もういない、彼女
今回は、何とか書き上げた旦那様視点です。
ただ、読まれると場合によっては不快に思われるかも知れません。
さようなら、旦那様を読まれた後に読むことをお勧め致します。
※たいせつな、君を投稿しました。そちらもよろしくお願いします
※みをこがす、御方を投稿しましたこちらもよろしくお願いします
※ほれたのは、御嬢様を投稿しましたそちらもよろしくお願いします
※あいしてる、貴方を投稿しましたそちらもよろしくお願いします
※あいしあう、二人を投稿しましたそちらもよろしくお願いします
失うまで、気が付かなかった
彼女を、好きであった事なんて。
初めてあった時は、自分より少し年が離れた許嫁程度にしか思えなかった。
自分にとって、彼女の家は価値があるために、そして向こうも俺のことを価値があると同じ事を考えているのは明白だった。
そのために、幼い彼女を許嫁にしたが、他の子供と比べると少し変わっていた。
初めて会った時、無表情でこう言うのを、まるで人形のようだと言うのだろうと思ったものだ。
だが、当時の俺からしたらそんな事は些細な事だと思っていたからこそ、あの日までは気にもせず、ただ、大人しく静かな彼女は俺の容姿や家柄に群がる令嬢の騒がしさに比べたら、こちらの方が静かでちょうど良かった。
あの日、暫く経っても何の話題もない、ずっと静かな彼女にこれはこれで飽きてきた俺は、彼女と話をした。
「何か、好きなものはあるのか?」
良く言う、当たり障りのない話題を出してみると、彼女は首を掲げて、
「好きな、もの、ですか?」
と、俺の言ったことを繰り返した。そして、暫く黙っていた彼女は、小さな声で言った。
「…スミレの、砂糖漬けが…好きです…」
初めて主張した彼女に驚いたが、それよりも……
何も今まで変えることの無かった彼女の顔が、少し柔らかくなった気がした。
暫くすると、いつもの表情に戻ったが俺は次に来た時、気まぐれでスミレの砂糖漬けを買って渡すと、彼女は
「!!ありがとうございますっ…」
今までに見たことのないくらいの笑顔を見せ、それを俺に向けてきた。
嬉しそうにスミレの砂糖漬けの入った瓶を抱きしめ、大切そうにして瓶を見つめる愛おしそうな顔と、裏表のない純粋な言葉を久しぶりに聞いた俺は、目がいつの間にか話せなくなっていた。
今思えば、あれが俺が彼女を好きになった瞬間だと分かる。
だが、俺はそれをただの気の迷いと断じた。目が離せなくなり、ずっと見ていたのは物珍しかったからだと結論づけた。
そして、彼女を俺の屋敷に呼び、俺の家の庭で二人でテーブルと椅子に座り、茶会じみた事をしていた時だった。
俺が、少し席を外して通りかかったメイドに新しい菓子を用意するように言って、庭に戻る時だった。
その日は、父の友人とその息子が来ており俺達は庭に行くことにしたが、その息子と彼女が何やら話をしていた。
その場面がとても気に食わなかった。だけど、それが何か分からなかった。
その息子が俺に気付くと会釈して、離れていった。そして、彼女の表現を見ると
ほんの少し、口元と目元を緩めていた。
それに不可思議な苛つきを感じ、俺はその苛つきの意味が分からなかった。
そして、その苛つきは彼女が社交界デビューを終えてから三ヶ月経ったある夜会での事だった。
その頃は、既に俺と彼女は婚姻間近であり、後数ヶ月すれば夫婦になる。
その事に、俺は何故か訳の分からない嬉しさに首を傾げた。
彼女が自分の物になることと、これから先も傍にいられる事がたまらなく楽しみで嬉しかった。
だけど、それは彼女の家との繋がりが持てることだと思いこんだ。
ー…馬鹿馬鹿しい…ただの、気の迷いだ…ー
そして、夜会で一通り彼女と踊った後、次の相手と踊ることにした。
少し、寂しそうな彼女に、ほんの少し満足感に浸った。
彼女から離れれば、やはり、令嬢達が来るがその中でも適当に選んだ。
どうやら、周りから高嶺の花のような扱いを受けていた令嬢だった。
自分の美に絶対の自信を持ち、金の髪には大きな薔薇の髪飾りをして纏められ、緑色の目には俺を誘惑しようと語りかける。
