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革命――ある女兵士の逃亡譚  作者: 姫草りあ
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第十三話 全てを賭けて

覚悟のお話しです。

人は覚悟を決める瞬間が多々あると思います。

それがどんな結末を生もうとも。

「ヤンが捕まっただと……」

スレイは呆然として立ちすくむ。

エメラも同様に呆然としている。

「嘘だろ……」

絞り出すように声をあげるエメラ。

「助けに行くぞ! シャトー爺、エメラ、手を貸してくれ!」

「残念ながら、それは得策ではありません」

「なんだと、シャトー爺!」

「現時点、全く情報がありません。状況も分からずに、闇雲に行動するのは無謀と言うものです」


暫し緊張が走る。


「だが俺は助けに行く! もう仲間は誰も失いたくないんだ……」

スレイの本当の思いだろう。もう誰も失いたくない。

それはここにいる誰もが一緒だった。

「私が行く」

急にエメラ。

「なんだ? お前が行ってもどうにもならないだろ?」

「いや……。私はユラの姉だ。交渉出来るのは私しかいないだろう」

「それこそ無謀だろう……。お前は隊長のの……おやっさんの娘なんだ。一番危険な目に遭ってほしくない」

「私以外この役が務まる者はいないんだ。分かってくれ、スレイ」

スレイは唇を噛む。確かにエメラはユラの姉で、ユラは現在大統領代理をしている。

交渉が成功すれば、ヤンは助かるだろう。

だがしかし、その後はどうなるのだ? エメラはその後どうするのだ……?

「ダメだ……。と言いたい。だが約束してくれ」

「どんな約束だ?」

「無事帰って来るのと、帰れなくても生きてくれること。これだけだ」

「分かった。約束する。それでは行ってくるよ。これが私の新生『狼』としての初仕事になるな」

エメラはクスっと笑った。今まで見せてこなかった、本当に笑顔なのかもしれない。

「みんな、後のことは私に任せてくれ。必ずヤンを取り戻してくる」

そう言って地下室から階段を上っていく。そして、1階の店内にたどり着く。


店内はアルコールの瓶でいっぱいになっている。時折シャンソンと思わしき音楽がラジオから流れる。

エメラは覚悟していた。きっと、もうここに戻ることはない。『狼』の初めての仕事にして最後の仕事。

朝焼けがエメラを照らす。ふっと息を吹くと、エメラは両頬を手で叩く。

「さて、ユラに会いに行きますか」

エメラは外へ出る扉の前で一度止まった。

「みんな、ごめん。約束は多分守れない」

それでもエメラは行かなければならないのだ。

それは『狼』となると決めた時からの覚悟。父さんも同じ覚悟だったのかな。

エメラは貧民街の朝へと歩み出した。

覚悟は実を結ぶのでしょうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] エメラの初任務がいきなり大掛かりなものであるというのが面白いですね。続きを気長に待っております。
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