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29話 今のは極大爆裂魔法ではない『ファイア』だ

【前回までのあらすじ】

ついに見つけたエクスカリバー。魔王パレシアは「抜け」と命じるが、主人公イセキンは拒否をする。なぜならエクスカリバーを抜くと死ぬ呪いがかかっているからだ。しかし魔王は諭す「呪いは例え術者がその場に居なくても効力を発揮するものだ。一方、祝福は術者が見届けなければ効力を発揮しない。」


 むむ……たしかに。

 誰も居ない自分だけの部屋で一人「おめでとう」と言うことはないな。


「聞いたか民よ!パレシア様の博学なる知識。惜しげもなく我々に与えてくださる魔王様の慈悲。しかと受け止めようぞ」

 じじいの解説が視聴者を伸ばす。

 魔王への魔族の支持は絶大なものだ。その下支えとなっているのが実況だ。パレシアの些細な言葉でも、じじいの実況に乗せられればそれば金言に錬成される。魔王が言葉を発するたびに視聴者は実況に煽られつづけ、視聴者は伸び続ける。


「貴様に与えたのは紛れもなく余の祝福である。イセキンよ。さあ、命の花を散らして見せよ!!!」

「舐めやがって!!!」

 俺はとっさに剣を抜こうとしたが、剣はバキバキに壊れていたのだった。

 代わりに拳を強く握る。


 すると隻腕の男メーロンが剣を抜く。

「小僧!魔王様に歯向かうというのか?まずはこのメーロンが相手になろう!来い!」

「メーロン、退け。イセキンは余が相手をする」


 あっぶねー!メーロンは馴れ合いが通用しない強キャラ!

 本気で俺を殺しに来るはずだからな!ナイス抑止、パレシア!


「ときにイセキンよ。武器もなく丸腰で余と立ち会うか?」

 む……そうだ。流石に剣がなければ攻撃はできないかも……

 いや、俺に武術の心得はないが、それは剣でも同じことだ。

 全ステータスカンスト状態の俺なら、ドラゴン戦と同じようになんとかなるだろう!

 よし、頃合いをみて飛びかかるか。


『最初はガンとぶつかって後は流れで』だ!


「剣だろうが、拳だろうが、関係ねえ!行くぞ、魔王ぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!」

「さあ、ここで!イセキン君と魔王、両者同時に前に出る!戦いの始まりニャー!」

 俺とパレシアが激突する!

 瞬時に取り出した、魔王らしい大きな杖。パレシアの杖と俺の拳が交錯し、鋭い音が響きわたる。


 ガキン!ガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキン!


 お、イケるぞ!まるで俺の拳は鉄甲でもはめているかのように、うっすらとオーラを纏いパレシアを激しく攻撃する。

 しかし俺の激しい乱打を、いともたやすくパレシアは凌ぐ。


「ふははは。イセキン!貴様の力はそんなものか」

「《ライブ》の付加効果(バフ)が無い中、善戦しているイセキン君!魔王と激しく拳を交えているニャー!ボクの目では追いない激しい動き!しっかし、イセキン君って剣術だけじゃなくて武術もピカイチなんニャね!」


「パレシア様はその魔力の高さ故、接近戦はあまり好まれないのじゃ!しかしそれでも敢えて、イセキンと接近戦で戦われ、かつ圧倒するとは!人間どもよ、拳が杖に屈する瞬間を見よ、そして絶望を味わうが良い!さあ、この男を葬り、魔族の時代を謳歌しようではないか我が民よ!」


「ぐあ!」

 俺の体を空中に舞う。


「ニャーっと!ここでイセキン君、魔王の杖攻撃を防御している間に、投げられ空中へふっとばされるー!固め投げニャー!」

「これは基本!戦いの基本じゃぞイセキン!防御を固めダメージが通りづらい相手には、投げ飛ばすのが定石である!防御は打撃だけではなく、投げにも気を配るのだな!」

くー!防御には投げが有効ってか!格ゲーかよ!


「ボロ雑巾のように空に放り出されては攻撃を避けることは出来まい。余からの贈り物だ受けてみよ」

「ここで魔王が、空中のイセキン君に向かって詠唱!魔法攻撃が来るニャー!」


 放たれる灼熱の炎!

 パレシアは、カツンと杖を付くがそれ以上の派手なモーションはしなかった。

 この威力の魔法ですら、いともたやすく出せるというのか!


「くそ!」

 全力で防御を固める。だがその上から体験したこともない熱波が俺を襲う。

 紅蓮の炎は鎧を燃やし、大地を焦がす。

 熱で膨張した空気は、まるで巨人が繰り出す一撃のように全身を叩きつけた!

「ぐああああああああああああああああああ!ごふぅ!」

「イセキン!……くっそー!魔王!!!!」

「あああイセキン君!まともに魔王の攻撃を食らってしまったニャ!ううう熱波がここまで届く!ニャんという魔力!この魔法は……《プロミネンス・エクスプロージョン》火属性の極大魔法!この灼熱の前にはニャにも残らない……!死……死んだ?イセキン君!?」


「ふむ。ネコよ。貴様は良い実況をするな。敵ながら褒めて使わす。しかし1つ間違いがあるので、訂正せよ。今のは《プロミネンス・エクスプロージョン》ではない《ファイア》だ」

「ふぁー!?《ファイア》?これが!?魔法学校で誰もが習う炎属性の初級技である、あの《ファイア》だって!?こ、これは信じニャれません!とんでもない魔力だからこそ為せる技ニャのでしょうか!?」


【次回予告】

弩級の攻撃を受けたイセキン。聖騎士ツァラが駆け寄り心配してくれる……と思いきや、「早く魔王のスカートをめくれ」との催促。それをみた魔王パレシアは、イセキンとツァラがいちゃついているように勘違い!

次回、第30話:魔王の嫉妬


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