27話 魔王パレシア、バスローブ姿で登場!「いいよどこを見られても」
【前回までのあらすじ】
主人公イセキンが放った奥の手『空斬り』それは消滅属性の剣技だった。なんとかベヒーモスを撃破したものの、ただですらぐでんぐでんだった剣はバッキバキに壊れてしまった。
「これじゃあ、敵と戦えそうにないぞ……確かに困ったな。」
すると突如、ぞわっと辺りが暗くなる。
「あ……これは、亜空間!?」
もう慣れた、パレシアの登場はいつも唐突だ。
亜空間は都合よく2人だけの空間と時間をつくることが出来る魔王の魔法だ。
「だーれだ」
パレシアの冷たい手で眼の前が塞がれる。
「ちょ『だーれだ』じゃねえよ!パレシア」
ぐいっと手をどけて、後ろを振り向く。
そこにはいつもどおりに可愛いパレシアが現れた。
が、髪は濡れており、服装はバスローブ。
なんつー格好してんだ!
「んーーーーーーッ!!!」
目線をローブに下げた途端、ちゅー。
勢いが良すぎてカツンちょっとだけ歯が触れたかも。
ちゅーーーーーーーーーーっと、長めに抱きつかれて……
胸が……パレシアの胸がバスローブ1枚挟んでダイレクトに押し付けられる!
ああ、何という肉圧。
風呂上がりか。石鹸のいい匂いが辺りに漂う。
「ぷは!なげーよ!!」
と、パレシアとのキスを中断させる。
見ると彼女はご立腹の様子。
「も~~~!タカオ!遅いーー!!」
ぷーっと頬をふくらませる。
「どうしたんだよ!何を怒ってるんだ?」
「私、とぉーっくに山頂に着いて、ずーっと待ってたのに全然タカオが来ないからさ。待ちくたびれちゃったの!だからさっきまでお風呂に入ってたの!」
「いやだからってそんな格好で来る必要無いだろ?髪を乾かして!服装もちゃんとしなって」
「えー面倒くさいなあ。嫌なの?この格好」
馬鹿な、半裸の女が嫌いな男などいるものか。しかも相手はパーフェクトボディときたもんだ。
「いや、嫌じゃないけど、目のやり場に困るっていうか……」
バスローブはいつもの魔王ローブよりもずーっと深く開けてて、胸の谷間から、ヘソまでみえる。
「いいよ私タカオにならどこ見られても」
エッッッッッ……いやいかん!
そんな誘うような目をするんじゃない。
「じゃなくて!この山のギミックとモンスターがキツくてなかなか進めないんだよ。ヒポグリフは貫通技つかってくるわ、ベヒーモスは全属性無効化だし」
「そうりゃそうよ。私がそういうギミックが発動するように山頂に剣を仕込んだんだから!ブイ!」
イキり顔で俺にブイサインを見せてくる。
「は?『ブイ!』じゃねえよ!何やってんだよお前!それならギミック外せよ!」
「えー!?ダメだよそんなんじゃ!あれくらいちゃちゃっと倒せるようになってくれなきゃ!私とタカオが何度も戦えるような実力と人気番組になってくれないと、将来自然にバトルを始めて、何度も何度も戦えないでしょ?良いライバル関係でなきゃ」
「ちゃちゃっとってなぁ……」
視聴者数を増やすことを考えてくれるのはありがたいが、やり方がハチャメチャすぎて呆れるわ……
「ってかお前、それ魔王なのに非情なこと言っていいのか?魔王の部下的な存在なんじゃないの?モンスターって」
「うんそうだけど。魔界の生き物は基本的に『死』という概念はないの。やられると魔界深部でまた復活するからね。姿も記憶もそのままだし」
うーむ。FPSでいうとこのリスポーンみたいなもんか?てことは?
「え!?じゃあ倒しても倒しても、無限に復活するってこと?」
「そうね。低級の魔物ほど早く復活するわ」
「どうりで〜」
「?……なにが?」
「いや……」
どうりでゲームのRPGでは雑魚敵を全滅出来ないはずだわな、と。
ここは異世界であって、ゲームの世界ではない現実ではあるが、パレシアの説明を聞いてなんだが長年の謎が解けた気がする。
「いやぁ、なんでもないよ」
「でも魔王だけは特殊かな。私は復活ではなく先代魔王の生まれ変わり……確かに力は継承しているようだけど先代の記憶まではないわ」
へー、魔王はリスポーンではなく転生なんだな。
「そうだ!ちょっと早いけど、山頂は私達の初対戦の場にしない?はじめにガン!とぶつかって後は流れで。その後、私が剣を偽物だと見破って、剣を破壊。そして去っていくわ。これで視聴者数がまたあがるんじゃない?」
「うん。それは良いかもしれない。対決から去るまで自然な流れだ」
そう言いながらツァラから課せられたミッションを思い出す。「魔王のパンツを確認すること」本当にスカートをめくってパンツを見せなきゃなんないんだろうか……
いやそれよりも厄介なのはその後のパレシアの反応だ。怒りで世界を滅ぼしちゃうんじゃないだろうか……
しかし、今の状態が亜空間で良かった。パレシアは今パンツ絶対履いてないからな。仮に今バスローブをめくったら、絶対放送事故になるぞ……
「よっし!決まり!じゃあ山頂で待ってるからね!」
片手でバイバイと振りながら辺りの闇が晴れる。
眼の前にはツァラとネコ子の後ろ姿。
やはりパレシアがここにきたことに気づいていない。
ともあれ、このまま三人で山頂に向かうことにしよう。
しかし……うーん。気が重い。
【次回予告】
山道での仮眠を取ることになったイセキン一行。しかし温度はグングン下がる。「寒い寒い、早く魔法で温めてくれ!」
次回、第28話:山頂到着!ついにみつけた聖剣エクスカリバー
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[作者コメ]あと……すみません。一週間ほど海外出張行くので更新が不規則になります。日本時間のへんな時間帯で更新することもあるかと思います。




