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Hidde land, High school  作者: 凪沙一人
2/6

依頼

 終業の鐘が鳴り、この日は朝の一件以外、何事も無く放課後を迎えた。

「お前は部活とかあるのか?」

 亞門の質問は冴彩の予想外だった。

「な、ないよ。おじいちゃんの神社で巫女さんするから。」

「バイトか?」

「違うよ」

 かすみが割って入った。

「サーヤは助勤じゃないよ。神楽、神託、占い、口寄せ、祈祷、ちゃんと出来るんだから。」

「それが本当なら希少種だな。だが、何故、貴様が自慢気なんだ?」

「サーヤは私の自慢の親友なの。あんたみたいな変な虫がつかないよう見張ってんのっ!」

 かすみは亞門を睨み付けていたが、気にする素振りもなかった。

「まぁいい。神社なんて場所は気が進まない。だが、俺から逃げられると思うなよ。」

 それだけ言うと亞門は帰っていった。

「サーヤ、あいつ何か変だよ。先生かお母さん…あ、宮司のおじいさんに相談した方がいいよっ!」

「う…うん。」

 だが、世界と言われては、どうしたものか、冴彩は途方にくれていた。


「遅かったな、亞門。そんなに学校ってのは面白いのか?」

 それは大工のような格好をした一羽の鴉だった。

「ソラス、相変わらず仕事が早いな。」

「まぁな。ホントは指輪のない亞門の命令なんて聞かなくても…」

「ほう?」

 亞門の目の色が変わったのに気づいてソラスは慌てた。普段は日本人に多く見られる黒い瞳だが、それが深紫に染まっていた。

「ま、待て亞門。じょ、冗談だ。」

「嘘を吐く悪魔はよくいるが、悪魔の冗句は笑えないな。」

 いつの間にか亞門の瞳の色は戻っていた。

「まったく悪魔使いの悪魔払い《エクソシスト》の方がよっぽど笑えないぜ。」

 小声で呟いたのだがソラスはそっと視線を亞門に向けた。亞門は聞こえていないフリをしているが、あの地獄耳が聞き逃すはずはないとソラスは知っている。

「家の間取りは注文通りだ。だが大丈夫か?こんな魔方陣みたいな家で?」

「誰かを招く訳じゃないからな。問題はない。」

 外観を見渡し、亞門は満足そうに家の中へ入っていった。


 今日の出来事を冴彩は出来るだけ事細かく母方の祖父である宮司の水城匠覚に伝えた。

「ソロモン王の指輪か。厄介な物を預かったもんじゃな。」

「おじいちゃん、だから預かったんじゃなくて抜けなくなっちゃっただけなの。」

「人様の物を持っていて、盗んだのでなければ預かったのだろ?」

 確かに匠覚の言うとおり、盗んだ訳ではないが、預かった覚えもなかった。

「そろそろかの。」

「えっ?」

 足音に振り返ると見覚えのある少年が立っていた。

「み、御子神君?!神社は気が進まないんじゃ…?」

「やっぱり、お前の祖父か。丁度いい。手伝え。」

 冴彩には状況が飲み込めていなかった。

「で、水城さん、宮司が悪魔払いの依頼というのは珍しいと思うが?」

「ちょっ、ちょっと待ってよ。無視しないでよね。やっぱりって何?悪魔払いって?おじいちゃんが依頼したってどういう事?何で私が手伝わなきゃならないの?」

 捲し立てる冴彩に半ば呆れたように亞門は答え始めた。

「学校じゃ猫被っていたようだな。今、この国で宮司が常駐している神社は8社に1社くらいだ。お前がおじいちゃんの神社と言った時点で確率はかなり高いと思っていた。悪魔払いは俺の仕事だ。お前の祖父が依頼したというのは言葉どおり。お前が手伝わねばならない理由はお前が俺の指輪を填めているからだ。」

 理路整然と言葉を並べられて冴彩も返す言葉を失っていた。

「で、水城さんの依頼理由は?」

「わしの手に終えないからじゃ。」

 匠覚の答えはシンプルだった。

「ちょっと待って。おじいちゃんが手に負えないものが御子神君に…」

「余裕じゃろ。彼はレベルというか次元が違う。」

 冴彩は祖父の実力はよく知っているつもりだ。その祖父がレベルが違うというならば、もはや雲の上の次元だ。

「そんなに御子神君って…。」

「だが、俺の能力ちからのキーアイテムがそこにある。つまりお前が現状の俺のキーアイテムだ。だから離れるな。」

「冴彩、そういう事じゃから、ちゃんとお手伝いするんじゃぞ。御子神さん、ふつつかな孫じゃが宜しく頼みます。ほれ、お前も。」

「ふつつか者ですが…って違ぁう」

 亞門は冴彩の言葉を無視するように外へ出た。

「ちょっと待ってよ」

「一歩でも外に出ると変わるんだな?」

「だって誰か見てたら困るもの。」

 不意に亞門は冴彩の腕を掴んで走り出した。

「ちょっ、ちょっと…」

 冴彩も怪しい気配には気づいていた。しかし境内は一種の結界のようなもの、気配の主が入ってはこれないだろう。

「多分この気配は朝霞だ。急ぐぞ。」

「えっ?!かすみ?」

 冴彩には怪しい気配は判っても、見えない距離では人間の気配までは判らなかった。

「水城さんの依頼だ。誰一人、被害者を出す訳にはいかないんでね。」

「う、うんっ!」

 冴彩も自らの意志で走り出した。

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