第5話 「主人公の特権」
「はぁ、やっと村についたな...」
「ほんとよね...もう疲れちゃった...」
やっとおじさん(神様)のいっていた村に到着。もう夜になっちゃったよ...お腹ペコペコ。
「今日はもう飯食って休もうぜ...」
もう限界だよ...ほんと...
「そうね、散策は明日からにしましょう。」
アリアも同じ気持ちみたいだ。今日はゆっくり休んで明日に備えよう...
「...キメラゴン、あんたってやつは...」
「どうしたんだよ?アリア、そんな顔してさ。良く眠れなかったの?」
僕はぐっすり眠れて気分がいいが、アリアはそうじゃないのかも。慣れない旅ってこともあるだろう。
そんなこと考えてると怒鳴るようにアリアは言った。
「あんたがずっと女の子はべらせてるからでしょ!」
なんだ、そんなことか。昨日の飯屋で仲良くなった店員の女の子3人だ。そんなことで怒ってたのか。
「しょうがないじゃん、僕は一人しかいないんだよ。それでみんなもいいもんねー?」
「ねー!」
「何で女将さんまで一緒にいるのよ!」
年齢なんて関係ない。みんなかわいいんだから、仕方ないじゃないか。そうこうしてると鬼の形相で向かってくる...え?あ、アリアさん...?
「いい加減にしなさーい!」
ひっぱたかれて真っ赤になった僕の頬。まだヒリヒリしてるよ...親父にもぶたれたことないのに...
「アリアごめんて、ちゃんとやるから。」
とりあえず謝る。
ちょっと調子に乗りすぎました。
「分かったら良いのよ、とっとこの村調査するわよ!何か理由があるはずなんだから。」
確かにその通りで、あのおじさんはここに行けと指示を出したっきりなんだよね。ちゃんと教えてほしいよ。
「まあ村を探索していけばきっと手がかりも見つかるって、ぼちぼち頑張ろうぜ。」
「そうね、一軒一軒回っていって、話を聞きに行きましょう。」
アリアがそういうとそれに続いて僕もついていく。さーて、調査していきますか。
「まずはここだな。」
一件目に到着した。
優しそうなお姉さんが出迎えてくれた。
「いらっしゃい、旅のお方なのね。どうぞゆっくり...」
家のなかに入り壺を覗き、タンスを覗く。
「ガシャン」
壺を割ったが何もない。なんだよ。他にも何もなさそうだ。さて、次にいくとしよう。
「お邪魔しましたー。」
「...」
「...」
「次はここだ。」
二件目に到着、主人は畑仕事をしているようだ。中に人はいなかった。よし、
「お邪魔しまーす。」
中に入りタンスを覗く、冷蔵庫の中からベッドの下の隅々まで探していく。お、マントが落ちているな。売れば金になりそうだ。もらっていこう。
マリアは目をぱちくりさせて全然手伝ってくれない。何をしてるんだ。一通り探して何もみつからない。
「よし、次。」
「...」
「そろそろ手がかり欲しいな。」
三件目。父さんくらいの年齢のおじさんが優しく出迎えてくれた。
「いらっしゃい、ゆっくり...」
タンス、クローゼット、ゴミ箱まで探してみる。お、奥に壺があるな...
「ガシャン。」
中には薬草が入っている。使えそうだな。持っていくか。もうここはいいだろう...
「よし、次は...」
「お前ちょっとこい...」
何故か僕とアリアは村人に捕まり、村長の家の前までつれられてしまった。なんだこの村は、旅人くらい歓迎してくれよ。なんだってんだ。
そんなこと思っていると怖い顔したおじいさんがやって来た。村長みたいだ。一体何を言い出すのか、村長は口を開く。
「旅人よ、何故こんなことをしたんだ。」
何をいっているんだこの人、村を探索していただけだろ。
「何故って村を探索してたんだよ。」
「そうじゃないだろ、なんで人の家を漁り、物を壊しているのか聞いているんだ。」
え?どういうこと?そこ怒るの?ゲームだと当たり前じゃんか。とりあえず...
「主人公は壺やタンスを漁っても許されるじゃんか。」
「なに訳の分からないこと言ってるんだ!人の家を漁るなんて泥棒と変わらないだろ!」
確かにそうだ。自己中心的すぎた。ゲームの主人公って泥棒と変わらないな。そんなこと思っていると村長は口を開く。
「償いに、村人の困りごとを3つ解決しなさい。」
村長に言い渡された。まあ、困ってる人を助けるのは主人公の務めだな。迷惑かけちゃったしやってやるか。
「明日にまたやってもらうことを言い渡す。それまではゆっくりしていきなさい。宿を用意しておく。」
なんだ、優しいおじいさんじゃん。感謝。
「破天荒だが悪人では無さそうだ。」
そりゃそうだよ。主人公だっていってるじゃん。まあ僕が悪かったし、頑張りますか。
「分かりました、村のために働きます。」
ゲームの世界みたいだけど、常識をもちつつ行動しないとな。反省。そうだ、アリアにも教えてあげないと。
「アリア、人の家を勝手に漁っちゃダメだよ。」
「当たり前でしょうがー!」
ベチン。二度もぶった。親父にもぶたれたことないのに。