第十四話 解釈
「殺したのか」
「だって、殺すのが私の性分であり、私の趣味であり、私の仕事なのだからね。それくらいは仕方が無いと言わせて貰おうか」
「……そうかな。普通に考えて人を殺すことは間違っているという認識が正常だと思うけれど」
「三年前。君は私を見逃した。その時点で君も『こちら側』の人間じゃないか。そうだろう? 人間失敗」
……また、そう言ってくるか。
人間失敗ってはっきり言って人を馬鹿にしているよな。人を小馬鹿にしているというか、存在証明を否定しているというか、阿呆らしいというか。結局の所はそれを馬鹿にしているという認識を否定することで、僕が僕であることの存在証明となっているのだけれど。まあ、それは他人から見ただけの話。もしかしたら他人から見たら僕はただの人間ではなくて、変わり者の人間で、変わり者だからこそ僕が僕という存在を証明出来ているのかもしれないけれど。
いずれにせよ、それについては長々と語る必要は無いな。だって語る意味が無いし、語る必要性が感じられないし、義務でもない。だったら僕は僕であるという証明を、消し去る人間に対しては猜疑心を抱くほか無いのだけれど。でも実際、それをどうするかなんて一人一人違う考えなのだから別に構わないんじゃないの? って結論に至ってしまう人が殆どなのだろうけれど、僕は違う。僕はそうありたくない。僕はそうでありたくない。僕は、普通と違うのだと見せつけたい。……いいや、それは違うか? 話の視点がずれているような気がするけれど。
「話の視点がずれているというよりは、間違っていると言っても良いだろうよ、人間失敗。だからあんたは私にそう名付けられたんだよ。私のことを見ても、何も違和感を抱いていないだろう?」
違和感?
「ただの殺人鬼、としか思っていない点だよ。普通なら、殺人鬼に出会えば悲鳴を上げるかさっさと警察を呼ぶに決まってる。まー、そういう人間と出会ったらさっさと私は首を切っちまうがな。そのほうがシンプルに人を殺せる。血飛沫は上がるかもしれないが、私が捕まることは絶対に避けなくてはならないからね。でも、君は何をした? 答えてごらん」
「僕は、」
「目撃証言を、唯一の目撃証言を、揉み消しただろう?」
答えろ、と言ったのはお前だろうが。何故お前がさきに話を切り出すのか。
「思考能力が衰えているような気がしたから、或いは答えるのに時間がかかりそうな気がしたから、私はさきに答えた訳だけれど、何か問題でも? それとも、何か違う答えを考えついたなら発表して欲しいけれどね」
違う答えなんて思いついちゃいないさ。
君が言ったそれが、正解だ。
「じゃあ、どうして君はその証言を揉み消した? 怖かったから? ではねーだろうな。ただの人間が殺人鬼に襲われる恐怖を身にしみて味わったところで、それを否定するところでもない。ただ、普通なら恐れをなして国家権力に助けを求めるはずだよな? だって、一般人が殺人鬼に敵う術なんて見当たりゃあしないんだから」
「そりゃあそうだろうね。確かに僕は、普通なら警察や先生に言えば良いと思った。未だに小野さんは行方不明のままらしいし、けれども皆はすっかりと忘れてしまっている。彼女が居なくなっても、歯車は回り続けている。それを思い知らされたよ」




