昭和17年8月7日 大本営 昼
昭和17年8月7日 日本 大本営 昼
「8月7日 未明
ガダルカナルで飛行場を設営中の我が軍にアメリカが攻撃を仕掛けてきました」
大本営陸海軍部作戦課のガダルカナル侵攻対策研究会での席である。
「しかし、アメリカは未だ戦力が整ってはおらんのだろう。
確か、本格的な反抗時期は18年中期頃の見込みだ」
「ならば、今回の侵攻は威力偵察を目的とした一時的な攻勢と判断して宜しいかな」
陸軍と海軍の参謀たちはみな訳知り顔で頷き合う。
「ああ、しかし、だ」
手を挙げたのは陸軍作戦課長だった。
「このままガダルカナルの飛行場が敵の手に渡ったままでは、この方面での戦闘に多大な支障が出ると予想される。
ここは即決で飛行場の奪還をするべきと思うがどうか?」
陸軍作戦課長の言葉に海軍参謀は少し表情を曇らせる。
「それは、そうですが、海軍には奪還に対処する部隊が……
陸軍さんは、今回の事態解決に部隊を派遣して頂けるのですか?」
「状況次第で部隊派遣を検討する」
「そうですか。ではよろしくお願いします」
□□□
「……という話になりました。
自分としてはミッドウェー攻略戦に投入予定だった一木支隊が適任と思います」
研究会から戻ると陸軍作戦課長は上司である第一作戦本部長にそう進言した。
「海軍さんも先の敗戦で大分凹んでいるから、協力してやるべきだろうな。
一木大佐なら上手く対処してくれると思うが……
ところで肝心の敵の兵力はどの位なんだ?」
「海軍さんの話だと二千ぐらいだろう、とのことです。
向こうさんの攻勢は一時的なもの。偵察の域を出ないので、既に撤収を始めている可能性もあります」
作戦本部長は腕組みをして少し考え、言った。
「ふむ。なら一木支隊でいいんじゃないか」
「では、そのように計らいます」
2019/08/07 初稿