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煉をシュバリエの部屋へと連れていき、託したあとで世愛の元に帰った遊佐は世愛にきちんと今回の件の説明をした。それを聞いた世愛は煉が無事だったのならとホッとしたが、それから数日が経過しても遊佐の指の氷が溶けないことが気がかりで仕方がなかった。


「ゆ、遊佐さん!」


精霊の知識は本で得た知識しかないし、意思疎通も出来ないがこの氷を溶くのは愛し子である自分だと思った世愛は遊佐に声をかけると同時に凍っている指へと触れた。その瞬間、世愛は意識を刈り取られて膝から崩れ落ちてしまう。


「っ…世愛?」


ソファーに座り、本を読んでいた遊佐はいきなりのことに驚きながらも影を使って世愛が床に激突する事を防いだ。その後、遊佐は世愛を自分へと引き寄せた。そして意識を失っている世愛を見て困惑する。


「世愛?」


遊佐は名前を呼び、世愛の体に触れて揺さぶってみるが世愛の意識が戻ることはなくこれはただ事ではないと内心、焦り始めたのだった。





森の中で一人の青年が血塗れで血に伏していた。その近くには何が起きたのか理解できていない幼い男の子と青年のことを父と呼びながら男の子を守るように抱きしめ、涙を堪えている男の子よりも年上な少女、そして白衣を着た男が一人と黒服の男たちが数人いた。そんな光景を上空から見下ろすように見ていた世愛は困惑した。確か自分は凍った遊佐の指に触れただけだったからだ。


「もしかしてあれって小さいけど陽子さん…?ってことはここは過去の映像を氷が見せてくれているの?」


世愛は困惑したように陽子たちを見つめた。


「本当にこの男が守護者で間違いないのか?」


白衣を着た男は血に伏した青年、りんへと近寄ってしゃがみ込んだ。


「間違いありません!中條さま!事前に集めた情報では間違いなくこの男が守護者と呼ばれている奴です!」


黒服の一人がハキハキした声で答えた。


「そうか…殺してしまったのは惜しい事をしたが町の場所を素直に吐かなかったこいつが悪い。死体でも実験の材料にはなるだろう。回収しろ」


中條と呼ばれた白衣の男は立ち上がり、燐の頭を軽く蹴ってから離れた。その後直ぐに黒服の男たちは燐へと近寄り、回収しようと手を伸ばす。


「っ…駄目!」


陽子は男の子…煌を離し、燐へと駆け寄って連れて行かれないように燐へとしがみついた。


「ちっ…邪魔だな。中條さま!この餓鬼はどうします?」


そんな陽子を見て黒服の男の一人が面倒臭そうに舌打ちをしたあと、中條へと目を向けて指示を仰いだ。


「連れ帰りましょう。モルモットとして使うには丁度いい」


中條はちらっと陽子を見たあと、答えた。


「わかりました」


黒服の一人が陽子を抱き上げ、燐から無理矢理引き剥がした。


「離してっ!」


陽子は子供なりに必死になって抵抗をした。だが黙れとでもいうかのように陽子は頬を殴られてしまった。陽子は痛みと燐の死に我慢していた涙腺が崩壊し、泣き始めてしまう。


「ようちゃんが泣いてる…?」


まだ状況を理解していなかった煌は泣き始めた陽子を見て小さく呟いた。そんな煌の背後から黒服の一人が煌を抱き上げようと手を伸ばす。


「ようちゃん…いじめちゃ、めっ!なのっ!」


陽子が虐められているのだと判断した煌は泣きそうな顔をして大声で叫んだ。するとその場にいた人々を巻き込んで辺りは凍りつき、吹雪が巻き起こり始める。


「素晴らしいな」


媒体なしで幼い子供が氷を発現させた煌の姿を見て中條は目を輝かせたが、既に凍りついているために近寄ることが出来なかった。


「お前ら、あの子供を生かして捕えろ。多少痛めつけてもかまわん」


中條が指示を出すと魔法を使って凍りついた部分を溶かしてから黒服の男たちが一斉に煌の元へと向かった。それを見ていた陽子は煌を守らなければと自身を捕らえている黒服の男の手を思い切って噛み、黒服の男は痛みから表情を歪ませながら投げ捨てるように陽子を手放した。その際、陽子の体は近くにあった木に激突し、頭を強く打ち付けて気を失ってしまう。