ドレスも大胆に背中を開けた物で、胸元も大胆に見せた、黒の刺繍を施した赤ドレスだった。
対する、俺の婚約者の姿は正反対だった。
薄紅の髪には小さな菫の髪飾りが髪に散らばり、青い瞳は少し悲しげに俺を見つめている。
ドレスは、淡い紫を基準とした、所謂プリンセスラインと呼ばれるドレスで此方は黄色の刺繍を施したもの。
その令嬢と踊る為にダンスの輪に入り、踊った。
別段、楽しいとかはなくただ、失礼のないようにする。
「御上手なのね、ダンス…」
赤く、蠱惑的に囁かれた唇に、事務的な笑顔を見せて、
「ありがとうございます、貴方もとても美しく踊る」
「あら、ありがとう」
そんな、何でもない会話をしていた時、不意にダンス相手に気付かれないように彼女を探した。そして、彼女を見つけると他の男と踊っていたことに、言いようのない、不快感を感じた。この不快感は、彼女が別の男と踊っているときも感じていた。だけど、それよりもこういう場が苦手な彼女が、別の男とも踊るのも消極的な彼女が……
目の前の男に向かって、それは嬉しそうに…踊っていた。
目の前の男も、彼女を慈しむように見守るように見つめており、彼女がその男と何事か話すと、何がおかしいのか笑い合い、そしてまた、楽しそうに踊る。
その、光景に男から引き剥がし、自分の元に連れて行こうと考えた。頭の中が、理不尽にも彼女を問い詰めていた。
ー…その男と、何故そんなに楽しく踊っている…何故、男と一緒に笑っているんだ、誰なんだ!その男は!?…ー
頭の中が、怒りと男に対する激情に支配されたとき、
「ねぇ、どうかなさったの?」
声を掛けられ、すぐに冷静になる。俺は、それに気付いて何とか平静を保つためにその相手にまたしても笑いかけ、
「いいえ?何でもありません」
と、言った。
そして、夜会が終わり、馬車に互いが乗るときいつもより嬉しそうな彼女に俺は、腹が立って仕方なかった。一緒に馬車に乗っている俺などを見ていない顔をして、どこか上の空で俺以外の誰かを思い浮かべているのか、優しく笑っていた。その事に、無性に胸がざわつき、心は何故か虚しかった。
ー…何故、そんな表情で俺ではない、あのダンスを踊った奴を思い浮かべる…何故、君は俺を見ないんだ…ー
そんな、気持ちに支配されたが、彼女のあの表情を見た俺は、あの男を許せず、彼女を許せなかった。
思えば、あの時馬車の中で聞けば良かったのに、もし、彼女とあの男が恋仲ならばと思うと、とてもじゃないが、聞くことすら出来なかった。
そして、その数ヶ月後に婚姻を終え、今宵は初夜だと思うと、自分が彼女を抱くことに躊躇った。俺は娼婦も、一夜限りの相手が純潔だったと知っても、躊躇いなく抱けても彼女を抱くことには躊躇してしまう。初夜で彼女を失望させないか、彼女を怖がらせないか気にした。しかし、扉を開けて、ベッドに腰掛ける無垢な彼女を見て、自分が彼女をこれから抱くのだと思うと、
ー…出来ない…彼女を抱くことが、出来ない…ー
何も知らない、純粋な彼女を自らの手で触れることが恐ろしくなった。それは、まるで綺麗な曇りないガラス細工を素手で触り、その美しさを損ねる…そんな錯覚に陥った俺は、彼女にこう言った。
「お前を抱く気にもならない、早く寝ろ」
なんて酷いことを言ったと今は思う。彼女がどんな表情をしていたのかすら、想像出来なかった俺は最低な男だと言えた。
またしても、夜会であの男が現れた。あの男に向ける笑顔に苛立ちを覚えながら、周りを見れば、あの夜会から良く見かける令嬢から、ダンスを踊っている最中に耳元から声をかけられた。
ー…素敵なお方、私と…夜の関係になりませんか?…ー
最初は、何を言っているのかと思ったが、彼女を盗み見れば、彼女は不安そうな顔をしていた。だが、自分をやっと見てくれたのかという嬉しさと、この令嬢と関係を続けばあの男との事を反省して、俺を見続けてくれると思った。だからこそ、俺は令嬢に言った。とびきりの、作った笑顔で。
ー…喜んで、美しい人…貴方と夜だけでもいられるなら光栄だ…ー
