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13/40

12,レベル上げ

「チョコさんは掲示板とか見てるの?」


 道すがらアキが私に話しかけてきた。


「掲示板?見てますよ。ネタバレは極力避けようとしてますけど。」


「ネタバレは善し悪しがありますもんね、でも掲示板は見てるんですね?じゃあ、あれ知ってますか?森の変死事件。」


 アキは怪談好きなのだろうか。目を輝かせながら私に森の変死事件とやらについて語ってくれた。真面目系の子がこういう一面を見せてくれるのは役得ですわ。

 変死事件はもちろん私も知っている、かなり掲示板を賑やかしていたからね。森の中でウサギを狩っていたら一瞬のうちにリスポンしていたという話だ。

 この一件は掲示板で一時バグ扱いされていたけど運営が仕様だと認めたことで議論が加速したみたい。いや、十中八九あの男の犯行だと思うけど。どこかのタイミングで私がウサギの依頼を受けたのを知って張り込んでいたんだろう。そしてその対象が私と判明しようがなかろうが殺して回っていた。こんなところだろう。バトルジャンキーが過ぎる、狩りに出ていたNPCとかにも被害出てるんじゃないか?

 アキがこの件についての自論を語っているのを聞き流しながら掲示板にあの男と遭遇したことを書き込むべきなのか考える。

 うーん、ちょっと無理かな、あの男のことを書き込んだ時点でどうして狙われたのか聞かれるだろうし。黙秘権はあるにしても私が何か情報を秘匿していることが発覚したら周りの視線を気にしながらゲームをしなければいけなくなる。まぁ、そんなの無視すればいいってことはわかっているんだけど、いまはこの四人と知り合ってしまったということもある。私が何か隠していると知った連中がこの四人に突撃するのは目に見えている。せっかくできたプレイヤーとの交流なんだ。大事にしていきたい。



「――――――と、私は思っているんだけど、チョコさんはどう思う!?」


「うん、とてもいい線をいっていると思います。」


「そうですか!」



 アキの考察語りが終わり感想を求められたので当たり障りなく答えておく。ごめんな、全く聞いていなかった。



「アキ、その辺にしといてやれよ、チョコ困ってるぞ。」



 ハルキがやれやれといったようにアキを諫める。



「黙れ、ハルキ。元はといえばお前たちが全然話を聞いてくれないのがいけないんだ。それと今日あったばかりの人に呼び捨てするのもやめろ、チョコさん困ってるぞ。」



 アキが暴論を振りかざしつつ言い返す。

 もちろん私は困ってますよ、おもにハルキの言った理由で。

 しかし、そんなこと口に出せるわけもないので場を収める形にもっていこうと努力する。



「アキ、私も砕けた口調にするから。ね、これでいいでしょ?」



 私はそう言ってアキのことを呼び捨てにする。



「むぅ、わかった。けど、ハルキの味方をするのはなんだか納得できないな…」



 アキが口をとがらせて不満を口にする。おい、美人がそんな顔するな、惚れるだろ。



「さすがチョコ、話が分かるぜ。どっかの頑固と違ってな。」


「しばき上げるぞクソガキ。」



 仲裁に入ったつもりだったのに余計に油を注いでしまった…

 というか、ほかの二人も止めてくれよ…

 二人の諍いに私が巻き込まれている間、ナツはそれをただニコニコと眺めており、フユはボーっとしているだけだった。

 なんでフユはそれでついてこれるんだ…と思ったら、ナツに自分の杖を引っかけて、引っ張られるようにして歩いていた。友達だからって遠慮なさすぎないか?



 二人のギャーギャーとした言い合いは結局森につくまで続き、私も何度か介入を試みたが意味はなかった。

 森の前で最後の確認を行っていると、後ろにいたナツに「何を言ってもあのまま噛みつきあってるんだよ、すごいでしょ。」と囁かれた。わかってたんなら言ってくれ…、この人、四苦八苦している私も含めてニコニコ見守ってたんか。サイコパスと命名してやる…


 いまだにニコニコとしているナツを恨めしそうに見るが、彼には全く効いていないようで、フユの杖をくるくると回転させて遊んでいる。地味に杖置きにされたことも根に持ってるんかね、返してやりなよ怒ってるぞ。

 自分の杖をとられたフユはおもちゃをとられた子供のようにむっとした顔をしている。かわいいなぁおい。



「みんな、準備はできた?」



 アキは自分の準備ができたのだろうか、私たちにも聞いてくる。



「うん私は大丈夫。」



 私がそういうと、ほかの皆も続くようにそう言った。



「オッケー。それじゃあ行こうか。





 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯





『レベルが上がりました!』




 ――――――――――――――――


 チョコ Lv5 ↗


 種族:獣人(猫)

