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第十五話 計画

 一息。


「けれどさ、でも、それでも僕は社会の歯車として合ってはならない、と思っているんだよ」

「へえ。聞かせて貰おうか、そのご高説をさ」

「社会の歯車は、歯車として活動する。それはつまり、自由意志が存在しないと言うことさ。それは間違っているし、存在して欲しくないと思っている。そして、恐らくだけれど、君もそう思っているのだろう。だからこそ、それは存在の相違であり、それは存在の庇護であり、それは存在の確定でもある。社会の歯車として成り立つということは、そこに自己の価値観はないということになるんだよ」


 成る程ね、と頷く彼女。


「確かに、それは大いに間違っていない。理論が間違っているということに目を瞑れば」

「は?」

「機関は、私たちのようなはぐれ者を管理しているだけではなく、ある一つの目的を果たそうとしている。それは、きっと君にも理解できるだろうし、或いは協力して貰えるかもしれないことだ」

「世界征服でもしようとしてるのか?」


 まさか。スマイリング・ヒューマンは失笑した。


「世界をよりよい形に変えようとしているんだよ。私たち『都市伝説』の力を利用して」


 世界を、よりよい形に?


「曖昧な形だと思うだろう? 簡単に言えば、ノアの方舟に近いかな。大洪水が起きたが、ノアとその家族だけは何とか助かった。その助かった方法が方舟だという話。聞いたことはあるだろう? それを成し遂げようとしているんだよ、この現代で」

「……まさかとは思うが、君の言う『機関』はカルト宗教か何かか?」

「そう思われても仕方ないだろうね。けれど、違うと思うよ。何せ、機関には神を排除している。とどのつまり、誰も神を信じていない。けれど、神話については一定の信頼性を持っている。そして、科学的に神話を証明しようとしている。その結果が、ノアの方舟の再来だ。それにより、世界は洗い流され、機関のみが生き残る。しかし、それは機関も望んでいない、と言っていた気がするよ。何せ、機関にはそんな力を持ち合わせていないのだから」

「どんな力だ?」

「人間の種を残す力、とでも言えば良いかな」


 確かにそれは、どの会社でも出来なそうだけれど。


「しかし、私はそんなことどうだっていい。人を殺せれば、ね。それで全然構わないんだよ。機関が、計画に勘づいた人間を殺せと命令してくるから、それについては仕方なく殺すけれど、後は私の単なる趣味嗜好。ちなみに君の周りで死んだ人間は全員前者だね。何故だろうね? 何故君の周りで、その世界観をぶち壊そうとする人間ばかり蠢いているのだろうね?」

「そんなこと、僕に言われたって困る」

「そりゃ、そうか」


 どこからかナイフと砥石を取り出した彼女は、ナイフを磨き始めた。


「何を?」

「見て分からない? 得物をうまく取り扱い、管理することは私のような存在にとって重要なことよ。生きていくことよりも重要と言ってもいいでしょうね。まー、君には分からないことかもしれないけれど」

「分かりたくないね。出来れば、一生分かりたくない」

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