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つづきです。
もしかしたら誤字脱字あるかもしれません。
つまり当然だが、ガイドブックに当てはまってはいけない。
「さっきあっただろ?『自分の行動も間違いだらけでありながら他人ばかり批判する人間や自分の間違いを全然理解できない人間等……』とか」
「ああ、あったな。しかも沢山いるよな。ゴリポンもそうじゃん……」
「昔の学校サイト見て思ったんだけど……『それはかつての学校の教師』だと思ってさ……」
昔の学校の情報サイトを見た人であれば、誰でもそう思うだろう。
「確かにそう思うよ。ボクもサイト見たことあるけど、似たような事言ってる人も沢山いたからね」
水口もサイトを見たことがあったためか同じような考えを持ってるようだ。
「だろ?『体罰当たり前』とか『イジメ黙認当たり前』とかそんな時点で話が合ってないよな……」
「うん、そう思う。『自分の行動も間違いだらけでありながら他人ばかり批判する人間や自分の間違いを全然理解できない人間等……』これ当てはまってると思うよ……」
「昔の制度は古くせぇな……」
この場合は教師もそうだが、昔の制度自体に問題がある。
どうしても不正が起こる制度では、一人ひとりの個人がどんな努力をしても無駄なのだ。
「これ見てみてよ」
勝馬はモバイルパソコンを用意して、画面を全員に見えるように向けた。
画面には動画サイトに昔の学校の不正な授業やイジメ動画などまでもが沢山アップロードされていた。
「中でもこれだよ、コレ……」
タイトルは、“教師の暴力行為”となってた。
そして、その映像は体操服を忘れただけで生徒に暴力を振るうといったものだった。
「ダメだなこりゃ……昔のはみんなこんなだよ」
映像を見ている永栄も水口も「普通こんなことするか?」と言った顔をしながら見ていた。
かなり引いているようだった……。
「確かにこりゃダメだな……引くだろ。信じられねぇ……よくこんな状態が学校として成り立ってたよな」
「ホントね、これでも何の罪にもならなかったんだろうね……学校が成り立ってたんだからね」
事実、罪にはならなかったようだ。骨折並みのケガなら罪なるだろうが、多少の暴力は無視されていた。
「そうなんだよ、罪にならないんだよ……ダメだろ? これ……」
どう考えても暴力行為は犯罪のはずなのだが……。
黙認黙認黙認…………。
昔はそんなだったようだ。
「そしてな、要するにだな。昔の学校はそんなだったんだよ、でも昔はそれが制度だからってみんなが行ってたんだよ。なんの疑念もなく……これってマズい事と思わない?」
「まあ、そうだなぁ……制度だからって従うのはマズいよな。確かにヤベェ事になる」
「“制度=正しい事”になっちゃうからね」
今までの制度や制度の結果が分かってきたのか、さっきまではしゃいでいた、水口と永栄の表情がだんだんと暗い感じになってきた。
しかし、あまり暗くもなってほしくない。
勝馬も誰もそんなに場の雰囲気を壊すつもりはなかった。
「まあ、あんまりシリアスにならなくてもいいけど要は気を付けないといけないって事だよ。俺が言いたいのは、制度を信じるんじゃなくて自分の感覚を信じろって事だよ……ホラみんなもっとなんでもいいから胃に詰め込んで」
勝馬は「もう早く何でもいいから喰え」と促した。
「こんな時代があったんだな。昔は……ガイドブック必要だな、尚更。今は規則こそ良くなったが、人間一人ひとりは変わってねぇもんな」
「それにもし規則がまた変わって、昔みたいになったらどうなるんだろうね……」
もし、また昔の規則に戻ってしまったらどうなるのか? 絶対戻らない保証なんかあるのか? 分からなかったのだ。
「たぶん戻らないだろ……昔のこと忘れなかったらな」
人間が同じ失敗を繰り返してしまうのは、昔のことをすぐに忘れてしまうからだ。
何もかもずっとどんな時でも引きずって生きるのは無理だが、全部すぐに忘れてしまうのもマズい訳だ。
しかし、もっと肝心なことは、昔は階級制度がないがために本来就いてはいけない人間でも就いてはいけない職に就くことができてしまっていたのだ。
昔の学校で(学校に限らずどんな場所でも)職員までもが不正をするのは本来その職についてはいけない人間(下等階級の)であるからなのだ。
それだけ人間をカテゴライズした階級の制度が昔から必要だったのだ。
「今考えると昔のサイトがあるって大事だよな。ああやって記録を残して昔の時代の事を後世に伝えることは本当に大事だよな。それでも学べねぇ奴はいるがな……」
「そうなんだよ。サイト、と言うか記録ってホント大事なんだよな……」
「記録がないと昔のこと忘れちゃうからね、みんな」
大概の人間は歴史書があっても同じ歴史を繰り返すだろうが、それでも歴史を伝える記録は必要だ。ウェブサイトもパソコンのデータもいろんな記録を残せるから必要である。
「つーかさ、思ったけど『自分の間違いを全然理解できない人間』ってゴリポンだろ? 忘れてたよ……アイツは“至高の無自覚野郎”じゃん!」
「うん、そうだよ~」
勝馬が「当然だよ~」的な感じの真顔で言った。
もっと身近にダメな人間が普通にいた。
「キシモト君、頭悪いしね~~」
「顔も悪いぞ、まあアイツ前こう言ったからな……『まるで~俺がデブみたいやん!』って……」
「これぞ無自覚の神様! ってな……アハハハ! ゴリポンきめぇ~~」
この無自覚は非常に問題である。それがゴリポンの事であっても……。
自覚がない事は非常に困るのだ。
「ゴリポン特別教育しないといけないよな。っていうか、アイツ学習できるんだろうかな? “無自覚”直るのかな?」
「脳みそ移植したら治るんじゃねぇの?」
「「「アハハハハ!」」」
全員爆笑した。場の雰囲気や空気の流れが変わっていた。
そしてここで一つ分かったことがある、下等な人間(ゴリポンのような)でも利点もあった それは笑いものにできると言うことだ。一応は楽しくなる(最も人を馬鹿にしてるからあまりいい事ではないが)……。
「脳移植はちょっとキツイよね~そればっかりはね~~……」
「移植しても拒絶反応あるだろうしな」
「大体いくらすんだよ? カネ掛かるうえにリスク高すぎだろ? アハハハハ!」
この時代でも脳移植は無理に近い治療だった……医学が進んでも、それは難しい。
「ゴリポンってランク何なんだろうな?」
「-3じゃねぇの?」
「そんなのないよ……」
今のところ存在価値の階級にマイナスは存在しない。
「……ってこれめっちゃ残ってるけど……」
勝馬はテーブルに目線を送って言った。
テーブルには訳も分からずに永栄が大量に注文したメニューが結構残っていた。
「大丈夫、喰うから! 心配いらねぇよ、これぐらい喰えるから」
「大丈夫だって何とかなるから……」
とか言いながら永栄と水口はやや脂汗を掻きながら、必死で余りを口に詰め込み始めた。
大丈夫とは言っているもののどう見ても苦しそうだった……。
手伝ってあげたいが勝馬は小食である。
「じゃ、俺も……」
と言いながら、勝馬はポテトを2、3本かじり始めた。
「勝馬それじゃ、足しになんねぇよ……」
「勝馬もっと一気に全部流し込まないと……」
「……」
そんなに喰えない……。
「これでかんべん……」
勝馬はすでに脂汗が顔に滲んでいた。