31話 エチエチな蛇幼女ティアマト
【前回までのあらすじ】
聖騎士ツァラと、魔王パレシアのスカートをめくるってパンツを確認する・しないの押し問答。その様子をいちゃつきと捉えたパレシアは嫉妬。雑にエクスカリバーを抜く。
「うおおおおおおおおおおおお!」
パレシアが魔力をその剣に注入する。
「うニャーーーあ!皆さんご覧ください!剣が、剣が……見たこともなく、神々しく輝いています!」
「パパパパパパ、パレシア様!それ以上しますと!」
バン!
幾筋もの光線を放ち、激しい破裂音とともに、剣は粉と砕ける。
あー。
ずいぶんと雑に壊したなー。パレシア。
「あ……あああ、エクスカリバーが!」
「ふん、赤髪の女よ、これが聖剣であるとでも?貴様の目は節穴のようだな。これは偽物だ。そんなこともわからぬとは」
「なん……だと?」
「ついでに教えてやろう、この剣こそがこの山の魔法無効ギミックの根源であると」
目を白黒させるツァラ。眼の前の事実が受け入れられないようだ。
「ペリオリ、メーロン。帰るぞ、興が冷めた」
そう言うと、パレシアは転移の呪文の詠唱を始める。
「パレシア様!お待ちください。我々も共に帰りますぞ!」
ペリオリとメーロンも転移魔法の魔法陣に合わさる。
「そうだ。1つ、イセキンらに土産を置いていくとしよう。せいぜい楽しむが良い。さらばイセキンよ。また会おう、次があればの話だが。」
「それでは民よ。今回の《ライブ》はココまでだ。『いいね!』ボタンを押すのを忘れるでないぞ!ご視聴ありがとうございました!ではさらばじゃー!」
じじいは《ライブ》 を強引に締めパレシア一行は転移魔法で去っていった。
騒がしい戦いから一転、静寂。
「なんとか魔王は帰ったようだな。とにかくみんなが無事に生きていてよかった!」
「ふ〜〜。ニャ、ニャんとか魔王を退けることができたみたいだね!にしてもエクスカリバーが偽物だったとは……。今回もガセ情報だったのニャ」
「いや、しかし魔王の去り際の言葉が気にならないか?土産とは?」
嫌な予感がしてならない。
パレシアは仮にも魔王、とんでもない悪巧みをしていてもおかしくはない。
「イセキン!上だ!上を見ろ」
ツァラが指差す方向を見る。
「ニャああああ!あれはニャんだ!?晴天の山頂に突如現れた大きな漆黒の球。その大きさは周囲のエネルギーを吸い取っているのか、どんどんと大きくニャっていきます!!」
ネコ子が叫んだ漆黒の球は、朝焼けの空に、ポッカリと開ける底なしの穴のように黒いものだった。
大きさは次第に増し黒い稲妻を帯び始める。
「おや?中からニャにか出てきましたよ?人のかたちをしているようですが……」
空に浮かぶ漆黒の球から、人の形をした影が、朝日に照らされて浮かび上がる。
「その人の影は、よ……幼女!?幼な顔から長く伸びるストレートの髪は、腰にまで達していて、綺麗な瑠璃色。透き通るような白い肌は、まるで我々に見せつけるかのように、全身の刻印を強調させるニャ。
一番の特徴は大きく太い尾でしょう!背後から伸びる尻尾は、まるで竜を思わせるように鱗に覆われているニャ。使役するのはその傍らに佇む11匹の蛇。
そして司る力は水。彼女と蛇の周りを守るかのように水が宙を舞い、渦を巻くニャ。その水は自らが光を放ちたまらなく美しい!」
ネコ子が実況に乗せて容姿を説明するが、少々周りくどい。
要は、『妙に露出度が高い、エチエチの蛇幼女だ』
「ったく、魔王様も興が過ぎるよな。我を山頂へ召喚するとはー」
あー……嫌な予感しかしない。
「んー?あの娘か、魔王様を怒らせたのは……。えーゴホン。我は、この地に蹂躙する神々の母。また子らを愛するものー。しかして愛ゆえに混沌を生み出した罪深きものー。創造と愛、かつ混沌の概念体。人は我をティアマトと呼ぶのだー!」
はあ?神の母?幼女なのに?とんでもねえ設定だな……
「で?そのティアマトが何のようだ?」
「ふむぅ。お前がイセキンか、いや貴様には用はない。魔王様は赤髪の聖騎士、ツァラを滅せよと我に命じられたのだー」
「何だと!?なぜ私が?」
ティアマトに向かって叫ぶツァラ。
こりゃ完全にパレシアの嫉妬じゃないか……
「むーー。魔王様の御心を我が感知する必要なし。抵抗するならば全員滅するまでー」
「おう、やれるもんならやってみろよ!ツァラ、ネコ子さん!魔王が剣を壊してくれたおかげで、配信魔法を始め、あらゆる魔法の効果が乗るようになっているはずだ!ありったけの補助魔法を掛けてくれ!」
「りょーかいニャ!これでボクもようやく役に立ちそうだよ!」
とてつもない相手が飛び出したことに、イセキンTVの視聴者は興奮している。
そのためか、視聴者数は90万ビュー。これだけの視聴者なら例え神だろうとイケるかもしれない!
【次回予告】
準備を整え、ティアマトとの勝負を挑む!イセキン一行は配信魔法 《ライブ》を唱えるも、ティアマトも 《ライブ》と唱え始めた。
次回、第32話:何でだよ!配信魔法初心者ティアマト、ランキングトップの視聴者数120万!




