昭和17年8月8日 サボ島周辺 午後11時
昭和17年8月8日日 サボ島周辺 午後11時
第八艦隊は鳥海を先頭に単縦陣でサボ島を目指し直進していた。
「戦闘用意」
「速度そのまま」
「命令あるまで射つな」
次々と命令が発せられる。
艦隊はサボ島をかすめるように突き進み、通りすぎる。敵艦隊はもう目と鼻の先だった。
「全艦 突撃!」
三川中将の号令が下る。
「左舷 敵艦見ゆ!」
鷹の目を持つ見張り員の声が響く。
「魚雷戦用意」
「魚雷戦用意」
「魚雷発射」
「魚雷発射」
まずは挨拶代わりにと鳥海から四本の魚雷が発射されるが、命中には至らない。
「右舷 艦影三!」
再び、見張り員が敵を発見する。
「取り~舵」
「取り~舵」
「偵察機に照明弾を投下させよ」
無電で指示か飛ぶと右舷の海がパッと明るく照らされた。二時間ほど前に先行させていた水上偵察機が照明弾を落としたのだ。
照明弾を背景に敵の艦船が真っ暗な海面にくっきりと浮かび上がる。
一つ、二つ、三つ。
三つ目の奥にもう艦影が重なっていた。
合計四隻だ。
「全砲門開け」
「全砲門開け」
「魚雷準備、急げ」
「魚雷 準備!」
「右一八 仰角二四」
「右一八 仰角二四」
「撃ち~かた 始め!」
「撃ち~かた 始め!」
号令一下、四本の魚雷が発射され、続いて二十センチ主砲十門が一斉に火を吹いた。
二本の魚雷が命中し、敵艦の艦首付近に水柱が二つ沸き立った。さらに砲撃が命中する。敵艦はたちまち速度を落とし、大きく傾斜する。
鳥海の攻撃を合図に後続の青葉、加古らも一斉に砲雷撃を敢行する。
魚雷、砲撃が次々と敵艦に命中していく。
完全な奇襲だった。
この攻撃で巡洋艦キャンベラが沈没。シカゴ、パターソン、バークレーが海域を離脱した。
一方、第八艦隊は全く被害を受けることなくサボ島を中心に半時計回り航行していった。
2019/08/08 初稿




