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Perfect World  作者: M78星雲人(光の戦士)
第1章
12/21

5-2

つづきになります。


「俺はいつでもいいぞ。来なよ」

 

 勝馬は落ち着いて余裕を持って言った。

 合内は「コイツ図に乗りやがって」と言わんばかりに激怒しながら突進してきた。


「オラァァああ!」


 そして結局、二時間後……。


「クソ……お前、どうやって……」

「……」

 合内は負けていた……。


「合内君、君は弱いな……」

「ハァ……ハァ…………黙れ……」


 そして現在。


「俺に勝てる予定だったんじゃないのか? 合内君」

「……お前……」


合内は「ふざけんな」と言わんばかりの表情で勝馬を睨んでいた。


「なぜ、ここまでできるか? って聞きたいんだろ?」

「……まあ、インチキ……ではないんだろうな?」

「ドーピングでも使ってるように見えるか?」

「……(違うだろうな)」

「まあ、もっともそんなもの使っても強くならないだろうけどな……」


 しかし見たところはどう見ても反則ではない、武器も使ってないし当然ドーピングではないだろう……。なのになぜ……。合内は首を傾げた。

 単に人間としての実力の差なのか? しかしそれにしてはやけに差が大きすぎた……。

 合内は、一度も勝馬に攻撃ができなかったのだ……。普通そんな事はあり得ないだろう。


 しかも勝馬だけの攻撃のみ一方的に入っていたのだ……。

 こんな勝負はチートと言ってもいいだろう。プロのボクサーでも一度も攻撃が入らないことは珍しいだろう……。

 合内は分からなかった。


「言っとくけど俺はただの素人だよ。不正は何もしてないよ」

 合内はついにあきらめた……。頭の回転は遅いが、この状況では何をしても無理だと気付いたのだろう。

 残念だがこれが現実である。


「……お前意外にできんだな……」

「……そうでもないよ」


 勝馬はほぼ無傷である。


「ただの『あおびょうたん』かと思ってたぜ……」

「まあ、無理もないよ……実際そんなもんだよ」


 まあ実際にやせ型はやせ型である。老人並みの体力とまでは言えないが、『あおびょうたん』とも言えないこともない。


「けどまあ今回は、俺の勝ちだよ……でなんだったっけ? 結局、このタイマンの意味は……話を戻すけど……」



 そうだ、つまり合内は、ここまでして何が言いたかったのかと言うと「勝馬が弱い」と言いたかったのだろう。

 勝馬だけに限らず、たしか……上位の人間の全てが弱いと言いたかったはずだ。

 しかし……。


「ヘッ……ヘヘッ……」


 なんか具合が悪いのかそれとも、もう何も考えることができなくなってしまったのか、合内は笑っていた……。


 それも下を向いて、直接地面に座って適当に足を広げた状態で。

 まあ、やろうと思えばこのみじめな状態をさらに追及することもできたのだが、もうそんな気は勝馬にはなかった。

 もはや、この結果以外どうでもよかったのだ。勝馬としてもわざわざ、いじめっ子のように人の失敗を思いっきり追求しようとは思わなかった。


「じゃ、結果は出たからね。君が言ってた上位の人間がどうとか、今更追及はしないけどその考えは間違ってるかもねぇ」


「……」

 合内は何も言わなかった……。と言うより、もう何も言う気力がなかったようだ。


 まあ、この勝負はインチキである。勝馬は最初から勝てたのだ。勝敗に関しては気にしなくてもいいし勝馬もしてないようで手加減をしている。

 しかし何も知らない、合内にとって敗北は敗北なのだろう相当落ち込んでいるようだ。

 それに念書も書いてしまったため、文句は言えない訳だ……。

 

「まあ、それでも不満があったらまた言いに来てもいいよ。正当な意見であれば無視することはしないから……まあでも、今度はタイマンとかはしないけどな」


 勝馬は、一応は反対意見のある人間や自分と全く合わない人間相手でも、勝馬は上位の人間であるから意見を無視することはない(もっともあまりにも不当な意見であれば無視するが……)。

 またこれからも、合内が何かしら制度に対する不満を抱えたとしたら、勝馬は相手をするつもりだ。合内の意見は“正当な意見”とはあまり言えないのだが、悪い頭でも一応、少しは考えているはずだから。


「……吉川……」

「ん?」

 合内は地面に座ったまま勝馬の名前を呼んだ。

「……いや……」

「……」

 合内は明らかに何か言いたそうだ。再戦(リターンマッチ)でも考えてるのだろうか……。

 正直勝馬としては、そんなことを希望されたくはなかった。

(再戦でも考えてるのかな……しかしなんか廃人みたいだな)


 合内は廃人のような感じだった。

 負けるはずのない相手に負けてしまったことがかなりショックなのだろう。全体的に服も汚れている上に、直に地面に座って下を向いて何もしゃべらない様子は、何日も雨ざらしになった人形のようだった。

(元気だしなよ……どうせインチキ勝負なんだからさ……このまま死なないようにね)


 こんなことは直接言うことはできないが、勝馬は一応は頭の中で励ました。

 やはりこんな状態になると合内でもなんか可愛そうになってきたようだ……。


 しかし、結局合内には何の説明もできず、合内は本当に上位の人間のことを理解できたのかどうか不明だった。しかし一応ことは(多分)済んだ。


 しかし、なんともよく分からない結果である。

 なぜこんな訳の分からないことになったかと言うと、合内は話し合いに応じるような人間ではないからだ(普通に会話をしていたらこうはならなかったはずだろう)……。

 本来はこんな一対一(タイマン)なんて方法はしなくてもよかったのだが、合内に勝馬の言葉が通じるかどうか不明だったからこうなってしまったのだ(勝馬自身が合内を嫌っていたこともあるが)。

 まあ自業自得と言えばそうなるだろう。


 どう考えても、普通はこんな結果にはならないはずだ。合内は少々イカれた人間だから仕方ないと言えば仕方ないのだが、勝馬も困るのだ……。


 しかし、とりあえず一旦は合内(アホ)を黙らせた。

 ……と言っても、どうせまたこれからヘンテコな問題が起こる可能性は大であった……。


どうもありがとうございます。

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