32話 何でだよ!配信魔法初心者ティアマト、ランキングトップの視聴者数120万!
—[作者コメ]
すいません。前回間違えて1話先の話数を投稿してしまったので、見る人にとっては同じものが投稿されています。なので既視感があるひとは是非31話を読んでください。
【前回まであらすじ】
魔王パレシアはティアマトを召喚する。主人公イセキン一行は、ありったけの補助魔法を唱える!
「それじゃあボクから、バフをかけていくニャ!」
そう言うと、次々と詠唱しバフをかけていく。
10秒毎にHP1割が自動回復 《リピートキュア》
防御力無視の攻撃付与 《ペネトレーション》
物理攻撃の倍化 《ダブルアタック》
続いて、ツァラが補助魔法を唱える。
防御力アップ《プロテクト》
攻撃力アップ《アドパワー》
俊敏性アップ《クイック》
クリティカル率アップ《アップクリティカルレート》
「よし!」
空中にいるティアマトを見上げる、すると俺たちを見下した目で蔑んでいるのが見えた。
「ふわわ〜、お、もう準備はいいのか?あくびがでたぞー。よかろう。では……死ぬがよいー」
「ごちゃごちゃしゃべる蛇女だな!まずは挨拶代わりに一発だ!」
「さぁ!ここでバトル開幕だぁ!イセキンが飛び出る、それに合わせてティアマトも急降下、空中で激突だ!」
ドン!
激しい攻撃の一撃が大地を震わせる。
「ははは、イセキン!良い攻撃なのだ」
そう言うと、ティアマトは地上に降りバックステップ距離を取る。次に魔法を詠唱し始めた。何だ?何を唱えている?
「世よ、我に注目の視線を向けよ。視線は力となり我のもとへ。《ライブ》」
「ニャ……ニャんと!《ライブ》を唱えたのニャ!しかし……!アナチューブで、急増の《ライブ》を開始したところで、いきなり視聴者数が上がるわけではニャいです!ティアマトのチャンネルなんか今まで見たことが無いニャ。《ライブ》の世界はそんなに甘くニャいんだよーだ!」
「そうか。では我の《ライブ》の効果、如何ほどのものか身をもって知るがよいー」
そういうとティアマトは後ろを向く。
「ニャっと!おもむろに後ろを向いたティアマト!そしてしっぽを振りかざす!丸太のように太い尾がイセキン襲うニャ!」
「うおおおお!アブねえ!」
「寸でのところでガードが間に合うイセキン君!」
「う!ごは!!!!」
お……おかしい、この攻撃力!!!
あれだけバフを掛けてもらって、このダメージ。
「ネコ子!イセキンの様子がおかしいぞ!どういうことだ?これは……《ライブ》の効果が絶大だということではないのか?」
「あれ?おかしいな?ニャんでだ?」
慌ててボードからアナチューブを確認するネコ子とツァラ。
「あーーーーーー!!!」
「どうしたネコ子!?」
「やられたよ、アナチューブのホーム画面で特集されているニャ!」
「その通り。ホーム画面はいかなる視聴者も必ず通る、究極の視聴枠なのだー。我の《ライブ》は貴様らのような地道な努力も必要無いということだー。ほらほら、視聴者数を見てみろ、120万ビュー。しかも今現在の《ライブ》視聴者数、NO.1だー。」
「はあああああああ!?いきなりトップかよ!」
叫んでも仕方がないが……なんかずるくね?
「さて、物理攻撃を味わってもらったところで、我が魔力も見てみるかー?……我、命ずるのは絶対の静止。事象の地平を超えた力は、舞い踊る火の粉すら凍てつき無へと帰す。《アブソリュートゼロ》」
唱えるが早いか、一瞬で冷気が俺を襲う。
「うぐううおおおおお体が!か……固まる!空気が薄く……」
「くー!ここでティアマトが繰り出したのは、水属性魔法の極大冷却魔法、《アブソリュートゼロ》ニャー!それは、絶対零度と呼ばれる温度にまで対象物を冷やし凍らせる!その冷気は周りの空気すら凍りつくニャ!空気は冷え、凍る水蒸気は雪のように積もる。結果、真空の空間が生まれるというニャ……!」
「か……体が重い!!!まるで鉛を背負っているような、いやそれ以上の……!!!ぐああああ!!」
「ニャあああっと、イセキン君、膝をつく!何だって体が重くなるのか?ツァラちゃん!火属性魔法の《ウォーム》を!」
「分かった!火の精霊よ、凍てつく吹雪をも跳ね除ける恒温を与えよ!《ウォーム》」
「ぐおおおあああああ!」
「ああ、だ……だめだ!効果がないようだニャ!」
「く……どうして!?」
ティアマトが口を開く。
「ふ〜ん、惜しいなー。《ウォーム》ではイセキンの体は温まらんのだー。
確かに他の水属性魔法であればそれである程度は軽減できるのだー。しかし《アブソリュートゼロ》の前ではそれは意味をなさないのだー。
多くの術者は、《アブソリュートゼロ》を勘違いしているのだー。冷気を操り、極端に温度を下げる魔法であるとな。だが実体は違うのだー」
「何?」
「ふ、赤髪の聖騎士、ツァラよ。貴様も火属性であれば、温度というものが何であるか、知っておくのだー。すべての物体は原子のレベルで動き回っているのだー。それが静止するとき、絶対零度が完成するのだー。事象の地平線を超えた力があればそれも可能ということなのだー」
この世界の文明レベル……つまり中世ヨーロッパ程度の文明レベルでは、ティアマトが言っていることは理解できないかもしれないが、俺は身をもって理解出来る!これは温度を操る技じゃない!
【次回予告】
圧倒的魔力を見せつけるティアマト。イセキンは渾身力をため勝負をかける。ツァラは力が溜まり切るまで、身を呈して時間を稼ぐ!しかし次の瞬間、ツァラの鎧は砕け半裸状態に!
次回、第33話:コメント熱狂!「やっぱりエロの力は偉大だニャ!」




