45話 消滅と生成
【前回までのあらすじ】
聞き慣れた実況の声、それは剣士メーロンのもとを離れたネコ子のものであった。やはり仲間の実況は体に馴染むと、主人公イセキンは感じる。勝負を決めるためイセキンは全身の力を拳に込める。
よし!
「はああああああ!」
渾身の力を拳に込める!
「さあ、力が溜まってきたニャ!全ての属性の力を限界まで貯める事で消滅属性へと昇華させる、イセキン君の必殺技〜!」
これこれ。やっぱりネコ子の実況がいちばんしっくりくるな!
「イセキン君の力に呼応するように、パレシアちゃんが詠唱を始めるニャ!」
パレシアはそっと目を閉じ、集中して詠唱する。
「火・水・木・闇・光の精霊よ、余が掌に会せよ。其の儀式に捧げるのは無の抱擁……」
キネシスは呟く
「我が名はキネシス。歴代魔王すべての記憶である。すべての次元を消滅させ、また朕も共に滅ぼう。世界はもう一度無から始まるのだ……」
キネシスから異常な魔力。
青白く輝くのは魔力のエーテル化の影響か、神々しさすら感じる。
その手から放たれる極大魔力の解放。
怒涛の衝撃が俺たちに襲い来る!
刹那、パレシアがカッと目を見開く!
「《アニヒレーション》!!」
轟音を響かせ消滅の魔法が放たれる!
「放つ!これがパレシアちゃんの極大消滅魔法!《アニヒレーション》!すべての属性と魔力を集中させ解放するアナムネにおける究極の技ニャー!」
「俺も行くぜ!天を穿つ大剣が如く!喰らえ『天穿拳』!」
オリハルコンの篭手とともに、大きく拳を振り上げる。
「おおおお、《アニヒレーション》と『天穿拳』が合わさったニャ!その光はまるで聖剣の輝きニャーー!」
――――――!!
物質が消滅するときに発せられる力は絶大で、これが消滅属性の力の源泉だ。
そこに同じレベルの力が加わると、今度は逆に無から物質を生み出すことになる。
物質は互いにぶつかり合いまた消滅する。消滅は生成を孕み、生成は消滅を促す。
この状態は長く続くわけではない。10秒ほどで消滅と生成の振動は相転移する。
相転移とは、気体が液体へ、液体が個体へと状態を変えること。
強すぎるエネルギーは急激に冷えて場を生み出す。
思念体である魔王キネシスは、無と無が合わさる対生成の力によりゼロへと消滅した。
【次回予告】
気がつくと、イセキンの眼の前には神が居た。曰くとイセキンは死んだという。イセキンは事態が飲み込めないのだった。
次回、第46話:伏線の回収




