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青い海、青い空、白い雲…… 赤い砂浜  作者: 風風風虱
第二章 我らその川を越えて行かん
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昭和17年8月20日 川東岸 午後8時

昭和17年8月20日 川東岸 午後8時

ルンガ飛行場の東 約1.5キロ


 目の前に川が横たわっていた。風に吹かれ時折水面(みずも)がさわさわと波打ち月の光を反射した。


「敵の姿は確認できないな」


 沢田大尉は双眼鏡から目を離すといった。

 隣で腹這いになっている斥候班の兵長が、そうですね、と答えた。


「ここに防衛線を張っているという情報だったが……

罠かな?」

「撤収中という話もありましたから。

もう、敵さん逃げた後なんじゃないですか」

「勝ち逃げなんぞされてたまるか!なんとしても斥候隊の敵を討たんと腹の虫が収まらん」

「……ですね。

渡河地点は大体目星がつきましたので、取り敢えず我々が対岸に渡ってみます」

「そうか。気をつけて行ってくれ」 


 兵長はこくりと頷くと闇へ消えていった。



 しばらくすると斥候班が渡河を開始した。腰まで水に浸かりながら苦労しながら川を渡っていくのを沢田大尉は固唾を飲んで見守っていた。何時間にも感じられる緊張の時間が過ぎる。

 斥候班は全員無事に川を渡りきる。何も起きなかった。

 ほっと胸を撫で下ろしていると、対岸で懐中電灯の光が灯りゆっくり大きく左右に動いた。

 問題なし、の合図だ。


「大隊に伝令を出せ。

斥候班 渡河完了。

敵の気配なし。

第二中隊はこれより渡河を敢行して橋頭堡(きょうとうほ)を確保する」


□□□


 一木大佐は、続々と川を渡る隊員を見守っていた。砲兵中隊が渡り初めていた。


「砲兵が一番大変ですね」


 富樫大尉の言葉に、そうだな、と大佐は答えた。


「1時間ほどかかるか」

「そうですね。その後に工兵中隊が続きますので支隊が渡りきるのは2200(ニイニイマルマルじ)前後と思われます」


 そうか、と一木大佐はあまり気のない返事を返した。

 この川に敵は防衛戦を張っていると予測していたのにもぬけの殻とは、拍子抜けも良いところだと思っていた。


 やはり、敵は撤収を進めているのか?


 ならば一刻も早く飛行場を奪還しなくてはならない。と、大佐は少し焦っていた。


「支隊全部が渡河したら行軍隊列で一気に飛行場に突入する」


 一木大佐は西の方角に目を向けると言い放った。

 



2019/08/20 初稿

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