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青い海、青い空、白い雲…… 赤い砂浜  作者: 風風風虱
第二章 我らその川を越えて行かん
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昭和17年8月19日 タイボ岬 午前零時

昭和17年8月19日 タイボ岬 午前零時

ルンガ飛行場の東 約35キロ


 一木大佐は出撃時に渡されたガダルカナルのがり版の地図と航空写真をじっと睨み付けていた。そこにもう一枚手書きの地図があった。

 上陸後、接触してきた海軍陸戦隊からもたらされたものだ。彼らは8月7日にアメリカ軍に追い落とされてから、いままでずっと飛行場の西南に位置するオースチン山の立て込もっていた。その間に調べたアメリカ軍の防御線などの情報が書き込まれていた。地図によるとアメリカ軍は飛行場を中心に三方に防御線を張っているようだった。

 西のオースチン山付近、南の密林地帯、そして東の中川の西岸。


 このまま西進すれば中川で接敵することになる

 

 と一木大佐は思った。仮に予備を持つとすると単純計算、二千の兵を四等分として東の防御線の人員は五百になる計算だ。支隊で一気に突撃すれば防衛線を抜くのも容易いであろう、と大佐は思った。


 六千かもしれません!


 ふと、松本中佐の言葉が思い出された。もしも、松本中佐のいう通り敵兵力が六千なら正面の敵の数は一気に千五百に膨れ上がる。

 一木大佐は再び腕を組んで悩んだ。それなりの備えをしている上に、数も倍近くの敵を相手にするとなるとおいそれとはいかない。

 となると防御線の弱点を突くのが常道で、防御線のほころびは主に担当区域の境目、すなわち東と南の防御線の接続点となる。

 だが、その接続点は密林の中だ。

 航空写真を穴が空くほど眺めて見たが中川上流は密林に隠れ、状況を見定めることはできなかった。一木大佐は暗闇に横たわる密林へと目を向ける。密林のほんの入口ですら木々が折り重なり数メートル先を見通すことが出来ない有り様だ。それを海岸から何キロも分けいることができるのか?歩兵はともかく砲兵は無理だろうと大佐は思った。更に言うなら右も左も分からない渡河地点を探して密林をさ迷い歩く危険もある。

 その危険を犯すのと被害を受けても一点突破を試みる危険とどちらをとるべきか?

 いくら考えても答えは出なかった。


 これ以上は敵情や密林の状況を確認してからでないと判断のしようがない


 一木大佐は夜間行軍でできるだけ飛行場に接近して、夜があけたら、斥候隊を先行させて敵情を探る決意を固めた。


「よし、そろそろ行くか」


 一木大佐は近くで休憩していた富樫大尉、蔵本大隊長に合図する。

 富樫大尉が頷くと号令を発した。


「総員 休息止め!

これより飛行場に向け進軍する!」


2019/08/19 初稿


●中川

イル川のこと

日本軍はこれを中川と呼称していたので本文では中川で統一する


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