38話 来訪者
――[作者コメ]
すいません年末進行がエグくて、夜に飲み会も入るのので更新が遅れがちです。
【前回までのあらすじ】
配信師ネコ子の裏切り、パレシアとのキス動画流出。主人公イセキンは自暴自棄になる。と、メーロンは「魔族と人間は争いの根源だ、この2種族劣等種族、残念ながら殲滅するしか他無い」との持論を展開する。
メーロン……こいつ言ってることがめちゃくちゃだ。種族間の隔たりのない平等な世界を謳っておきながら、人間と魔族だけは根絶やしにするだと……!?
「メーロン、貴様忘れたか。余が貴様を拾ってやったことを。貴様も人間であろう?」
「そうだ……俺も人間だ。片腕の障害をもったまま俺は人間として生まれた。しかし人々からは差別をうけ、魔界に助けを求めた。お前はそれを受け入れてくれた。それには感謝しているよ。だがな、他の魔族たちは、腕の数ではなく、俺を『人間』だと言って馬鹿に迫害したのだ。どちらの種族にも仲間にされず、俺は文字通り腕一本でここまでやってきた。その気持ちお前にわかるか?」
「……ふ、わかる必要がないな。貴様は同情がほしいのか?仮にも余の側近を努めたメーロンともあろう者が、そのような刹那的な感情に揺れ動かされているとはな。……愛を持て。変えられぬ現実を怨んだところで世界は変わらぬ。迫害されてもなお、それを赦す愛を持て。そしてただ自分の考える理想のみを追いかけよ。否定的な先入観の束縛から自己を解き放て」
「言わせて置けば……!」
「行ったー!メーロン様が攻めるニャ!縮地で距離をつめ、又もティアマトの大剣を薙ぎ払う!」
魔王またも杖で防ぐ!しかし!
ドン!
「うぐぁ!!」
「ニャハハハ!雑魚が!視聴者数100万ビューを超えた力があれば、魔王などこんニャものよ!魔王は防御しましたが、ゴミのようにふっとばされました!ニャハハ!」
土煙を上げながら、もみくちゃにふっとばされるパレシア。
「やめろおおお!!」
まずは実況によるビュー数の増加を防がなければ!狙いはネコ子!
「おーっと?イセキンも参戦か!?無駄ニャんだよ、お前!ボクを狙ってもな、その力の差は歴然ニャ!」
ネコ子は俺の正拳突きを紙一重で避ける。
「大地に芽吹く草木よ、悪戯に走る影に枷をはめ拘束せよ!《コンストレインブッシュ》」
「な!?」
足元の草木が急速に成長し、鬱蒼と茂る。蔦や蔓は俺の足元に絡み、ついには身動きが取れなくなった。
「ヒャハ!おめぇ、遅せえんだよ。そんな動きじゃボクは倒せないニャ!」
そう行って、ネコの爪で俺をひっかく。
「ぐおおああああ!」
激痛!
その攻撃モーションは、ネコパンチと変わらなかったとしても、100万倍の威力に体は悲鳴をあげる。他のどの戦いよりも痛かった瞬間かもしれない。
「ニャハハハ。なかなかいい声で哭くじゃニャいか。クソ雑魚のくせにボクに歯向かうんじゃニャいよ!オラあ!」
爪を振りかぶり、殴りかかるネコ子。しかし2度目の激痛はやってこない。
「やめるんだ、ネコ子!」
「ニャあン?ツァラ……貴様邪魔をするかニャ?」
ネコ子のネコパンチを、全力でガードしてくれたツァラ。
「……仲間が無抵抗にやられるところは見ていられなくてな。もちろんネコ子、お前も私達の仲間だろ」
「ツァラ……」
「イセキン。お前を完全に信じていた私が馬鹿だったかもしれない。私自身も気持ちの整理は出来ていない。元の信頼関係には戻れないかもしれないが、でも、今ここでネコ子に殺られてしまうのは間違っている気がする」
「ニャあ?くっせぇお仲間ごっこをしてる場合じゃねえんだよ糞が!お前も死にてぇのか?」
「ズタボロになりながらも!さすがパレシア様は立ち上がる!コレが魔王の力よ!」
この声は……!?
「おまたせしましたな。パレシア様、そしてイセキン、ツァラ」
「お……遅いではないかペリオリ。まあ良い」
「はっ!パレシア様!ここから全力で《ライブ》してまいります」
パレシアとじじいの黄金コンビ!
敵であるときは鬱陶しさが半端なかったが、今となってはなんと心強いことか!
「ニャハハハ、ペリオリが来ても同じ事ニャンだよ!見てみろよお前らのビュー数をな」
急いでボードからパレシアちゃんねるを確認する。こちらも炎上している。
視聴者数は1万ビューを切る。しかし、《ライブ》によるバフがないよりはマシか。
コメントもひどい。
そりゃそうだ。
洗いざらい全部喋った挙句、人間とイチャついてたんだからな。
あーーーもぅ。俺死にたい。
【次回予告】
パレシア、メーロンの激し攻防が繰り広げられる。しかしメーロンの放つ物理と魔法の一体攻撃がイセキン一行を襲う!
次回、第39話:避けきれるか!?絶対零度の極大衝撃!




