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11話 ツァラっていいお嫁さんになりそうだよな

【前回までのあらすじ】

魔王パレシアから撤退し、キャンプ地まで戻って来た主人公イセキンと聖騎士ツァラ。善戦むなしくドラゴンに全滅しそうだったことを打ち明ける。旅を続けるにあたって腹ごしらえをしようとの提案から火をおこす。火を起こせない現代っ子のイセキンに呆れつつも理解を示し、ファイヤースターターを取り出した。

「この板状のストライカーをブレードにこすりつけると火花が飛ぶ。ファイヤースターターの中でもテュノス社製のものは特に良い。素材が可燃性の不思議な土で出来ていて、火の粉の力強さが他のメーカーと全然違う」

 そう言いながら、板と棒をこすり合わせて、火の粉を飛ばしてみせる。

 

 ボッ!

「こんな感じにな」

 

 俺が知っている火打ち石……と言っても時代劇でしか見たことないが、それとは比べ物にならないほど激しく火の粉が飛び散る。

 ツンとする火が燃えたような匂いが辺りに漂う。

 

「すごいな、てっきり火打ち石とか、木と木を擦り合わせて摩擦熱で火を起こすのかと思った」

「ははは、原始人じゃないんだから、そんなことはしないよ」

 

 ツァラは辺りをキョロキョロ見回し、何かを拾い始めた。

 

「焚き火は、火種が重要だ。こういったふわふわした植物や、カリカリに乾燥した木をナイフで繊維状に切って、火口(ほくち)をつくる。そしてスターターから火をつける」

 そういうと、ボッボッボッ!と実際にスターターを3こすり、激しく火花を飛び散らせた。

 するとその火花は、白い煙となり、その上からさらに1こすり。

 乾燥した草に、弱いながらも火が見えた。

 

「おお!すごい」

 眼の前でなにもないところから火が着いたところは初めて見たかもしれない。

 

火口(ほくち)に火がついたら後は焚き付けだ。乾燥した木をちょっと太めにナイフでスライスするといい。木の皮なんかは焚き付けに最適だ。ただしカビが着いた木は燃えないから注意だぞ。なのでナイフで削った時にカビ臭いか確認しながらスライスするといい。また細めの枝を折ってみてパキッと音がする枝は、乾いている証拠。これも焚き付けに最適だ」

 説明をしながらテキパキと焚き付けを行い火はあっという間に大きくなった。

 

「このように、ファイヤースターターさえあれば、荷物になるようなファイヤートーチは必要ない。イセキンも1つ持っておいたほうが良いな」

「すごいな。それどこで買えるんだ?」

「そうだな。ちょっと大きめの街ならどこでも売っていると思うぞ、それこそヒュードルの街には確実にあるだろう」

 なるほど良いことを聞いた。早速ファイヤースターター買いたいぞ!

 妙に科学的な原理のアイテムなので元の世界でも有ってもおかしくないアイテムだな。

 

「炎を操る魔法使いが居れば必要ないかもしれないがな。それでも小さいし荷物にならない。私はどんなパーティであっても、旅にでるときは必ず持っていっている」

 そうだな。かっこいいなあ。ファイヤースターター。

 

「晩飯ならいざしらず、昼飯は簡単に済ませたい。この坂の下に川がある。そこで水を汲んできて湯を沸かそう。私が持っている干し肉を焼いて適当な食材でスープを作ろう」

 

 そしてツァラと俺は……というか、主にツァラがここでもテキパキと作業をしてくれて昼食の準備が整った。よほど旅に慣れているんだろう。

 

「さあ、できたぞ」

 目の前には美味そうな干し肉を焼いたものと、きのこと山菜のスープが並ぶ。

 食器類はツァラが持っていた、金属製の皿やカップを借りる。ところどころ(へこ)んではいたが、綺麗に洗われていて清潔感があった。

 俺たちは焚き火を囲み、丸太を即席のベンチに見立て腰掛けてランチを取ることにした。

 

「何から何までありがとう。いただきます」

 そして干し肉をパクリ。

 

「え?んま!」

 干し肉とは思えないほど柔らかい。ひょっとしたら普通に食べる牛肉よりうまいかもしれない。

 でもおそらくこの肉は牛ではなくてなにかのモンスターの肉なのだろうか……

 今は考えないことにしよう。

 うまいもんはうまい。この生活に慣れなきゃな。


 ツァラが口を開く。

「干し肉は乾燥させてつくるから保存がきく。そのため、保存食としてしか考えられていないが、実は旨味がぎゅっと凝縮されていて生肉から料理するよりも味が濃い。

 私は十分グルメとして楽しめる食材だと思っている。今食べている肉のように、柔らかく旨味を味わいたい場合はサシが入った肉を、逆に噛みごたえがほしいときは赤身部分を干し肉にすると良い。

 ま、何度か自分でも作ってみたことはあるが、今食べているタフィー社製の干し肉ほど旨くはならなかった。やはり乾燥させる前の下処理と味付けで大きく美味しさが変わるのだろう。タフィーの干し肉は世界一だと思う」

 

「ツァラっていいお嫁さんになりそうだよな」

「え?」

「しかも料理もうまいし、なんか、生活に対する知識も豊富だし。もしツァラと結婚したら幸せなんだろうな〜って」

 と言いながら目線をツァラに合わせると、彼女の顔が真っ赤になっていた。

 

「い、いや!別に口説てるわけじゃないからな!勘違いすんなよ」

「わわわ、わかってるよ!そそそそ、それより」

「それより?」

「魔王が言っていただろ、イセキンは勇者なのか?」

「その話か……」

 

 ズズズ……

 

 ツァラが作ってくれたスープを一口。これもうまい。

 塩以外の味付けはしていないがしっかりと素材の風味がある。

 俺はわざとスープを飲んで、喋るまでの間を作った。

 意味があるような、ないような。


【次回予告】

主人公イセキンが降り立った異世界の世界観が明らかになってくる!魔王が恐れる黙示録とは?この異世界における勇者の定義とは?そして聖剣エクスカリバーの役割とは?

次回、第12話:強すぎない!?聖剣エクスカリバーは攻撃力5000兆倍の効果!←まぁでもこれは伏線です

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