第7話 「思ってたのと違う...」
「すごいスピードで解決していくな、素晴らしい。」
村長が驚いている、大したことはしていないのに。まあ誉められて悪い気はしないけど。余裕の表情でこう返した。
「令和の新星を舐めないで頂きたい。」
実際リアルの世界でも少しはできる方だったんだ。村の1つや2つ救うのは簡単だ。
「村中のツボを割ってもいいから、あと何個か…」
「契約不履行です、では!!」
冗談にしてもとんでもないことを言い出すな、この村長。別に坪割りたくて来てる訳じゃないぞ、もっとましな交渉いくらでもあるだろ。呆れているとあわてふためいて、
「うそじゃうそじゃ、レイワノシンセイ様お待ちを」
「名前じゃない!キメラゴン!」
名前ぐらい覚えてくれよ...
「実は最後の一つじゃが、村の裏の森を超えたところにある山の洞窟にゴブリンが住みついての」
お約束のクエストきたぁぁぁ!テンション上がる!流石にカエル退治と腰痛治しじゃ主人公っぽさゼロだもん、ようやく楽しめそうだ。
「まだ悪さはされてないが、ひとまず調査してきてほしいんだ。」
「おっけー!」
早速向かうとしましょうか!
「それじゃあマリアは留守番頼むな。」
「私もついてっちゃ駄目なの?」
どうやら留守番が不服らしい。まあついてきてもどっちでもいいんだけど...
「んー、次もどうせすぐ終わるじゃん?だかから家でご飯用意しといてよ。」
どうせ1人でなんとかなるし、そっちのが効率的だ。アリアの飯、うまいし。
「わかった、気を付けてきて。ご飯つくって待ってるわ!」
「じゃー、いってきまーす!」
裏の森を越えてから裏山についた。20分ほど歩くと洞窟が見えてきた。ここにゴブリンが住み着いているらしい。
「じゃ、サクッと行きますかー。」
洞窟に入っていった。薄気味悪いが、良くゲームで見るあれだ。不思議と親近感がわいてくる。探り探り進んでいくと見張りのゴブリンが2匹いる。ってことはあと何体かいそうだな。こいつらに騒がれるのは面倒だ。
「...よしっ」
意を決して2匹に詰め寄る。奇襲に驚いているようだ。拳をみぞおちにしっかり決めて気絶された。この程度ならどうってことない。
「...進もう。」
さらに奥へ進むと今度は通路に3匹のゴブリン。3はちょっと厄介だが、さっきの強さであればさほど問題はない。
「...やるか。」
初めて1匹は背後に回り首筋にチョップ。気絶した。それに気付き2匹が突っ込んでくるがさっきと同じようにみぞおちをしっかり狙うと2匹とも気絶。余裕だ。だけど...
「まだ、慣れないな。」
他の魔属ならまだしも、ゴブリンはかなり人に近い。見た目を殴る感触もそうだ。空手の要領で気絶させるのはいいんだけど、殺すとなると気が引ける。
「でもやっていかないとな...」
このレベルの相手ならいいが、強くなるにつれて余裕は出せなくなるだろう。全力出せないで死んでいくよりはしっかり相手を倒すことも必要になってきそうだ。早めになれていかないとね。
「ただ、クエストは簡単みたい。どうせ奥にボブゴブリンとゴブリンメイジでしょ。」
今回もサクッと終わりそうだ。さらに進んでいくとここが最深部らしい。部屋の前ににたどり着いた。赤を基調とした大きな扉の左右に炎が燃えている。
ボスの部屋って感じ。ボスバトルって初めてだし、どういこう。まあ、気楽に入っていけばいいか。
「たのもーう、道場破りでーす。」
威勢良く入っていく、とっとと倒そうと思ったら、どうも様子が違うぞ。学校の体育館くらいの大きさの部屋の奥には玉座2つ。
座っているるモンスターが明らかにでかい...5メートルはあるんじゃないか...頭に冠かぶってるし、マント羽織っていかにも強そう...
「…」
「…」
これ完全にキング、クイーンの立ち位置のやつ。絶対強い、てか殺される...
「えーと、かえりまーす。」
流石にこれはヤバいって!!
その頃
アリアと村長は
「ねえねえ、村長、裏山の洞窟からゴブリンは村に来ないの?」
アリアは不思議に思って村長に質問した。住み着いている割には村は凄く平和なんだもん。
わざわざ倒さなくてもいいんじゃないの?
「今のところ、来ないし悪さしないな、見張りがいるだけじゃ。」
「それってダンジョンじゃないの?ほんとうに洞窟なの?」
明らかにそうだ。向こうから襲ってこなくて、見張りもいるんじゃそういうことじゃない?
「なんじゃ、ダンジョンとは、洞窟は洞窟じゃないのか?」
「えっ、嘘でしょ、この村、ダンジョンの存在しらないの…」
パソコン、インターネットとか以前の問題。ダンジョンの概念は流石に知っててよ。何で誰も気づかないのよ...キメラゴン今頃ヤバいんじゃ...どうしよう...
どうなるキメラゴン...