「っうぎゃぁぁあっ!」


それを見ていた煌は泣きながら大声をあげた。すると周囲は一瞬にして凍りつき、吹雪は一層厳しくなった。


「これは…暴走?」


実際にいるわけではないのに寒さを感じた世愛は自身を抱きしめる。その間も煌は大声で泣き続け、それに反応するかのように煌を中心に氷が侵食し始める。


「どうにかしないと皆、凍死しちゃう」


過去の映像だということを忘れた世愛は慌て始めた。すると微かな光が燐の遺体から出現して煌へとまとわりつき始め、徐々にではあるが吹雪はおさまっていき、周囲の氷も溶け始める。


「もしかしてこれ…燐さんが暴走をおさえこもうとしているの…?」


世愛は煌から燐へと目を向けるが燐は既に亡くなっている為、ピクリとも動いてはいなかった。その後、暴走が無事におさまったことで光は消え、煌は暴走の影響から気を失ってしまう。


「素晴らしい。守護者の遺体を持って帰るよりもその子供を連れ帰った方が有益だ。おい。こいつを連れて帰るぞ。遺体はいらん」


凍らされても直ぐに溶けた為、特に後遺症も残らなかった中條は煌を輝かせた目で見つめたあと、黒服たちに指示を出した。するとそのうちの一人が指示に従うように煌を抱き上げる。先程、陽子を投げ捨てた黒服の男も陽子を回収しようと近づくが触れる直前、まるで陽子に触れるなとでもいうかのように鋭く尖った氷が地面から複数出現した。その氷を間一髪の所で避けた黒服の男は魔法を魔法を使って煩わしそうにその氷をどうにかしたあと、陽子へと手を伸ばすがそれを阻むように再び出現した。黒服の男は魔法を使って何度も氷をどうにかし、陽子の回収を試みるがその度に氷が邪魔をする。


「…その子供はもう放っておけ。回収し、モルモットにするなりこの子供の制御をする為に使うのもいいが今ははやくこの子供を調べ尽くしたい」


中條は煌にしか興味がないのかずっと煌だけを見つめている。


「わかりました」


黒服の男が中條に向かって一礼をしたあと、中條たちはその場をあとにした。それと同時に過去の映像は終わりだと辺りは暗くなる。


「燐さんが加護を与えた相手はきっと煌さんだ。加護を与えて暴走をおさえこんだんだ。そして陽子さんを守っているのは煌さんの力なんだ。きっと…はやくこのことを遊佐さんに伝えないと…ってうわぁっ!」


映像が消えたあと、下を向いて考え事をしていた世愛は考えを口にしながら勢いよく顔を上げた。そして目の前にいた半透明で虚ろな目をした燐の姿を目にして思わず声を上げてしまう。


「…けて」


燐は驚かれても特に気にすることなくある場所を指で示した。世愛が不思議そうな顔をして示された方向へと目を向けるとそこには意識のない陽子と巨体で虚ろな目をした化物の姿が映し出された映像があった。化物は今にも陽子に襲いかかりそうである。


「助けて…お願い、子供たちを助け、て…」


燐がボソボソと小さく掠れた声で必死に訴える。


「っ…陽子さんが危ないって事を伝えたかったんですね!」


化物から陽子を救って欲しくてこの映像を見せてくれたのだと判断した世愛は勢いよく燐へと目を向けるが、既に燐の姿は何処にもなかった。


「い、いない…どうしよう。氷に触れただけだからどうやってここに来たのかわからない」


自分が気を失っていることに気がついていない世愛は困惑をし始める。


「…あ。せ、あ。頼むか…起きろ。起き…くれ」


そんな時、途切れ途切れではあるが遊佐の声が聞こえてきた。どうやら今まで邪魔されないように燐が現実の声を遮断していたらしい。


「この声…遊佐さん…?起きろって私、寝てるの?」


世愛は辺りを見渡してみるが、真っ暗で自分以外に生き物がいる気配はなかった。その後、世愛はその声を信じてダメ元で目を覚まそうと意識を集中させ始めたのだった。


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