3-1
つづきです。
文章がうまくなってたらいいんですけど...誤字脱字がないことを祈ります。
今日は休日である。勝馬はのんびり部屋を片付けていた。
普段からずっと部屋を片付けない為、ごちゃごちゃのままである。
大して気にしていないが、チリ紙やら新聞紙やら訳の分からない物体が部屋中に転がっている。
「なんかこれもういらないな……」
そして、勝馬の部屋には黒い冷蔵庫の様な物体があった。
この物体は勝馬がもういらなくなったものだ。
そしてその隣にも一回り小さい黒い箱のような物体があった……。
これは勝馬が必要としているものだ。
(水口にでもやるか……)
勝馬は水口に連絡を入れた。
[水口、スパコンいる?]
黒い物体は家庭用並に小さくなったスパコンである。小型化軽量化が進んだこの時代ではスパコンは個人で購入できる人も出てきた。
[スパコン? 前のやつ?]
水口には前に話したことがあった。
そしてしばらくしてから水口が家まで来た。
「で、えーと……この黒いやつ?」
「ああ、これだよ」
部屋の中まで入ってきた水口は勝馬とお互い座りながら話をしている。
「これ」と言うのは黒い冷蔵庫のような物体だ。
「これいらないんだよな。もう……安物だしな……」
買える人間は買えるのだ。スパコンであっても。
どれだけ、高性能でも時間が経ったらもっといいものが出てくるものだ。半年前は最新でも半年経つとバージョンが一つ下がる。たった半年でも。
テクノロジーの進歩は早いものだ。
「最近オヤジから新しいものもらったしな」
「ああ、だからか……なるほど、でもこれでもすごい性能でしょ?」
「ペタフロップスだよ、家庭用にもかかわらず」
ペタフロップスの“ペタ”とは“ギガ”の二つ単位が上である。つまり早い話が超高性能である。抜群に処理が早い訳だ。
この時代のパソコンの性能は上がっているが、スパコンには到底劣る。
「次元超えてるね、いいの? もらっても?」
「オヤジから貰ったものがあるからな、家庭用と言ってもデカすぎるしな……これでも家、入る?」
「入るよ。これぐらいなら……でもホントにいいの?」
「ああ。(もっといいものがあるからな……)」
「マジで! ありがと! でもこれ持って帰れないなぁ……」
「宅配するから」
勝馬や水口よりも一回り小さいぐらいの冷蔵庫のような形だった。これでもかなり小さくなっている。
かなりと言うより相当小さくなっているし安くなっている。
実はこの時代のパソコンは、この様な家庭用のスパコンと連帯可能なように作られている。 つまりパソコンの処理を上げることもできるのだ。
「まだ、あんまり使ってないからまだまだ使えるよ」
「マジでぇ~」
「パソコンに接続したらダントツで早くなるよ」
「おお~すごいね! けどこんなのよく買えたよね……(これを購入するとなると、億単位の金が掛かるんじゃ……)」
確かにそうだろう。水口の考えは外れていない。
「まあ、俺は特別だから……」
水口は勝馬の権利についてある程度は知っていた。しかし、その存在ぐらいしか知らなかった。勝馬の階級に関してもあまり知らなかった。
「勝馬、やっぱり気になるんだけど、その権利について教えてよ、ボクも全部は知らないからね~」
やはり普通は気になるだろう。「まあ、俺は特別」と言うのは、つまり自分の権限を指す。
家庭用とはいえスパコンを購入するには相当な料金が掛かるはずだ。この時代は安くなったとは言え~千万、~億とするはずだからだ。それぐらいの事は水口でもわかる。
金銭的な特別な支援があり、それも含めて上位の人間の権限だと言うことであれば、一体勝馬のような存在価値上位の人間の権限とは何なのか?
