表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/62

31

定期的に手を加えられていた為、そこまで汚れてはいなかったのか部屋の片付けを早々に終わらせたロゼたちはリビングへと戻ってきていた。


「……それで?どういう知り合い?」


ソファーに座っているロゼにお茶が入った湯呑みを差し出しながら遊佐は問いかけた。


「前に私が神隠しにあってこの世界に来たという話はしただろう?」


ロゼは湯呑みを受け取りながら答えた。


「あれだろ?不気味なくらい静かな嵐の中心にある渦に吸い込まれたらこの世界だったって話だろ?もしかしてあいつも神隠しの被害者?」


テーブルわや挟んでロゼが座っている反対側のソファーへと腰掛けた遊佐はその時のことを思い出し、答えた。


「ああ。神隠しにも色々あるようだから私のように嵐ではなかったかもしれんがな…だが出現場所が悪かった」


ロゼは湯呑みを両手で持った。


「どこに出たの?」


遊佐はそんなロゼを見つめ、首を傾げる。


「貴族が集うパーティー会場だ」


ロゼは湯呑みを見つめながら深刻そうに答えた。


「は?そんなところに出たらやばいじゃん!」


遊佐は声を上げ、勢いよく立ち上がった。


「ああ。斬り捨てられるところだった。そこを私が庇い、屋敷に連れて帰った。そしてお金を渡して直ぐに身を隠すように進言した」


ロゼら湯呑みから遊佐へと視線を移した。


「え、なんで身を隠せだなんて…」


遊佐はテーブルの上に手を置き、ロゼへと顔を近づける。


「庇う時に古代種であると…特別な技術を持っていると話してしまったからだ。本当なら金のなる木。嘘ならパーティー会場に突然現れた狼藉者として処罰されてしまう…だから身を隠すように言ったんだ」


ロゼは遊佐に説明するとお茶を一気に飲み干した。


「……確かにあいつらならやりかねない」


遊佐は古代種だったのかと納得しながらも憤慨し、ソファーへと座った。


「案の定。奴らは奏くんたちを求めてきた。そしていないとわかると憤慨して私の身分を剥奪し、財産なども没収されてしまったんだ」


ロゼは湯呑みをテーブルの上へと置いた。


「じっちゃんは昔からあいつらやスラム街の人たちを平等に見てくれるいい人なのに…全て奪われて悔しくなかったの?」


遊佐はロゼのことを思って何処か悔しそうな顔をしている。


「特には…高貴な身分の子を助けて得た爵位だし…そのことやここにいる人たちの診察をしていることをよく思っていない一部の人たちからは疎まれていたからね。執着はしていないよ。それに剥奪され、ここに来たお陰で遊佐に出会えたからね。逆に満足している」


ロゼは遊佐へと目を向け、答えたあとでにっこりと微笑んだ。


「あいつらならやりかねない…ってあれ?ちょっと待ってよ。じっちゃん。じっちゃんが俺を拾ってくれた時って俺まだ赤ちゃんだったんだよね?あいつ、俺より年下に見えたんだけど…何歳?」


遊佐はロゼの説明に納得しながらも疑問を持ち、ロゼへと問いかける。


「え?うーん…少なく見積もっても十五くらいなんじゃないかな?初めてであった時に年齢を聞いていないから詳しくは知らないけど…遊佐より年上なのは確かだよ。古代種って成人していても子どもみたいな見た目をしているから…」


ロゼは昔のことを思い出して答えた。


「まじかよ…どうしよ。じっちゃん…年下かと思って子ども扱いしちゃったよ…」


遊佐は真っ青な顔色をして頭を抱えた。


「……大丈夫だよ。悪いと思っているのなら目を覚ました時にでも誠心誠意謝れば許してくれるよ」


ロゼは立ち上がり、そんな遊佐へと近寄って優しい手つきで頭をなでてあげた。


「俺!あいつが目を覚ましたら直ぐに謝れるように部屋に戻るよ!」


遊佐は決意して勢いよく立ち上がった。


「それがいい。そうしなさい」


いきなり立ち上がった遊佐に吃驚しながらもロゼは遊佐の頭から手を離し、柔らかく微笑んだ。


「うん!行ってくる!」


遊佐は大きく頷いて自分の部屋へと向かった。そしてその際に耳のいい遊佐は何かに気が付き、かけ出す。


「どうしたっ!」


部屋にたどり着く前に何かに気がついた遊佐は慌てたように声を上げ、勢いよく扉を開けた。すると奏は魘され、大粒の涙を流しながら眠っていた。遊佐は大きな声を出してしまったことを後悔し、口を押さえながら奏へと近寄った。そしてどうしたのかと心配そうに奏を見つめた。


