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カクセイシャX  作者: 半熟生卵
3/12

P/始まり―2



青年―――結は、気づくと夜の学校の前に立っていた。

どうやってここに来たとか何で来たとかそういう記憶はどこにもなく、いつのまにだかそこにいた。

学校はいつもの喧騒とは打って変わってまるで全然違う場所のように静まり返っている。


(おかしいな……学校の中に誰もいない)


よく遅くまで学校に残っていたりする結は、この学校の異変に気が付いた。人が誰もいないのだ。彼の通っている高校は、その場所でも有数の大きさを誇る学校で夜中は警備員を雇って学校内の管理をしている。


その警備員のことを数回だけだが見たことが彼はあった。

30代ぐらいの人で、ある事情で学校にいた時に見回りしている彼に結が発見された。警備員は、懐中電灯を片手に学校内の見回りをしているそうだ。


だが、今の学校の中からはそのような懐中電灯の光は一切見えてこないのだ。


(本当に……ここは俺が知ってる学校なのだろうか……)


妙に現実味が帯びない状況で、しばらく呆然としていると学校からまるで破壊音のような轟音が聞こえてきた。

その方向を見ると、何かが燃えるような赤さと共に黒煙が黙々と空に上がっていった。



それを見た結は、気になりその音をした方向に駆け出した。

いつもの彼ならば、そのような物騒なことには首を出そうとせずに真っ先に何処かに行ってしまうのになぜかこの時だけはその先にある光景が気になってしまった。


走りだし、近づいていくとどんどんと轟音が大きくなっていく。

それに加えて、ところどころ学校に崩れた部分が見える。

まるで紛争地帯のような様子に、結は息をのむ。


そしてまるで数百どころか数キロメートル走ったように感じ辿り衝いたそこには、この世の物とは思えない光景が広がっていた。



巨大な――まるで怪獣のような姿に強固な外骨格のような物を身に着けた――四足歩行の獣。


その獣に、見るも無残にグチャグチャにされていく―――人のようなもの。


そして――――――校舎の壁に身を預けガタガタと震えながらその光景を見続ける


「なっ!?」


自分の姿だった。


(………なんだ……これは……)


その有りえない光景に、彼の頭は追いついていかなかった。


(何だあの化け物は―――なんであんなことになっているんだ―――なんであそこに……俺がいるんだ!?)


怖い、恐ろしい、逃げたい、そういう考えが彼の中を駆けずり回る。

そんな彼のことを知ってか知らずか、獣は怒り狂うかのように眼の前の人のような肉塊をさらに踏みつぶし押しつぶし吹き飛ばし―――原型の無い本当の“肉塊”にしていく。


その光景にもはや言葉も出ないほど恐れ気づくと、視界が先ほどの場所ではなく――――


「なん……で……!?」


―――ガタガタと震えていた自分の視界になっていた。


眼の前にいる、化け物。そこからただよってくる、濃い、こい、コイ―――血の臭い。そこにある、グチャグチャの肉塊もよく見えてしまう。


すると、先ほどまで暴れ狂っていた獣はグチャグチャになった肉塊を一口で食べこちらを見る。


やバいヤバいやばいヤバイ

彼の頭はその文字で一杯になる。


その瞬間、彼は恐怖に震えながらも立ちあがり―――駆け足で逃げ始める。

化け物から逃げるため―――

その光景から逃げるため―――


しかし、その行動もむなしく獣はこの世の物とは思えないスピードで追ってくる。

校舎を使って曲がっても、その曲がり角などものともせずこちらに向かって全力で向かってくる獣。その内、ほとんど両者の間に差が無くなってくる。

そして、化け物が完全に追い付きその爪を彼の背中に付き立てた。

恐ろしいほどの痛みが彼の背中に襲ってくる。痛みで意識が遠くなる。

遠くなり、完全に目の前が真っ暗になる。


その瞬間―――男なのか女なのかよく分からない謎の声が頭に響くように聞こえてくる。


「これは君の一つの―――だ。君がこの―――を引き当てるかどうかは君の―――が知っている。その時君は―――――――――――――」


その声が何かを言いきる前に――――――








―――結は、ベットからずり落ち頭をぶつけ目を覚ました。


「え、あ、……え?」


気づくとそこは、いつも自分が寝ているベットの脇だった。

シーツはズレにズレ、枕が自分の横に落ちている。


「え……夢?」


恐る恐る、爪が刺さったはずの背中を触れてみるがどこにもその痕跡はなかった。

外を見ようと窓に目を向けると、朝日がカーテンの隙間から部屋に向かって注ぎ込まれている。

カーテンを開け外の様子を確認しても、何も起こっていないようないつもの街の風景が広がっていた。


「夢……だったのか?」


夢と思えない痛みと体験は確かに彼の中に残っていた。

だが、自分の様子や周りの様子からそれは夢だと理解できる。

それでも、彼はさっきまでのことが夢だと完全には納得できなかった。


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