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地続きの島流し  作者: みかんたくわん
3/8

太陽の光が鬱陶しく感じるそんな朝

 人、人、人。どこから湧いてきたのか朝一番だというのに人で壁が出来ている。

 大学の入り口から中が見えないほど分厚く、暑苦しい雰囲気が漂っていた。


 人ごみという言葉にはゴミのように掃いて捨てるほどいるという意味もあるかもしれない。そんなことを考えながら1回生の清水は徹夜明けの重い体を抱えて、頭も抱えたい気分になる。


 目的地は必修科目として取るしかなかった経済学の講義がある2階の講堂。

 ただ、徹夜明けで体力が少ない状態でこの人ごみは辛いものがある。

 だが、流石に入学早々撤退という2文字は認められるわけもない。出来るのは特攻と結論が出たところで「おはようさん」という声とともに肩を叩かれた。


 振り返るといかにもスポーツマンといった風体の男が太陽の光を連想させるような笑みを浮かべて立っていた。まあ、自分の雰囲気を見てすぐに曇ったが。


「入学早々飲み過ぎ?」

「そんなわけあるか。未成年だぞ」

「真面目だねぇ」

 真面目ってなんだ。法律だろうが。

 カラカラと笑う男に返事の代わりにどんよりと濁った瞳で睨み付ける。


 彼の名前は中野。自分と同じ1回生であり、たまたま入学式で隣に座っていて、たまたま同じ学部学科であり、たまたまこれから受ける講義が一緒なだけの関係。

それ以上でもそれ以下でもない。


「んで、実際は?」

「バイトだよバイト」

「その感じだと夜遅くまでしてたんだろ?何のバイト?」

「……さあ?」

「なんで分かってないんだよ」と苦笑されるがそんな事言われても自分だって何のバイトしてるか分からない。確実に言えるのは掃除とかの雑用はしてるってことだけだ。


 とりあえず中野に事情を説明して、先頭で道を切り開いてもらうことにした。渡りに舟とはこのことか。人の波だしちょうどいい。

 再び太陽のような笑顔を浮かべた中野が快く引き受けてくれて、人の波を掻き分けてぐんぐんと進んでいく。その背についていくことで快適にかつ、安全に歩を進める。うむ、頼もしい。


「そういえばサークルとかどうする?」

 先を歩く中野がこちらに再び話をふってくる。その手にはすれ違いざまに配られたチラシが握られていた。


「興味ないかな。バイトもあるから忙しいし」

「サークルに入ると先輩から楽な講義とか単位の取り方とか聞けるらしいけど」

「……ちょっと考えておく」

 その情報はとても魅力的だが、少なくともそのチラシの「離島研究会」なるものはお断りしたいところだ。連れていかれるのがコンパとかでは無く、離島だと洒落にならない。


「中野はどうすんの?」

「中学からずっとバレーしてたから大学も続けるかな。まあ、ただの惰性なんだけどさ。っと、着いたぞ」

 いつの間にか講堂の前についていたようで扉を前にして中野が振り返ってくる。


「さあ、今日も1日頑張りますか!」

 中野の気合いを入れた大きな声が耳に届き、こちらにも気合いを入れるように背中を叩かれる。

これさえなければなあ。


 願わくは夢の中ではこの明るさに縁がなく、ゆっくりと眠れますように。

 大学に来ている本来の目的をかなぐり捨てた思いを抱いて講堂の扉を開けた。



 さあ、今日も憂鬱な1日が始まる。

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