と、思ってもない事を口にした。令嬢は艶やかに微笑んだ。その日、俺は彼女に馬車で一人で帰るよう促したが、彼女が俺に対してあの時のような顔をせずにただ、そうですかと言って、振り向きもせずに乗った。その事に、心が傷つきながらもその令嬢と一夜を明かした。
あの時、彼女が泣きそうな顔をしていたと想像するなら、当時の俺ならば喜んだが、今の俺なら…その時の俺を、殺してしまうくらいに、悔やんでいる。
そして、周りの貴族から見れば完璧であり、清楚さを兼ね備えた彼女は夜会でも令息達に声を掛けられた。彼女も貴族なので、相手をするが、俺は彼女を他の男と一緒にいるのが一秒たりとも許せず、彼女が少しだけ、ワインを白いドレスに掛かったのを見て、先程別の男と踊っていた彼女に八つ当たり加減に、馬車から屋敷に帰った後に言った。
「この俺に、恥をかかせるなよ」
そして、その言葉を聞いて変わらない表情を悲しげに今にも泣き出しそうな、胸を両手で握り締めている彼女を見て、
俺は………何故か、喜んだ。
ー…あぁ、俺は言葉一つで彼女の表情を変えられる、俺は彼女に見て貰えている…ー
そして、彼女の返事に更にあの男に対する優越感に浸った。
しかし、それも暫くすれば続かなかった。彼女はダンスパーティーでも夜会でも完璧にこなし、そして、彼女はダンス相手も終わればすぐに、壁の華になった。まるで、俺から隠れようとするかのように。
その態度が気に食わなくて、俺はあの令嬢とは違う相手と踊っていた。まさか、その時にあの愛人である令嬢と話していたとは知らなかった。久しぶりに、彼女が私を見た。そして、ワザと見せつけるように、笑顔を作り、楽しそうに踊る演技をした。
彼女は、俯いている様子に内心では満足したが、そんな彼女に声を掛けたのが、あの男だった。そして、心配そうなあの男に彼女は気遣うような微笑みを見せた後、また、隠れるように壁に行った。
そして、馬車で帰るときあの、いつもの何も移さない無表情にあの男には見せた笑顔すら俺に見せなかった彼女にこういった。
「お前は、俺のことなど興味が無いような顔をするな」
ずっと、思っていた事を口にした。しかし、その返答は
「そうですか?」
まるで、そんな事が無いとでも言うような声色で言った彼女に俺は最大限の怒りをぶつけてしまった。
「安心しろ、俺はお前のことなど愛してなどいない…お前も好きに愛人を作れ」
その言葉を言って、その日は何も言わず寝室に帰って寝た。
まさか、その数日後、彼女がいなくなるなんて思わなかった。
彼女がいなくなる前日、俺は仕事を終えて愛人の所に通っていた。あの日から彼女を今以上に避けるように、時間をずらして行動していた。
元々、俺は彼女とは仕事の都合で一緒に食べられることはなかったが、その前に彼女と一緒になれば、何を言えばいいのか分からなくなり、目線を合わせれば上手く言葉が出なくなるため、そんな自分が自分でなくなることが嫌で、避けていた。
実際、彼女は何も言わなかったから、それで良いと思った。
彼女がいつの日か、今一度、自分達夫婦について話し合おうとしたことがあるが、その事が、彼女から別れを言われると怯えた俺は、必要ないと切って捨てた。
それでも、彼女は俺の時間が許す限り、少しでも話し合いたいと言ったが、俺は無視し続け、そして、彼女は何も言わなくなった。
そして、愛人の屋敷から家に帰れば、侍女や使用人が慌ただしくいつもなら帰って来た俺に気付くはずなのに、誰一人として気付くことはなかった。
そして、憔悴仕切った執事がようやく俺に気付き、急ぎ礼を取り、それに気付いた使用人達や侍女達が同じように礼を取った。
「何の騒ぎだ、これは」
俺の言葉に、皆言葉を濁したが、執事が青ざめてこう言った。
「奥様が……いなくなりました…」
その、言葉に俺は呆然として執事が何を言っているのか分からなくなり、その場に立ち尽くした……。
そして、彼女の捜索を始めた。屋敷や領地の民に彼女について聞いたが、誰も彼女がどこに行ったのか分からなかったらしく、俺は更に焦った。
どこに、言ったんだ!君は!?
