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プロローグ


「夢はそう簡単には叶わない」

「人間の希望のあるうちに、一パーセントでもその希望のある夢が叶うとしたら、それは夢が叶ったと言えるのだけれど、けれども夢とはやはり叶えるためには努力を必須とするからではないかな」

「つまり希望は悉く達成不可能ということか」

「そうでなければつまらないだろ。……人間失敗」


 スマイリングヒューマンは告げる。

 これは僕と、微笑む人(スマイリング・ヒューマン)との一幕。

 言葉と言葉の一欠片。



 例えば僕が人間失敗とみんなに揶揄されていたとしても、世界が世界と認識していなかったとしても、僕という存在が全世界から否定されていたとしても、微笑む人の方が人間としては失敗していると言えるだろう。多分、僕は世界から見放されることはないけれど、微笑む人は世界から既に見放されている。それだけで僕と彼女の優位性が保たれている。

 都市伝説のような、あやかしのような、或いはそれ以上でもそれ以下でもなく、或いはただの人間の見間違いと言っても致し方ないような、そんな不確定要素の塊たる『微笑む人』は、僕のような普通の人間から見ればただの都市伝説の一説と言えることだった。

 でもそんなことは、ただの戯言だ。

 だからこそ僕は微笑む人と出会ったことについて不信感も抱かないし違和感も抱かないし後悔の念も抱かない。

 それが僕という存在であり、僕という存在の証明たりえるからだろう。

 そもそも、イレギュラーだったのだと思う。

 僕が普段通らない道を通っていて、偶然そこで微笑む人の目撃証言が多く寄せられていて、偶然微笑む人がそのルートを通っていただけに過ぎない。

 彼女もそうだった。

 微笑む人によって出会った彼女との出会いは、きっと僕の人生で忘れることのない出来事となるだろう。……それは言い過ぎかもしれないけれど。いずれにせよ、彼女との出会いは忘れることが出来ない。それだけは確かなことだ。

 逃げちゃいけない。

 逃げてはいけない。

 逃げることは許されない。



「そうさ。きっとこれは僕の運命だった。罪だった。罰だった。贖罪なんだ」

「贖うことを責任と思うのなら、それはただの言い訳だよ。人間特有の、つまらなさを持っているとは到底信じられないけれどね」



 どう言ったって構わない。

 どう言われようと構わない。

 でも彼女のことを悪く言うのは許せない。

 許さない。

 許そうとはしない。

 これは僕の運命で、これは僕の罪で、これは僕の贖罪で、これは僕が一生背負っていかなくてはならない事実だった。

 彼女を死なせてしまったこと、そのことについて。



「それは間違いではない。それは狂ったことではない。それは避けられたことではない。きっと彼女も死ぬことを受け入れていただろうよ。だからこそ……、」



 だから。

 微笑む人は名前の通り笑みを浮かべて、こう言った。



「だからこそ、私が殺したのだから」




 これは、贖罪の物語。

 これは、運命の物語。

 これは、あやかしの物語。

 そして、これは――少年と少女の物語。


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