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昭和17年8月10日 ラバウル 午後

昭和17年8月10日 ラバウル 午後


 百武中将と二見参謀長がガダルカナルについて話したその日の午後ことだった。

 作戦課の事務室でニューギニアの地図を睨み付けていた二見参謀長に松本中佐がメモを片手に近づいてきた。


「二見参謀長。

大本営から、我が第十七軍に第八艦隊と共同してガダルカナル飛行場を奪還するようにと通達が来ました」


 意外に早かった、と二見参謀長は思う。

 今朝、話していた兵力増加の打診を切り出そうとした参謀長の言葉は続く中佐の説明に遮られた。


「その為に第十四軍から青葉支隊、及び大本営直轄の一木支隊を第十七軍に編入する。

第十七軍としては一木支隊を直ちに派遣して速やかに飛行場を奪還するべし、とのことです」


 ほう、先手を打ってきたか、と二見参謀長は思った。

 松本中佐は説明を続ける。


「一木隊は現在輸送船でトラック島に移送中。到着は十二日に為る予定。青葉支隊の再編成は十五日以降とのことです。

続いて、ガダルカナルの敵情ですが、推定兵力およそ二千。

飛行場の活用は認められないことから一時的な攻勢と思われるので敵が撤収する可能性もあり。飛行場を破壊されない内に取り戻せ、と言うことですかね」

「二千?ちょっと待て、敵の推定が二千人と言ったのか?」

「はぁ……大本営はそう言っていますが」

「私は輸送船がガダルカナル沖に二十から三十隻来ていたと聞いているぞ。

規模にしたら一万五千人規模だ。

一木支隊の三千人を投入して取り返せる程度のものとは思えないぞ」

「いや、アメリカ人は贅沢にできてますから、輸送船が三十あっても三千人か四千人と言ったところではないですかね。

二倍程度の戦力差なら我が軍なら問題ないでしょう」

「第十七軍からも偵察機を出して敵情を確認すべきだろう」

「ソロモン諸島は担当戦域外ですからそんなことはできません。

必要な情報は第八艦隊もしくは大本営から貰えば良いのです。

多すぎる情報は混乱を招いてかえって判断を誤らせるだけです。

それに大本営はすぐに一木支隊を派遣して奪還しろと言っているのですよ。そんな悠長なことをしている時間はないと思います」

「一木支隊の派遣に異存はないが、まずは敵情を正確に把握することが先だと言ってるんだ。

状況次第では青葉支隊や川口支隊の投入も検討しなくてはならん」


 二見参謀長の言葉に松本中佐は眉をひそめた。


「それは大本営の考えと微妙に違っていると思います。我々の判断を越えるので軍司令の決済を伺うのを意見具申いたします」


 松本中佐の言葉に二見参謀長はやや憮然とした表情で立ち上がった。


「よかろう。ではすぐにでも話しに行こう」


 二見参謀長はそのまま事務室を出ていった。松本中佐は一度肩をすくめると、参謀長を追いかけるように部屋を出た。


2019/08/10 初稿

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