勝手に何処かに消えた彼女に焦りと、心配をしていた俺は、彼女を捜索しながら考えていた。しかし、その数日後、彼女を見たという、一人の女性がいた。
その女性は、どうやら旅人であり、自分が宿に向かって歩いているときにちょうど見かけたらしい。しかし、こんな夜更けに女性がいるわけがないと思い、宿屋で泊まったとのことだった。
その女性は、今も宿に泊まっていると聞いて、訪ねた。そして、その話をした後その女性はこう言った。
「その人、綺麗な長い薄紅色の髪をしていて服もドレスを着てたんだけどこんな時間に貴人の、しかも女性なんて歩いている訳ないと思って、そのまま宿に行ったんだ。方向は、確か……」
その、彼女から聞いた方向に俺は、冷や汗を流した。
彼女にお礼を言った後、急いでその方向に言ってみれば…
俺の観光地では、有名ではあるが…しかし、その裏に自殺の名所としても有名な谷に向かった。
谷の底には、魔物や猛獣が夜になれば活動するところで、自殺者は皆そこで飛び降りて生き残った者は一人としていないと言われる場所。
俺は、急いで谷の底に行くための通路を通り、彼女を探した。
そろそろ、日が暮れ、時期に夜になるため帰らなければならないが、そんな事を考えている暇すらなく、必死に探した。
そして、その中で大きな木の葉に見覚えのある、ボロボロになったストールを見た。
あの、ストールは俺が彼女にあげた、ストールだった。
そして、俺はそのストールを持ったまま、心が絶望一つになり、屋敷に帰った。
彼女は、自殺をしてこの世から去ったことを理解してしまった。
その後は、俺が彼女の家に彼女が谷に行き、ボロボロのストールだけが残されたことを伝え、彼女が亡くなった事を言ったが、この家族はその事では、あの子の頑張りが足りず、こんな情けない結果になっただけだから気にする必要はないと言った。
彼女の家は、何故か彼女には当たりが厳しくて、昔から不思議に思っていたが、今はそんな事を言えずに、俺は彼女が亡くなり、教会の神父に彼女の事を伝え、後日葬儀を執り行った。
彼女の葬儀には、彼女の両親や家の兄達が義務的に行き、その中に彼女と夜会ではいつも一緒に笑い合っていたあの男もいた。
葬儀が終わり、彼女の墓にはあの両親すらいなく、俺は教会の神父に挨拶をした後、再び彼女の墓に行くと……
あの男が、泣きながら彼女の墓石に触っていた。
その行動にかっとなり、触るなと言い掛けたが、この男の言葉に俺は固まった。
「何故、君がこんな目に会わなければならなかったんだ…君は、私といつか自分の旦那様と子供が出来たら、私の時のように、勉強を教えて欲しいと言っていたじゃないか…なのに、何故…せめて、僕に相談して欲しかった…どうしてなんだ…」
その言葉に、俺は強い衝撃を受けた。そして、更に彼は言った。
「家庭教師に来た時、君は僕の教えることをいつも真面目に聞いて、そして誰よりも頑張る姿を知っていた…。君は、僕にとっては優秀で、真面目な優しい生徒だったんだ…こうなる前に、相談して欲しかった…何故、自殺だなんて言う事をしたんだ…」
彼は、彼女にとってはただの教師と生徒だったのか?だから、あんなに嬉しそうな顔をしていたのか?それなら、何故俺に言わなかったんだ?
