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第三百四十二話 希望者殺到

俺としてはすぐにでもエイビーに赴いて状況を確かめたかったが、実際はなかなかそうはいかなかった。西キョウス地区の統監に就任したということで、色々な祝いの品が送られてくると同時に、いわゆる就職希望の申し込みが数多く寄せられたのだ。


この西キョウス地区統監という役職は言わば、俺のために作られたような役職であり、それまでは宰相が管理していた。ということは、これまでは兄シーズが主に管理をしていたということだ。


これまで王都で行っていた業務が、ここラッツ村で行われることになるのだ。御用商人をはじめとして、シーズに世話になった者、世話になろうとした者、世話になろうとして世話になれなかった者たちがこぞって俺に挨拶を寄こしてきたのだ。これが数日早かったら、俺はコンスタン将軍を迎えることはできなかっただろう。少なくとも、きれいな状態の屋敷で迎えることはできなかった。


続々と贈られてくる品物はどれも高価なものばかりだった。それらの送り主と贈ってきたものをパルテックがリストにまとめ上げていた。だが、彼女一人の力では到底賄いきれるものではなく、緊急処置として、避難村に住む人の手伝いを頼んだ。


色々な者がやって来ているだけあって、すぐにそうした事務仕事が得意だと言って手が上がった。どれも女性で、取り敢えずそうした贈り物の受付を避難村で行うこととした。


それと合わせて対応せねばならなかったのが、就職希望の者たちへの対応だった。大半は紹介状などの手紙が届いたが、中には直接面談を希望する者もいた。家でひきこもっていた時代に、テレビなどで就職活動の映像は見ていたし、面接などが大変難しいと言うことは知っていた。だが、転生先に世界で、まさか自分が面接官のようなことをするとは思ってもみなかった。


最初こそ、屋敷の応接間で話を聞いたが、次から次へとやって来る希望者に、さすがに参ってしまい、詳しいことはギルドを通して依頼を出すから、それまで待ってくれと言ってくるものを追い返した。


そうしたこともあり、村の宿屋や店は大繁盛となり、店主たちはかなりウハウハだったようだ。また、避難村でも毎日いわゆるフリーマーケットのようなものができて、そこでもある程度の利益が出ていたらしい。まあ、いいことだったと思うことにする。


次から次へと降ってくる仕事に、最初は何から手を付けてよいのかがわからなかったが、そこはヴァッシュが整理して優先順位を付けてくれた。そうした大小様々なことに対応していると、あっという間に二週間の時間が経ってしまった。ちなみに、この期間のクレイリーファラーズは上機嫌だった。割合にこの村に就職希望でやって来る男たちはイケメンが多く、それを毎日彼女は眺めては、何やら妄想にふけっていた。


「やっぱり、統監が住む屋敷を建てるべきじゃないかしら」


朝食を食べているとき、ヴァッシュが不意にそんなことを言い出した。それは統監に就任した当初に言われていたことで、俺もわかってはいたのだが、なかなかそれを実行に移すことができていなかった。だが、ここに至っては、あまり悠長なことを言っていられない状況になってきた。


とりあえず、ギルドに依頼を出すことにした。屋敷を設計し、それを建てる指示を出すことができる者を募った。そんな都合の良い人材がすぐに見つかるかと思いきや、すぐさま三人の男が手を挙げた。


面接をしてみたが、三人とも自信満々で可能だと言う。で、あれば三人で協力してやってくれたらどうかと打診してみたが、それは三人ともに首を振った。


「三人では仕事がやりにくうございます。ぜひ私にお任せください」


コリンと名乗る貴族の三男坊がそう言ってアピールしてくる。正直、こうしたガツガツした男は俺は苦手だ。というより、こうした男がよかったためしがない。他の男たちは、別にどちらでもよいと言う反応だ。


「では、私たちの希望を伝えるので、期日までに設計書を書いて来てくださるかしら」


ヴァッシュがそう言って三人に紙を渡す。そして、彼女は滔々と希望する建物を語り始めた。


話を聞き終わった三人は、三々五々に帰途に就いた。


「すごいなヴァッシュ。そんなことまで考えていたんだ……」


「何を言っているのよ。あれは、私が子供の頃から思い描いていた家よ。要は、それが本当に建てられるような図面を書いてくる人を雇えばいいの。新しい屋敷はそれから考えればいいのよ」


「はあ……。俺には絶対に出ない発想だ。ところで……ヴァッシュは図面が読めるのかい?」


「読めるわけないでしょ。まさか、あなたは図面が読めるとでも?」


「う……読めない。でも、きれいな図面が書ければいいんじゃないかな。あと、ハウオウル先生もいらっしゃるし……」


「ハウオウル先生に頼むより、避難村にいる人に声をかければいいじゃない」


「避難村? 何で?」


「あの村の家を建てたのは誰? 確か、図面を書いて建てたんじゃなかったの? その人たちに図面を見てもらえればいいんじゃないかしら?」


「……さすがはヴァッシュだ」


思わず彼女を抱きしめようとしたそのとき、外でごめんくださいと言う声が聞こえた。また、就職希望のものかと思いきや、やって来たのは、コンスタン将軍からの使者だった。


……一体、何だ!?

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これも偏に、読者の皆様のおかげでございます。厚く厚く御礼申し上げます!

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