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Hidde land, High school  作者: 凪沙一人
3/6

静冥

 冴彩と亞門がたどり着いたのは公園前だった。ダウンバースト騒ぎで立ち入り禁止となっていた。

「御子神君…朝と気配が違うよ?何か、もっと禍々しいってのかな。大丈夫?」

 亞門は無言で気配の正体を探っていた。冴彩も祖父が言うのだから亞門の実力は信用していた。

「かすみっ!」

 芝生の上に倒れている、かすみの姿を見つけて冴彩が駆け寄った。

「安心めされよ。その娘御は眠らせただけ。我がお会いしたかったのは、御子神殿。」

 不意に聞こえてきたのは落ち着いた中性的な声だった。そして霧の中から冴彩たちと同じ年頃の人物だった。平安貴族のような装束に整った顔立ち、透き通るような白い肌。見た目でも性別の判断が難しかった。

「お早いお出座しだな、静冥っ!」

 亞門に名前を呼ばれて静冥は薄い笑みを浮かべて頷いた。

「どうやら、お互い隠し事は無駄のようでございますな。さよう、吾は怨冥師おんみょうじ闇乃やみの静冥せいめい。悪魔払い《エクソシスト》御子神亞門殿、吾は悪魔ではござらぬが何故なにゆえ敵対なさる?」

 落ち着き払った冷たい声。その視線は心まで射抜くようだ。だが亞門は動じるはずもなく睨み返していた。

「確かに分類すれば悪魔とは異なるだろう。だが、人に仇なす人ならざる者。俺にとっては…敵だ。」

「まぁ、悪魔は貴殿のお仲間でしょうが、悪魔払い《エクソシスト》にして召喚師サマナー、ソロモン王の鍵とアブラメリンの神聖魔術の継承者。救世主と悪魔の名を持つ者。混沌の魔者とでもお呼びしたいところですが。っ?!」

 それは油断と言われても仕方なかった。静冥は亞門と対峙して冴彩の存在を失念していた。

「この異形なるは口寄せ…いえ、識神ですか。怨冥師の私に…。覚悟はよろしいか?」

「あたしの親友利用しといて勝手な事、言わないでよねっ!」

「…なるほど、ソロモン王の指輪が貴女に力を貸すとはね。今日は顔見せのつもりでしたから、引き下がるとしましょう。」

 感情を圧し殺すようにして静冥は霧の中に消えていった。

「うっ、うぅ~ん。」

 静冥が姿を消したのと同時にかすみが目を覚ました。

「かすみっ!大丈夫?怪我してない?」

 まだボーっとした様子のかすみに冴彩が心配そうに駆け寄った。

「えっ?あ、うん。大丈夫。…あっ、御子神っ!サーヤに纏わりつくなって言ったでしょ?!」

 すると面倒臭そうに亞門が冴彩の左腕を掴み挙げた。

「この指輪をしてる限り、こいつは俺と常に一緒だ。」

「えっ?!」

 かすみは冴彩の左手の薬指に填められた指輪を見て一瞬、絶句した。そして落ち着きをつくろって尋ねた。

「そっ、そうなの?」

「えぇ…まぁ…。」

 そして冴彩の答えにワナワナと震えだした。

「かすみ?」

「だっ大丈夫よ。サーヤが選んだ彼氏なら、何処かいい所があったんだろうし。…御子神っ!サーヤ泣かせたりしたら地獄に落としてやるからねっ!」

 かすみに言われて、思わず冴彩は亞門にに視線を向けた。が、亞門は意に介していなかった。

「こら御子神っ!サーヤが助けを求めているんだから、何とか言いなさいよっ!」

「それだけ口がまわるなら一人で帰れそうだな?行くぞ。」

 亞門が歩き出すと、冴彩は申し訳なさそうに、かすみに手を振って亞門について行った。

「いかん…いかんな。…もしかしてツンデレとか?いや、まさかねぇ。うぅむ…。」

 ブツクサと呟きながら、かすみも家路についた。


「ねぇねぇ、御子神君…なんか、かすみに勘違いされてるような…。」

 恐る恐る冴彩は亞門に声をかけた。

「亞門でいい。」

「えっ?」

 意味がわからず、冴彩は戸惑いを見せた。

「俺の事は亞門と呼べ。こいつらも、そう呼ばせている。」

 気かつけば足元を一匹の黒猫が歩いていた。

「亞門、大丈夫か?人間にそんな事、話して…?」

「大丈夫だカイム。こいつは依頼人の孫娘。静冥を相手に臆する事もなく、使えそうだ。そして何よりソロモン王の指輪の所有者は俺だが、現在の所持者だしな。」

「い、一条冴彩です。宜しくお願いします。」

 挨拶をする冴彩の様子を見て、納得した様子で頷くと、カイムは一瞬で同じ年頃の少年の姿に変わった。

「この方が話し易いでしょ?猫と話していて変な目で見られても気の毒だしね。僕はカイム。亞門の諜報担当。ヨロシク。」

 冴彩は人間の言葉を話したり、人間の姿に化けたりする猫に驚く事も大声をあげる事もなかった。

「他人を巻き込むのが大嫌いな亞門が、手伝わせるなんて余程だな?」

 少し茶化した言い方のカイムを亞門は少し睨むようにしてから目を伏せた。

「それだけ今回はソロモン王の指輪の力が重要なだけだ。」

 それだけ言うと、いつの間にか着いた亞門の家に入っていった。

「さぁ、冴彩ちゃんも。しばらく暮らす家なんだから。」

「えっ?!」

「おじいさんから聞いてない?そんな指輪してアモバンから離れたりしたら命がいくつかあっても足りないからって。はいはい、上がった上がった。」

 冴彩はカイムに急き立てられて亞門の家に上がり込んでしまった。

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