「もしかして…さっき目の前で親を殺されたって言ってたからその時のことを思い出して魘されてる?」


奏はじっと観察するように見つめた遊佐は先程の言葉を思い出し、とても小さな声で呟いた。


「…大丈夫。大丈夫だから。ここは安全だから」


遊佐は口を押さえていた手を奏の頭へと当て優しい手つきで撫で始めた。暫くすると奏は魘されなくなり、安心しきった顔でスヤスヤと眠り始める。その瞬間、部屋の中に穏やかで心地よい風が吹いた。遊佐は窓なんて開けていたかと窓へと目を向けるが開いてはいなかった。


「…また魘されたら撫でてあげよう」


遊佐は気のせいだと思い、奏へと目を向けた。そして奏の頭から手を離した遊佐は床にあった座布団へと座り、机の上にあった医学書を開いて勉強をし始めたのである。奏が魘されれば頭を撫で落ち着いたら勉強をしていたりして時は過ぎ、夕食の時間になった。部屋の外から夕食が出来たというロゼの声が聞こえてきたものの遊佐は難しい顔をして奏を見つめていた。


「気持ちよさそうに寝てるんだよな…でもご飯食べないとあれだし…」


遊佐は難しい顔をして悩んだ結果、奏を起こすと決めて肩へと手を添えて揺すった。だが奏は寝返りをうち、起きる気配がない。


「おーい。起きろ!」


遊佐は少し強めに揺すった。すると奏はゆっくりと目を開ける形で目を覚ました。


「……キラキラしてるね」


上体を起こした奏は眠たそうに目を擦りながら遊佐へと目を向ける。


「きらきら?」


遊佐は奏の肩から手を離し、不思議そうな顔をする。


「あ、そっか…見えないのが普通だったんだ。君の周りにね。低級の精霊が沢山いるんだよ。低級は小さな光の玉にしか見えないからキラキラしてるなって…」


奏は目を擦るのを止め、にっこりと微笑んだ。



「精霊…ってことはさっきの風の精霊が?」


遊佐は先程起きた風を思い出し、首を傾げる。


「多分そうじゃないかな?助けてくれたお礼をしたんだと思うよ?僕、精霊の愛し子だから」


奏は微笑むのを止めて少し考えてる素振りを見せたあと、口を開いた。


「精霊の愛し子って…それ、簡単に言ってもいいものなのか?利用されたりするぞ」


遊佐は首を傾げるのを止め、眉間に皺を寄せる。


「本来なら教えないよ?でも君なら教えても大丈夫だって直感が働いたんだ」


僕の直感って外れたことないし、と奏は言葉を続けてにっこりと微笑んだ。


「……精霊の愛し子ならさっき逃げた時とか精霊にどうにかして貰えば良かったんじゃないのか?」


遊佐は奏の返答に呆れて小さく息を吐いたあと、ふと疑問に思って口を開いた。


「確かに頼めばどうにかしてくれたと思うよ?でも精霊は良くも悪くも真っ直ぐでこうと決めたら突き通すんだ。そして暴走する。例えそれが相手を死に至らしめる行為も平気でする…僕は精霊のことを友だちだと思ってるからそういうことして欲しくないんだ…」


