4話 異世界転生していきなりドラゴン5体!
【前回までのあらすじ】
神から転生先の能力を決めるため、ガチャをひかされた主人公タカオ(30)。ガチャなら……ということでリセマラを提案するが、レア度【SR】の能力『身体ステータスMAX』で妥協する。そして異世界に降り立った。
太陽に照らされた土の匂いがする。若々しい草木の揺れる音。肌を撫でる爽やかな風。
「ここは……草原?」
何でこんなとこで寝てたのか。ともあれ転生は成功したようだな……
2度寝でもしていたい、そんなまどろみの中重いまぶたを開けようとしたその時。
ドオオオオオオオオオオオオオオン!
突然の轟音。耳をつんざく音は大地を震わせる。
「うおおお何だ?」
まどろみなんて悠長なこと言ってられる状況じゃないぞ。
状況を把握しようと、急いで起き上がる。
目に飛び込んできたのは、高温のマグマに氷が貼り、草木が茂る不思議な空間。
草原なんていう平和的な場所じゃないことはすぐにわかった。
そして広がる真っ赤な血の海。
猛獣にでも食いちぎれたかのような、辺りに散乱する肉片。
焼け焦げ、煤となった塊。
霜が降り、冷たく固まった体の部位。
それらは明らかに一人のものではなく、何人かが犠牲になったであろう量がそこにあった。
「なんだ……これ」
そして、辛うじて立つ女の姿。
その女が睨む視線の先……
「1、2、3、4、5体……うそだろ、多すぎる……」
赤、青、緑、黒、白の5色のドラゴン。
絶望。
2つの文字が脳裏をよぎる。
「なんなんだこれ!目を覚ましていきなりなんだこれ!」
状況が理解できない。
でも考えろ。よく観察するんだ俺!
女は果敢にもドラゴンたちと戦いを繰り広げる。
出で立ちはまるでRPGの世界の女戦士。
大きな盾と剣を手に、お約束の露出度高めの鎧を装備。鎧は全体的に鋼色をしていたが、所々に入る差し色の赤は、彼女の赤髪と統一感を思わせる。
戦いを見ているとドラゴンの特性が解ってきた。
赤いドラゴンは火を吐き辺りを焼き尽くす。
青いドラゴンは水を吐き、冷気で周りを凍らせる。
緑のドラゴンは大地を揺るがし、風や植物など自然を利用した攻撃を繰り出す。
黒いドラゴンは辺りを闇に包み、
白いドラゴンは逆に稲妻など光を操る。
女戦士は5色のドラゴン相手にうまく立ち回っている、がそれでも防戦一方だ。
ろくに攻撃はできていない。たとえ防御が完璧でもそれではジリ貧。
やがて体力を削られ、やられるのは目に見えている。
「助けなきゃ!」
本能的にそう思った。女戦士を殺した後、次のドラゴンのターゲットは恐らく俺だろう。
どうせ攻撃されるなら、戦力が多いうちにこちらから攻撃を仕掛けたほうが良い。
不思議なことに、俺は金属製の鎧と腰に剣を身につけていた。それは辛うじて最低限の戦いの装備はあるように思えた。
ジャキン!と剣を抜いてみる。
鋭く輝く刀身に、映り込んだ自分の顔をみて驚く。
「若返ってる……」
未成年。17〜18歳そこらのように見えた。若々しく、弾けるような体がそこにあった。
ごくり。と唾を飲む。
身体ステータスMAX……てことか。信じるぜ!神さま!
「うおおおおおおおおおお!!!」
全力でドラゴンに走り寄る。
ビュオオオオオっと体から風を切る音が聞こえる。
体が羽根のように軽い。
女戦士は俺の存在に気づいたのか、俺と目があう。驚いた表情。
だが俺の狙いは、彼女に業火を吐き続ける赤色のレッドドラゴン!
「はあっ!」
と地を蹴りジャンプ!
「よくわかんねーけど、炎には冷気だろ!?なんでも良いから冷気系の攻撃出てくれ!」
剣を握る手に力を込める。
「うおおおおおおおおおおおおお!!!」
叫ぶとともに、剣を振り上げる。
刹那、刀身は青白く輝きを放ち、辺りは急速に凍り始めた。
「その、ご自慢の炎ごと凍ってしまえ!レッドドラゴンんんんん!」
……いかん、実況配信を見過ぎた影響か、気合が入る場面で喋っちまった。
【次回予告】
火・水・木・光・闇、全ての属性を駆使しあっさりとドラゴンを倒す主人公タカオ!しかし助けたはずの女戦士は、仲間を失った現実を受け入れることができず、大泣き。タカオはただ呆然と見つめるより術がなかった。
次回、第5話:ドラゴン瞬殺!泣き崩れる女戦士