 HP:16/16 ↗

 MP:9/9 ↗


 力:9 ↗

 守:8 ↗

 速:16 ↗

 頭:6 ↗


 器用度:1


 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯


「嗅覚」:Lv2  「聴覚」:Lv2

「集中」:Lv1  「本気」:Lv1

「ジャイアントキリング」:Lv1 「手探り」Lv1

「暗殺の才能」:Lv1 


 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 称号:暗殺者

 ――――――――――――――――



 皆でコボルトを探しながら森で動物を狩っていると私のレベルが5になった。



「皆、レベルが5になったよ!」



 あの熊を倒した時点で経験値がかなり溜まっていたのか、ウサギを一匹倒しただけでレベルが4になった。また、その時点で私の「速」がウサギを追い抜いたようで、そこからは私が中心に追い込むことで経験値を私に集中させることができた。その結果がこの早めのレベルアップだ。しかし、周りはこの間にレベル6になっているため少し実力不足であることに変わりはない。



「やったじゃんチョコ!」



 アキが近寄ってきて一緒に喜んでくれる。

 アキの戦い方はゲーム慣れした女の子という感じで普通の斬撃とスキルをうまく使い分けていた。使用しているスキルは「スラッシュ」、剣士系がLv4で覚えスキルで攻撃力と切れ味を上げることができる。どちらにせよウサギレベルなら真っぷたつなのだがスキレベ上げで使っていたのだろう。



「意外と早かったな。なぁ、アキ。チョコのレベルも上がったんだからもうちょと奥まで行ってみようぜ。」



 ハルキは口には出さないもののずっとコボルトと戦いたそうにしていたのでこちらに催促をしに来る。すまんなハルキ、この後は存分に暴れてくれ、露払いぐらいはできるから。

 ハルキの戦い方はかなり豪快だ。剣士を選択した人間は最初に剣も選ばされるようで、ハルキは自分の身長ほどの大きさのある大剣で戦っていた。私がウサギに攻撃してハルキのほうに逃がすだけで経験値が入るので非常に効率が良かった。



「そうだね、僕たちもレベルが上がったし、腕試しがてら行ってみよう。」



 ナツもハルキに同調する。

 ナツは完全サポート型といったところで、私たちが仕留めそこなったウサギにとどめを刺していた。まぁ、良く当てるものだと感心していたがゲームのシステム上この距離では外すことのほうが難しいらしい。今度他の職業のスレも見てみようかな。

 また、彼の性格上、なぶるようにウサギを殺すものだと思っていたが「金策ができないと矢がね…」と言って笑っていた。いや、矢があったらなぶるんかい、やはりサイコか…



「私も新しい魔法覚えたから試し打ちしたい。」



 フユとはこの狩りの中で目を合わせてもらえるぐらいにはなった。正直レベルが上がるよりうれしい。が触れようとすると逃げられる。いわく「なんか悪寒がする」とか。勘がいい子は厄介ね。

 フユの戦い方は、人見知りな性格に似合わずぶっぱぶっぱの火力型。魔法職は攻撃手段が魔法に偏るためLv 1の時点ですでに4つの呪文が使えたそうだ。彼女はその中でも最も火力の出る火魔法が一番好きらしい。が、ここは森の中なので風魔法を中心に使っている。

 私は魔法を一つも持っていないのでまだ魔法の情報をあまり調べていないが、魔物と戦うとなるとしっかりと調べておいた方がよさそうだ。



 フユが新しい魔法を覚えたように、私も新しいスキルを覚え、既存のスキルもレベルアップした。

 既存のスキルである「嗅覚」、「聴覚」はウサギの位置を探すために使っていたらレベルが上がった。聴覚は嗅覚の耳版といったところで視界に青白い音の波が現れる。この森に入って初めて使ったのだが「暗殺の才能」の効果だろうか、すぐにレベルが上がった。

 レベルが上がったことによって両のスキルとも索敵範囲が広くなったといっても劇的な変化はなく多少広い範囲で音やにおいが拾える程度だ。

 新しいスキルは盗賊職がLv4で入手することのできた「手探り」というスキルだ。

 このスキルは手で触れた範囲の情報をある程度読み取れる、といったもので足跡が誰のものかわかったり、罠があるか調べられたりする。手で触れなければいけないという点が初期スキルらしい。

 このスキルで他人や魔物のステータスを見ることは不可能だそうで、鑑定の下位スキル、または、元になるスキルなのでは、と検証班は掲示板で情報を集めていた。

 私は「暗殺の才能」の影響でスキルが成長しやすいので「手探り」が暗殺スキル対象ならすぐにその仮定を実証できるかもしれない。



「そうね。それじゃあ、思い切って奥地に進んでみましょうか。チョコ、索敵頼めるかしら。」



「対敵したこと無いからなんかいる程度でよければお任せあれ。」



「十分よ、よろしくね。」



 ようやく斥候役ができるじゃないか、活躍してみせるよ!

 私たちはそれぞれの思いを胸に鼻息荒く進んでいった。

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