34話 ティアマト撃破!天を穿つ勇者の拳!
—[作者コメ]
出張から帰ってきましたので、今日から深夜更新になると思います。
【前回までのあらすじ】
ポンコツの鎧をつかまされた聖騎士ツァラ。鎧はボロボロに砕け、半裸状態。主人公イセキンは、その間に貯め続けた力を一気に解放する!凄まじい回転蹴りがティアマトを襲う。
「おおお!大蛇たちに次々と蹴りが決まっていく!まるで、竜巻を連想させる激しい連続回転蹴りだニャ!ドシン!と音をたて、次々と倒れていく大蛇たち!」
「な……なんだその技はー!?我が子を次々と蹴り倒す、恐ろしき破壊力なのだー!」
「思わずひるむティアマト!空中回転蹴りは、高速で移動しティアマトとの距離を縮めるニャ!」
たまらずティアマトは、後ろに下がる。母だか神だか得体の知れないやつだが、動揺しているのは間違いない!
「蛇どもはこんなもんでいいか!さっさと本体に攻撃しないと、キリがないからな!今度は、手のひらに力をためて……」
「足を踏ん張り、両掌を腰から勢いよく前に突き出す!その掌は狼の口が如く!突き出した双腕からは、圧縮された魔力が波動となり、射出されるニャー!!」
「喰らえ!消滅の波動ぉぉぉぉおおおお!」
「馬鹿め、そのようなちゃちな技を我が喰らうとでも思ったかー!頭がガラ空きなのだー!」
「ニャおーっとぉ!高く空中へ飛んだのは、ティアマト!」
「我が子よ、我が掌に集まれ、大剣へと姿を変えるのだー!」
「残りの大蛇たちが剣に姿を変えて、ティアマトの手の中に集まる!大きく振りかざした大剣はイセキン君の頭上を狙うニャ!!」
掛かったな。
「空中では、攻撃の避けようが無いだろ!?俺の一撃を食らってみろぉおおおお!」
「イセキン君、腰を深く落とし、右拳に力を入れる!そして力強く地面を跳ね蹴り、大きく拳を上げて上昇!その拳はまるで天を穿つ大きな剣のようニャ!」
一閃!!!!
ズオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
ティアマトを消し飛ばした爆風は、なおも勢いを緩めず空へと進んでいく。
「ら……落下してくるティアマトを撃墜。あ、跡形もなく消し飛んだニャ……!なんという破壊力……」
ネコ子が呆然としながら実況を続ける。
俺の振り上げた拳の軌跡に沿って、眼下の雲海をまっぷたつに割れている。まるでモーゼが海を割ったかの様な光景だ。
「げ……撃破ニャーーー!ティアマト倒れるーーー!」
「や……やった……!」
倒した。ティアマトを倒したんだ!ガッツポーズの1つでも取りたいところだが、すべての力を使い果たし、むしろ腰が砕け、片膝をつく。
「イセキン君、今のお気持ちを視聴者に向かってどうぞニャ!」
ネコ子がボードを俺に向ける。
「あ、ああ……なんとか、倒せて嬉しいです」ハアハア……
「最後に放ったあの技は?」
「ああ、スキルを有効使えば相手を動かせると思ったんだ。」ゼエゼエ……
「動かせる?とは具体的にどういうことニャ?」
「手から放った波動は、ティアマトをジャンプさせる為に放ったいわば囮のスキル。ティアマトは狙い通りジャンプして来た。だからおれは即座に反応できて撃墜することが出来たって訳だ。」ハアハア……
「なるほど、そうなんニャ。意外とイセキン君は狡猾だニャ。」
「いや、それもさっき思いついたんだがな、パレシアに投げ飛ばされた時、空中ではまったく身動きが取れなかったから、今度はそれを利用したまでだよ。」ゼエゼエ……
「いや〜それにしても素晴らしい勝利でした。最後の技に名前はあるんでしょうか?」
「名前?いや……んーネコ子さんが言ってたように、天を穿つ拳ってことで『天穿拳』ってのはどうかな……っていうか、ちょっと!休ませてくれよ!」
「えー!?いいじゃニャいか!減るもんじゃなし!」
いやいや、こちとら体力と魔力が減っとるわ!
「2人とも、戻ろう……クエストは達成だ!」
半裸状態のツァラの言葉。俺たちは下山の途につく。 予想外の強敵ティアマトとの死闘。俺を含め、パーティの気力は、もはや限界に達している。
帰り道、 雲海の割れ目から小さくヒュードルの街が見えた。街は朝焼けに照らされて、やけに美しく感じられた。
【次回予告】
ティアマトを撃破し、下山するイセキン一行。ランチの用意をするときに魔王パレシアが現れまたまたいちゃつくことになる。
次回、第35話:俺の鍋を食え!魔王!




