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Megalopolis  作者: ととのえ
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3

 メガロポリスの妄想は有能だ。産めよ育てよの時代はとうに別れを告げ、汝姦淫すれども子は作らず。都市にいるのはネクロフィリアと少年少女愛好家の大人達だけである。

 R.U.R.は人々の願いを叶えるために産まれた。人の形をしているが、其の実人ではない。中身は複雑な基盤と配線、それから電子コンピューターでできている。シリコーンの肌は滑らかで、艶めく髪の毛は上質な象牙だ。瞳には玻璃やら翠玉やらの宝石を嵌め込んでおり、深紅の唇は皆生娘の如く清らかな言葉だけを紡ぐ。おおよそ八〇年間変わることなく愛され続け、自らの主人が死ぬまで傍に居る。体内の血液は合成組織液とオイルで賄われ、動く心臓は人工の恋心だ。

R.U.R.は堕落した人々の最たる理想少女として誕生した。いにしえの、こころを持たない機械とは違う。人の言葉を理解し、笑い、まぐわい、けれどそこに醜さは存在しない。日々の生活を賄うことはない代わりに、人と同じように眠り、人と同じように愛し、愛され、色街の路肩に住み着く。

 高台のマンションは、選ばれたR.U.Rだけが住める桃源郷だった。

 私やアインツを初めとする、マンションに住む人工少女。光明街に住む物とは違い、最上の愛と堕落を保証する存在。怠惰に眠りを貪り、与えられた娼婦着に着替え、自らの主人が訪れるのを待つ。R.U.Rは人ではない。心臓と恋心を持つ機械である。R.U.Rに生活の金は必要ない。金は醜いものだからだ。R.U.Rは、自身が醜いこともなければ周りに醜いものを置くことすらない。彼女達の報酬は、すべて金糸や水晶、それから玻璃羽の蝶々の模型や、ニコゲヤナギの新芽で支払われる。

 ハインリヒを初めとして、港街には無機物愛好家が溢れかえっている。昼間は海風を受けながら健やかに働き、夜は有り余る富を自身の愛する機械に使う。マンションの少女を買うお金の無い人間は、専ら生身の体か一昔前のR.U.Rに甘んじていた。彼等の居る魔窟こそ光明街である。日の光の入らない街に時間の概念は無く、壊れかけの少女と余命幾許も無い人間が吐瀉物と廃棄物に塗れながら一生を過ごしている。

 海風を受ける港、卑の光明街、高台にあるマンションの理想。それがこの街をかたちづくる全てだった。午後に起きて、アインツと囁きを交わし、ハインリヒを迎え、ハインリヒを送り、再びアインツと眠りにつく。それは私のこうふくな一生だ。今日も明日も、永久に続くほんとうのさいわい。


 私たちは理想。

 全てのメガロポリスの象徴。

もう少しで終わります。

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