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青い海、青い空、白い雲…… 赤い砂浜  作者: 風風風虱
第二章 我らその川を越えて行かん
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昭和17年8月19日 コリ岬 午後1時

昭和17年8月19日 コリ岬 午後1時

飛行場の東 約12キロ


 小屋の隅に置かれた水瓶の水をすくってクンクンと臭いを嗅いでみた。特に変な臭いはしないので口に含み、舌の上で少し転がした。そして、そのままごくりと飲み込む。

 渋谷大尉は満足そうに一人頷くと水瓶の水を自分の水筒に移した。コルクの蓋を閉め、さらにコップにもなるアルミの上蓋をねじ込む。


「よし、いくぞ!

小休止終了、出発する!」


 渋谷大尉の言葉に村のあちこちこら斥候隊員が顔を出した。


「密林へ向かう道があるな」

「密林へも斥候を出しますか?」


 館小隊長の言葉に渋谷大尉は持っていた地図を確認する。


「敵の防衛線は予測では十キロほど先のようだからもう少し海岸沿いを行った方がいいかな。

その道もどこは続いているか分からないしな。

調べるにしても後だろう」

「わかりました」


「おい――」


 密林に続く道へ向かう斥候員を館小隊長が呼び止めようとした、その時


ダダダダダダ

ターン ターン

ドドドォ


 密林から雷鳴のような銃声が鳴り響いた。

 あっという間もなく五人の人間がなぎ倒される。

 舘小隊長は一瞬あっけにとられる。問いかけるように後ろの渋谷大尉を振り返る。

 大尉はいなかった。

 いや、違う。両手を上げて地面に倒れていた。胸や腹が真っ赤に染まっている。


「て、敵襲! 伏せろ! 下がれ! 敵襲だ」


 舘小隊長は手近のヤシの木の陰へにしゃがみこむ。耳元をビュンビュンと銃弾が飛び交う。


「一体何人いるんだ?」


 銃声がひっきりなしに鳴り響き、止むことがない。木の陰から指一本出せない。


「うわぁー!」


 すぐ横で誰かが小銃を持ったまま悲鳴を上げてひっくり返った。


「もっと姿勢を低くしろ! ゆっくり下がれ」


 館小隊長は懸命に叫ぶが、嵐のような銃声に掻き消されて隊員たちの耳には届いていない。みな突然の奇襲に浮き足立っていた。次々と銃弾に倒されていく。

 拳銃を抜くと、木の陰から何発かを密林目掛けて撃ってみたが敵の銃撃は一向にやむ気配がない。まさに焼け石に水だった。


ズガガガガ


「うぎゃ」

「ぐぅあ」

「ぎゃあーー」


 不意に左と後方からも銃弾が飛んできて、後退しようとする隊員を薙ぎ倒した。

 館小隊長は愕然とする。いつの間にか囲まれている。敵の数も分からない。退路もない。この絶望的な状況をどう打開すればよいのだ。


 なんとしても囲みを破り、このことを支隊長殿に知らせなくては


 館小隊長は唇を噛み締めた。


「うっ」


 左脇腹に火箸を突き入れられたような熱さと痛みを覚え、館小隊長はうめいた。

 痛みをこらえ腹に手をやるとぬるりとした感触がした。

 恐る恐る見た左手は真っ赤に染まっていた。



2019/08/19 初稿

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