奏は答えたあと、悲しげに俯いてしまう。


「……そうか。悪かった。変なこと聞いて」


遊佐はそんな奏の頭に手を乗せ、優しく撫でた。奏は顔を上げ、遊佐の顔を見る。


「っ…ごめん!子ども扱いした。さっきのことも含めてごめん!」


遊佐は奏と目が合ったことで年上だったということを思い出し、慌てたように頭から手を離した。


「大丈夫だよ?慣れてるし…慰めてくれたんだよね?ありがとう」


そんな遊佐を見て奏はくすくすと笑い、笑われた遊佐は恥ずかしさのあまり顔を赤くする。


「そ、そうだ。じっちゃんが夕食出来たって言ってたんだ。行こっか」


遊佐は立ち上がり、話題を変えるようにぷいっと奏へと背を向ける。


「あ、そうなんだ。なら直ぐに行かないと…ロゼさん待たせちゃってるよね」


奏は笑うことを止めてベッドから降りた。


「案内するからついてきて…」


遊佐は案内するように歩き出した。そのあとを奏は追うように歩き出し、二人はロゼの元へと向かった。そして一緒に夕食を食べ、食休み中に奏は悲しみに耐えながら自分の身に何があったのかを話した。逃げるのに精一杯だった為、きちんとした期間は覚えていないが奏たち家族は見つかってしまった。そして子どもにしか見えなかった奏なら扱いやすいと思われたのか見つかった瞬間、目の前で両親を斬り殺されてしまい、奏は悲しむ間もなく捕らわれの身となってしまった。すきを見て逃げ出したものの奏は直ぐに追われる身となってしまい、今の今まで悲しみに耐えながら逃げていたとのことだった。


「なんて奴らだ!」


ロゼは怒りで震わせていた拳で力任せにテーブルを叩いた。


「……改めてあいつらが糞だってわかった。ごめん。辛いこと思い出させて」


話を聞いて恐い顔をしていた遊佐だったが話しながら泣いている奏を見て落ち着かせようと背中を優しい手つきで撫でてあげた。


「ありがとうございますっ…大丈夫です。いずれお話しなければならなかったことですし…」


遊佐に撫でられて少し落ち着いた奏は口を開いた。


「…何か対処法を考えねばならないな。だがその前に…遊佐、お風呂の時間だ。奏くんを案内してあげなさい」


精神を少し落ち着かせたロゼは遊佐へと指示を出した。


「はーい。奏くん。行こう?」


遊佐はそれに応じて奏へと声をかける。


「え、お先に入っても?」


奏は信じられないといった表情をロゼへと向けた。


「当たり前じゃないか。ゆっくり浸かってきなさい」


ロゼはそんな奏に向かってにっこりと微笑んだ。


「ではお言葉に甘えて…」


奏は立ち上がった。そんな奏を見た遊佐は案内するようにリビングから出、奏はそれについていく。


「……この先にある。好きに使ってくれていいから」


脱衣所の前で立ち止まった遊佐は奏へと目を向ける。


「わかった。ありがとう」


奏は一度、遊佐に頭を下げると扉を開けて脱衣所へと入った。


「……俺、タオルとか持ってくるから」


遊佐はそんな奏に声をかけると返事を聞かずに取りに行ってしまう。自分が扱えるものかを風呂場を見て確認したあと、奏は脱衣所で服を脱いで体や頭を洗い始めた。


「な、なんだ。この拳銃…」


昔、自分が着ていた服を奏の着替えとしてタオルと共に持ってきた遊佐は脱衣所にあった拳銃を見て動揺をする。


「あ、それはさっき暴走しちゃうって言っちゃったでしょ?それを制御するものだよ。僕のお手製でそれに願いを込めて引き金を引いた時だけお願いを聞いてって精霊に言ってあるんだ」


動揺した声が聞こえた奏は体を洗いながら答えた。


「な、なるほど…触っても平気か?」


遊佐は興味ありげに拳銃を見つめる。


「大丈夫だよ。正当な持ち主以外だと引き金を引いても何も出ないから」


奏は答えたあと、体についた泡を流した。遊佐は奏の返事を聞いてドキドキしながら拳銃へと触れた。そしてある程度眺めたあと、遊佐は着替えの服などを置いてその上に拳銃を置いた。


「着替え置いといたからゆっくり温まって」


そしてその後すぐに遊佐は奏へと声をかけた。


「うん。ありがとう」


奏は返事をしながら浴槽へと入り、その返答を聞いた遊佐はロゼの元へと向かったのだった。


続きが気になるという方は下の評価ボタンで評価、ブックマークなどしていただけると励みになります


また感想や誤字脱字の報告も随時受け付けていますので、よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