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青い海、青い空、白い雲…… 赤い砂浜  作者: 風風風虱
第二章 我らその川を越えて行かん
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昭和17年8月18日 ガダルカナル 午後9時

17年8月18日 ガダルカナル タイボ岬 午後9時


「総員、乗船せよ」


 甲板のあちこちで小声での号令がかかる。それを合図に甲板にいる兵士たちが縄ばしごを伝い折畳舟へと乗り込んでいく。明かりは厳禁。照らしてくれるのは星の光ばかり。手元すら不如意の中を兵隊たちは必死に降りていった。

 駆逐艦 嵐の甲板に立つ一木大佐は前方へと目を向ける。

 濃紺の夜を背景に黒い巨大な影がそびえたっていた。

 ガダルカナル島だ。

 大佐は双眼鏡をかける。波打ち際からそれにつづく砂浜を注視する。

 人の気配はない。

 砂浜の奥に双眼鏡を向ける。そこはすぐに木が乱立する密林に変貌した。

 いくら目を凝らしてみても密生する植物の枝や葉を見通すことはできない。

 夜の密林は見れば見るほど怪しくなる。木の裏側、葉の影にアメリカ兵が潜んでいるのではないかと思えてくる。

 

 平常心だ


 一木大佐は双眼鏡から目を離す。

 

 疑心暗鬼になってはならない。肝要なのは目に見える現実に冷静に対応すること。臆病風に吹かれて機を逸してはならん


 一木大佐はそう自分に言い聞かせる。その時、富樫大尉が近づいてきた。


「第一陣の準備が整いました」

「よし、上陸開始せよ」


 タン タン タン タン タン


 内火艇(ないかてい)のエンジンが乾いた音を立て、動き始める。六隻の駆逐艦から十二艇の内火艇が一斉にガダルカナルの海岸を目指す。一つの内火艇は三艘の折畳舟を牽引していた。


「よし、我々も舟に乗り込むぞ」


 一木大佐は横に立つ富樫大尉の肩をポンと叩くと言った。






 

2019/08/18 初稿


●内火艇

『うちびてい』ともいう。

内燃機関(=内火)を駆動源とした小さな船。

主に本船と港を結び、人や物資を運ぶのに利用される。

陽炎型駆逐艦には二艇装備されていた。

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