表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/396

第二話   激怒

その女性は相変わらず美しい笑みを俺に向けている。一体どういうことなのか説明して欲しいが、動揺とコミュ力不足のために、言葉がなかなか出てこない。だが、彼女は俺がこうした状況になるのは織り込み済みであったかのように、やさしく諭すように話しかけてきた。


「わかります。驚いちゃいますよね、いきなり死んだなんて言われたら」


俺はコクコクと頷く。


「でも、これは事実なのです。ここは天界。多くの神々がおわします世界です。人は死ねばまず、魂はこちらの世界にやってきます。そして、神の審判を受け、その後、どの生き物に生まれ変わるのかが決まります」


……死後の世界って、マジであったんだな。生まれ変わる……いわゆる輪廻転生ってやつだ。あれも、本当のことだったんだな。


何だか狐につままれるような感覚になる。そんな俺の様子を見て、理解したと思ったのか、女性はゆっくりと右手を挙げる。すると、目の前に青く光る道が出来た。


「さあ、ご案内します。私の後に、付いてきてください」


俺はゆっくりと彼女の後を歩いて行く。



しばらく歩くと、俺と同じように死んだと思われる人々が、集まっているのが見えた。なぜ、死んだ人たちだと思ったのか。いわゆる年寄りばっかりだったからだ。30人くらいいただろうか、全員に、俺と同じように白いローブを着た女性たちが付いていた。中には暴れているジイさんもいたが、不思議なことに女性がその背中に触れると、途端に大人しくなっていた。


「それでは、参りましょうか」


俺をここに連れて来てくれた女性が、笑顔で話しかけてくる。俺は彼女に連れられて、白い道をさらに進んでいく。そして、しばらく歩くと目の前に、頭が禿げ上がり、口ひげを湛えた、いかにも神様ですと言いたげな老人が現れた。彼は俺を見るなり、ゆっくりと口を開いた。


「ああ……喋らんでよい。そなたのこれまでの行いは、すべてここに記されておるでな。ええと……」


老人はゆっくりと手に持っていた分厚い本を開いて、そこに目を落とした。パラパラとページをめくる音が聞こえてくる。そして、その動きをピタリと止め、じっと本の中身を確認していたが、突然彼はスッと顔を上げ、俺を睨みつけた。


「青海一馬、とはそなたか!」


なぜ、怒っているんだ? いや、確かに俺は大した人生を送っていない。両親にも散々迷惑と心配はかけた……そんなことを思っていると老人は、後ろを振り返り、大声で叫び出した。


「クレイリーファラーズを呼んで来い! すぐにだ! 青海一馬が現れた。 早く呼べ! すぐにだ!」


老人は再び向き直ると、厳しい表情を浮かべながら、俺を睨みつけた。


……一体、どうしたんだ? 何がどうなっているんだ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