自分が、かつて彼に抱いていた気持ちが、全くの見当違いだったと知って、更に絶望した。
彼とは鉢合わせしないように隠れ、俺は彼女の墓に花を置くとそのまま、屋敷に帰った。
屋敷に帰れば、皆沈んだ表情で仕事をしていた。俺は、彼女の部屋に行き、ある日記帳を見つけた。その日記帳に書かれていた事を読めば読むほど、
俺は、自分が仕出かした事の大きさを知った。
日記には、全て俺の事が書かれていた。
初夜の日に、旦那様から抱かれなかった。きっと、私の事なんて抱く気もないくらい魅力がなかったんだなって落ち込んだ。
今日は、旦那様から誕生日にスミレの砂糖漬けを頂いた。勿体ないから、少しずつ食べよう。
今日、あの家にいたときの先生にあった。先生と一緒に踊ると先生は褒めて下さった。これなら、旦那様と踊っても、大丈夫だと、自信が着いた。
旦那様と、目を合わせない日が続いた。夕食も一緒に取ることも滅多にない…旦那様は、私と一緒にいるのが嫌なのかしら?何回か話し合おうにも、旦那様は忙しいのかなかなか取り合ってくれない…。
旦那様と踊っていた、美しい方がいた。お似合いだった。私もあんなに美しかったら旦那様に笑って貰えたかな?
旦那様に、今日、粗相をした事を咎められた。白いドレスにワインがいつの間にか掛かってしまったみたい。今よりも気を付けないと。
あの、美しい方の言うとおりだった。私は旦那様に愛されていなかった。私、勉強も、マナーも、ダンスも本当は苦手で嫌いだったけれど、旦那様に認められて、愛されるために頑張っていたけれどきっと、そんな気持ちを見透かした旦那様にとっては、私は醜かったんだなと思った。
もう、頑張ることにも愛されるために一生懸命になるのも疲れた。旦那様の事を、私は愛していたけれど、旦那様は私を愛することがないんだと思ったら、どうでもよくなった。だから、私は今日死のうと思う。 この日記帳は、きっと誰が処分してくれるだろう。旦那様、私は貴方を愛していたけれど、ごめんなさい。弱くて情けない私は、今日、命を絶ちます。
俺は、その日記帳が皺になることを気にせずに抱き締めて、床に膝を着き、声無き声で慟哭した。余りにも、自分の犯した愚かな行為に、余りにも彼女から愛されていたことを知った時に、俺は、その場から動けずに、そして、自分の今までの行為が彼女の事を好きだったと知らしめるのには、充分すぎた。
もういない、彼女は、この日記を残してこの世から消えてしまった。
気が付かなかった、彼女の心に俺は自分を罵倒する。
気が付いた、遅すぎる恋情に身を焦がし、愛を伝えるには手遅れになった己を盛大に嘆いた。
君を、失うまで自分が貴女を愛していたことなど気が付かなかった俺を、どうか、許してくれ……。
そして、三年が経ち、俺は実家から後妻を取るように言われ、愛する人がいなくなり、どうでもよくなった俺は、了承した。後妻は、他国からの貴族らしい。
後妻になる予定の婚約者とは、近いうちに会うことが決まり、俺は、屋敷から持ってきた日記帳を手にして、彼女に誓った。
今世では、俺の愚かしさで死なせてしまった貴女といつか、この国の神に来世では結ばれるように、俺は願い、
その日記帳を、自分の棚の中に入れた。
そして、俺は自分の部屋から、出たのだった。
神「だが断る」
というわけで、ひたすらぐだぐだと後悔している旦那様視点でした。書いていて私まで、旦那様、本当にヘタレ過ぎでしょうと思いました。
とりあえず、何とか書き上げて良かったです。皆様方に満足頂けたらと思っています。
それでは。