また、存在価値による階級なども気になるはずだ。いったいどんな人間が価値が高いと言えるのかと言うことも。
水口はすべての事は知らなかった。
彼が知っていることは簡単な事だけだったのだ。
「階級についても気になるなぁ」
「まあ、そうだろうな……どんなことについて知りたい?」
勝馬もいつかは話さないといけないと思っていたようだ。水口も階級の優劣については簡単には知っているが、実際のところ深くは何も理解していない。
その制度が存在すると言うことぐらいしか知らないのだ。
「階級がどうとかもそうだけど、価値の高い人間ってどんな人なのか? って事が知りたいな。ボクもある程度は高いけど勝馬程じゃないしね」
「なるほどな、でもそれは一番難しいんだよな……」
水口と永栄は現状、存在価値はランクBの上位と定義されている。勝馬とは一つランクが下である。
また、「存在価値が上位の人間がどのような人間であるか?」と言うことは非常に説明が難しいのだ。
人間の価値の説明自体が相当難しいからだ。
「説明したいんだけどさ、そればっかりは難しいんだよな……それホントいつも悩むんだよな、もし聞かれたらどう答えたらいいのかな? って……」
当然だ。何もかも全部を説明しないといけなくなるからだ。
勝馬は悩んでいた。
「……えっと、なんて言えばいいかな? 水口はどう思う? 価値の高い人間って? 実は俺も完全に理解してる訳じゃないんだよ……」
「そうなんだ、勝馬でも……価値の高い人間? 何だろうな?」
やっぱり水口も悩む、これは簡単なようで難しいのだ。まあ当然と言えば当然だ。
普通はそんなことは考えないから。
「単純に“良い人”“悪い人”みたいな? それとか頭がいい人とか悪い人みたいな感じかな? 今はそれぐらいしか分からないなぁ……存在価値に関しては簡単な事しか教えられてないしね」
「だろうな、俺もいきなりだとそれぐらいしか分からないよ」
精々、普通の人間がそれも即興で考えて分かることならそれぐらいだろう。単純なことしか分からないはずだ。
また、存在価値に関しては多少は学校の授業で教えられてることもあるし、説明や解説の本もあるが、あまり詳しい事は教えられてないし、本にも載っていないのだ。
と言うのも伝えることが難しいのだ。人間の価値など……。
人に教えることが困難なのだ。
「“良い人”“悪い人”か、この考えは間違ってないよ。頭が良い悪いってのもな。だけど、そもそも“どんな人が頭がいい”とかそんなこと分からないだろ?」
「え? 性格がどうとか、勉強がどうとかじゃないかな? それは違うかな……」
水口が言うのは性格のいい人間が“いい人”で、勉強ができる人が“頭のいい人だ”と言う事だ。
「単純な言い方ではそうかな~って……」
「確かに単純だな……けどそれじゃ、あまりに単純だなぁ……」
実際はそんなに単純なものではない。
そしてやはり難しい……。人に説明するとなると難しいものだ。
やはり勝馬は悩んだ。そしてあることを話そうと考えた。
「なあ水口、IQって分かるだろ?」
「知能指数だよね、分かるよ。ああ、それかっ」
つまり“IQ高ければ偉い人間である”と水口は考えた。
「存在価値上位の人間って高IQって事かな?」
まあ、このように考えても悪くはないだろう。
「……いや、実はそうでもないんだよな……」
「え? 違うの?」
しかしやはり、そんな単純な事でもない……。
「俺IQテストとかやったことないんだよな……」
「マジで! ないの?」
「ないんだよな……」
ちょっと意外だった。だったら、何が価値の定義なのか、全然わからない。
「まあ、確かにIQは高いんだよ。けど別のIQだよ」
「え? 別のIQ?」
水口はそんなのは全く知らなかった。
“IQ=知能指数”と言うことしか知らなかったのだ。
「知能指数って思ってるだろ?」
「それしかないよね?」
「違う違う……知性指数。ち・せ・い指数ってのがあるんだよ。」
「なにそれ?」
知能指数以外にも知性指数と言うのも存在する。比較的最近定義されたものだ。
「知性の指数だよ。存在価値上位の人間ってのはな、特別な知能指数が高い人間でもあるんだよ。まあ、最もそれだけでもないけどな……」
勝馬の言う特別な知能指数は存在価値と非常に重要な関係がある。
ただしIQではない。
「俺らみたいな人間(上位人間)はな、SQってのが高いんだよ。まあ、それだけでもないけどな」
「SQ?」
「そうSQ、魂の知性指数……」
知能指数と知性指数は別である。そもそも知能と知性は似ているが違うのだ。
「“Soul Intelligence Quotient”(魂の・知性・指数)ってことな……」
「魂の? 知らないなぁ……でもなんかカッコいいね。魂って」
そもそも2000~2020年代でもIQ(知能指数)しか知らない人間も多い。
そして現在でもIQ(知能指数)以外は、あまり誰も知らないようだ。水口も全然知らなかったようだ……。
「でもそれが高いと偉いって事?」
「まあ、“偉い”って言うか? ……まあそれでいいや」
さすがに、これ以上はあまり細かく説明ができなかった。
また水口の理解は単純すぎる。
「SQってのはIQ(知能指数)よりも何段階も上の知能指数を超えた知能指数なんだよ」
「……ってことは、……めっちゃすごいって事だよね」
「……まあ、簡単に言うとそうだな」
2080年度IQやEQ以外にも定義された知能指数は沢山ある。知性指数もそうである。
そして上位の人間の中で最も注目されてるのが、“SQ”(魂の知性指数)である。
「……すぐには分からなかったけど、それってすごいよね。IQでも高い人間って少ないよね? 130以上が0.25%……だったか、なんか知らないけど」
「ああ、SQはもっと少ないぞ。その比率さえも分からない程にな……」
SQに関して“130以上が何人以上”とか、その比率もよく分かっていないのだ。
「マジで! なんかすごいなぁ! 今日このこと聞いただけでもなんかすごいこと聞いたって感じがする……」
「確かにSQに関してはすごい指数だよ。全然いないからなぁ。SQ高い人」
「要するに激レアってことだね!」
「まあ、そうだな」
水口はSQの内容に関しては大して理解してなかったが、IQよりもレベルの高い知能指数があり、それが上位の人間に関係していると言うことが分かっただけでもかなり嬉しそうだった。
「まあ今日言えることはこれぐらいだな……悪いけどこれぐらいしか説明できないや……肝心のSQがどんなものかってことは説明ができなかったよ……ごめん」
「いやぁ、いいって。そのことが分かっただけでも、なんかすごいことが分かったって感じがするからさ。これからまた調べてみるよSQのこと」
水口はかなり上位の知性指数について興味を持ったようだ。すぐに調べようと考えた。
SQが分かれば上位の人間の事も理解できるかもしれない。それは彼にとって興味深いことだった。