◆ん
驚愕した。
私の行動が丸写しされていた。何から何まで。
下までスクロールしきると、NEXTボタンが見える。
次も私の行動が記されているのだろうか。
困惑の中、キーボードを何気なく見た。
見てしまった。
その他、と書かれたキーが、あった。
テンキーの左上、ナムロックキーがあるはずの場所に、その他、と日本語で記されていた。
コンピューターから離れる。
そうだ。
友人に相談してみよう。
そう思い立ち、携帯電話を取った。
二つに折れたその携帯を広げる。
えっと、電話帳は。
電話帳を開き、その中の一人の名前を見つける。
蕨逸子。☆☆高校の同窓生。
確か、彼女の所属していた新聞部は、超常現象も対応していたはずだ。
急いで通話ボタンを押した。
ワンコール、ツーコール、スリーコール。
ちょうど音が切れたとき、繋がった。
「もしもし、蕨だ。どうした?」
聞かれて、慌てて、口から声が出ない。
「落ち着け。状況の理解がないと、私も解説のしようがない」
「はい、はい、はい」
深呼吸。
「えー、えっと、え」
「え、だけでは理解不能だ。青梅ではないのでな」
「はい。えっと、ボタンが変なの」
「ボタン?」
「そう。なんか、えっと、リモコンとか電話機とか、パソコンとか。あと電卓に、変なボタンが付いてるの」
「どんなだ」
「その他」
「そうか。少し待っていてくれ。調べる」
「お願い」
私のその言葉は最後まで届くことなく、通話は切られた。
携帯を耳元から外し、待受画面を見た。
何の変哲もない海の絵。
修学旅行で行ったO県で描いた絵だ。
と、視線がついついボタンに向いてしまう。
何となく溜め息をつこうと思ったが、それは途中で止まってしまった。
その他。
右下、*キーの所に、その他と書かれていた。
携帯を投げとばす。少しでも自分から遠ざけるために。
その携帯が鳴った。
躊躇ったが、大事な用事かもしれない。
恐る恐る手に取り、通話ボタンを押す。
「もし、もし?」
「分かったぞ。その他のボタンが何なのか」
蕨さんからの連絡はこうだった。
その他のボタン。
このボタンを押すと、その機器が電卓の代わりになるのだそうだ。
リモコン、電話機、電卓、パソコン、携帯。
共通点は数字のキーがあることだった。
通話を終え、コンピューターのスクリーンに表示されている『その他のボタン』の、NEXTボタンを押した。
そこには、今までの私の行動と、その心情が事細かに書かれていた。




