそこまで弱くない。初心者が二人がかりで挑んでも多分負けるだろう。パーティーだったからこそ私たちは勝てたんだ。ここを攻略するにはそれなりの数が必要だになる。



「じゃあ、いったん戻りましょうか。チョコ、コボルトはこちらに気づいているの?」


「多分気づいてる…と思う。でも攻撃してこないのは私たちが少数だからかな?でも逃げるなら早めに逃げた方がいいと思う。あいつらが私たちが応援を呼ぶつもりだって気が付いたらまずいから。」



 ナツの矢を二度目で防いだ時もそうだが、奴らの知能はそれなりに高いといっていい。それが戦闘脳なのか素の頭脳なのかはわからないが、こちらに近づいてこないうちに逃げるが吉だろう。



「そうね、今日のところは引き返しましょう。」



 アキがそう言うと他の皆も頷いき、私たちは帰路についた。




 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯




「なんだって!?あぁ、わかった。この件は上官にも報告して指示を仰ぐことにする。だが十中八九冒険者ギルドにも討伐参加の依頼が出るだろう。他の冒険者にこのことを広めるとともに君たち自身も参加できることなら参加してくれると助かる。」



「わかりました。」



 私たちは依頼の主である衛兵長にコボルトの集落について伝えるため街の外壁にきていた。

 アキが依頼主に話を付けている間、ナツは掲示板で今回のあらましを書き込んでいたようで、すでに掲示板はちょっとした騒ぎになっている。



「皆、話はつけてきたわ。」



 衛兵長との話を終えたアキがこちらに戻ってきた。



「お疲れアキ、こっちも掲示板に書き込んでおいたよ。」


「あろがとうナツ、仕事が早くて助かるわ。それで、ハルキは?」


「ハルキには冒険者ギルドのNPCに同じことを伝えに行ってもらった。一度話を通しておいた方が依頼も出しやすいだろうしね。」



 このゲームのNPCはそれぞれが独立したAIで動いているため情報伝達等もシステム上一瞬というわけではなくきちんとこの世界のルールにのっとって行われている。だからこそ、ナツとハルキが行ったような根回しは後々効いてくるだろう。今回の件は数が勝負であり、依頼の出す速さや情報周知は超が付くほどの重要事項なのだから。



「よし、じゃあ私たちにできることは終わったね。冒険者ギルドで依頼が出されるのを待ちましょう。皆はこれからどうする?私は一応ここでハルキを待つけど?」



 アキがそう聞くと皆ハルキをここで待つようだ。やはり仲良し4人組だね、うらやましいかぎりだよ。



「じゃあ、私はこの辺でお暇させてもらうね。」



 もうログアウトするだけだというのに、いつまでも一緒にいてはなんだか悪いと思い私はそそくさとログアウトすることにする。



「わかったわ、今日は疲れ様、また依頼が出たら一緒にやりましょうね!」


「うん、その時はよろしく。」


「またねチョコさん」


「バイバイ」



 ハルキ以外の皆に見送ってもらい私はログアウトする。


 現実世界ももう夜だ、早く寝て明日のゲームに備えよう。


 私はそそくさと食事と入浴を済ませ、布団に入り電気を消す。



 そして、そこでようやく気付く。

 あ、フレンド申請忘れてた。

 せっかくできた関係が音を立てて崩れるていく気配がし、枕を涙で濡らす夜となった。



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