1話 俺と魔王の謝罪会見
俺は今めずらしく正装をしている。普段よりはトーンを落として、黒を基調とした、人々に刺激を与えないように配慮をした姿だ。
「フゥーーーーーーーーーーーー」
と大きく深呼吸をひとつ。目の前には重く大きな扉。覚悟を決めてドアを開け会場に入る。瞬間、たくさんのマスコミ関係者たちの視線、中継用のマイクやカメラが俺に向けられる。
ぁあ……まさか、まさかまさかまさか……!!!
俺がこのような謝罪会見に臨む日がくるとは思わなかった。こんなはずじゃなかっただろ!俺の人生は!
……いや。取り乱すな。こうなったのは仕方がないことだ。元はといえば俺の不注意が招いたことだ。
状況を受け入れすべてを、正直に思いを話そう!
眼前のマスコミ関係者に人間は居ない、角が生えた魔族や耳の長いエルフ、獣の姿をした獣人、人の言葉がわかるか理解しがたい土でできたでっかい怪物などが構えている。この状況……むしろ夢ではないことを思い知る。
なぜなら、俺はある日この異世界に転生したという、「なろう」業界では、かなりベタな経験を経ているからに他ならない。魔物たちは紛れも無い現実として、まざまざと思い知らされる証拠なのだ。
この世界は、元の世界でいう『中世ヨーロッパ調RPGの世界』といえばわかりやすい。それにしてはマイクやカメラなどガジェット系のアイテムは多いのがこの世界の特徴だが、これらのアイテムは電気ではなく魔力で動いている。
さて、謝罪会見に臨むのは実は俺だけではない。隣には魔王も居る。攻撃力、魔力、知力、俊敏性、すべてのステータスにおいて申し分がない。しかもすごく可愛いし、この状況でいうのもなんだがかなりエッチな体つきをしている。頭脳明晰、才色兼備、容姿端麗、天資英邁、彼女を表現するには言葉が足りないぐらいだが、今日だけは謝罪用の正装となり露出箇所がまったくない。残念だ。
マスコミたちを目におき、スッと軽く整理呼吸。
俺は魔王の方を向き、魔王は俺の方を向く。目があってお互いに軽くうなずく。
「この度は、世界の皆様をお騒がせして大変申し訳ございませんでした!」
2人、深々と頭を下げる。
まるで練習でもしたかのように台詞から動作まで魔王とピッタリ息があった。
パシャパシャパシャ!とフラッシュやシャッター音が鳴りやまない。
――話は転生前に遡る。
【次回予告】
主人公の名前は、タカオ。30歳。趣味は暇つぶしにYouTubeLIVEで、ゲーム実況を見ること。
そんなタカオは出社中に、トラックに轢かれて神に出会う!
次回、第2話:転生テンプレ過ぎて、わざわざこの話数いる!?