12話 強すぎない!?聖剣エクスカリバーは攻撃力5000兆倍の効果!←まぁでもこれは伏線です
【前回までのあらすじ】
一人旅に慣れているのだろうか、キャンプで火起こしから料理までテキパキとこなす聖騎士ツァラ。主人公イセキンは「もしツァラと結婚したら幸せなんだろうな」と図らずも口説いてしまう。話題を変えようとツァラはイセキンに問う。「魔王が言うようにお前は勇者なのか?」と。
「いや、俺が勇者かどうかわからないんだ。勇者の定義がこの世界で明確であれば話は早いんだが」
「定義?」
「そう、例えば何かの職業なのか……王様から認められたり。あるいは特殊な能力を持っていたり」
ゲームだと勇者ってのは、手や額に光る紋章が刻まれるなど決めつけられて生まれてくる運命タイプ。あるいは魔王を倒した後に王様から認定されるイベントタイプ。なんならただの職業に過ぎない場合もある。
さて、この世界の場合は……?
ツァラは迷いなく答える。
「黙示録には『勇者は聖剣エクスカリバーを用いて魔王を倒す』という節がある。そしてエクスカリバーは勇者しか抜けない」
――イベントタイプか。
「それ魔王も言ってたな」
エクスカリバー。元の世界にも伝わる伝説の聖剣。何故この異世界にアーサー王伝説が知られているかは分からない。
「その黙示録ってのはなんだ?」
「え?黙示録も知らないのか、よほど変わったイセキンは変わった国の出なのだな。何、大したことはない。勇者が魔王を倒すまでのおとぎ話だよ。魔王が本当に現れるまではな」
ツァラ目は鋭くなる。その瞳には緩やかに燃える焚き火が映り込んだ。
「だが、魔王パレシアが現れてからここ数年。その黙示録通りに世界が混沌となっているんだ。
もはやおとぎ話として片付ることができなくなってきた。そこで国をあげて黙示録あるエクスカリバーを探そうということになった。
誰が勇者なのか抜いてみなければわからないからな、聖剣を抜けそうな精鋭のパーティを作りだし、旅にでていたのだ。私はその精鋭メンバーの1人だった。
でもそこに突然デタラメな強さのイセキンが現れた。イセキンが勇者なら私がエクスカリバーを探す大きな理由はなくなる」
……つまりこの世界では勇者である条件はエクスカリバーを抜くこと以外にないってことだな。
「ツァラ、仮に剣が抜けたとして、何故それで勇者だと言えるんだ?世界中で俺だけしか抜けないのは本当だろうか?しかもだ、俺は魔王からエクスカリバーを抜くと死ぬ呪いを受けてしまった……」
「でも勇者がいなければ誰が魔王を倒すんだ!?魔王はこのアナムネを魔族で支配しようとしている。人間は魔族と戦い続け、すでにボロボロなんだ。この戦争を早く終わらせなければならない!魔王を倒すためならわたしは何でもするぞ!」
感情が高ぶるツァラ。
「うーん戦争か……それは普通に魔王がダメだな」
戦争はもちろん体験したことはないが、そりゃないに越したことはない。
「私はエクスカリバーを探す旅をしているが、その根本は魔王を倒すことだ。イセキンが勇者で有ろうと無かろうと、魔王を倒してくれればそれでいい。
でもそのためにはやっぱりエクスカリバーが必要だ。エクスカリバーがなければ魔王は倒せない」
「そんなにエクスカリバーは強いのか?」
「そうだ。この世界の攻撃力は《ライブ》のほかに武器によっても攻撃力が増す。当たり前の話だが、中でもエクスカリバーは別格で、攻撃力を5000兆倍にする効果があると噂がある。真偽の程はわからんがな。」
「は?5000兆!?」
なんだよこの世界。数値がインフレしまくってるな。
そりゃ魔王も狙うし、みんな欲しいわ。
「さてと、そろそろ出発するとしよう。私のパーティも3人が死んだ。必要な分だけをこのキャンプ地から取ってあとはここに置いていくか」
寂しそうにツァラは言う。
荷物を選定後半分以上は俺が持つ。女子には優しくしないとな。
俺がツァラについていく理由はない。
だが一緒に行かない理由もまたない。ひとまずはエクスカリバーを探す旅に同行することにする。
ここから約半日かけヒョードルに向かいただ歩く。
【次回予告】
次の目的地、ヒョードルの街まで移動する主人公イセキンと聖騎士ツァラ。しかし辺りは突然闇に包まれる。そこに現れたのはエッチな魔王パレシア。「魔王だ!逃げろ!」だがツァラにその声は届かない。そこから始まったのは残虐な出来事……ではなく、魔王と2人の甘い時間だった。
次回、第13話::エッチな魔王パレシアといちゃいちゃする話




