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プロローグ 【001】  『出会い……そして。』

「私にはわかります! 九十九様は私達の世界……いいえ、それだけじゃなく、もっと大きな意味での……『希望の存在』なのだと!」

「そ、そんな……『希望の存在』だなんて……そんなこと言われても……僕はそんな……大した人間じゃ……」

「大丈夫です! 九十九様が何と言おうと、何と思われていようと、私が信じているのでご心配なく!」



――男と女の『中二的』な会話。


 具体的に言うと『中年のおっさん』と『高校生くらいの美少女』の会話。


 あ、いえ……『春』を『買っている』わけではありません。


 ただし、その美少女は美少女でも…………空色のような透明感のある『あお』の鎧を全身に纏った高校生くらいの美少女だった。


 あ、いえ……『コスプレイヤー』の『春』を『買っている』というわけでもありません。


 そういう犯罪の話ではありません。


 えっ? じゃあ、どうして『中年のおっさん』と『鎧を纏った美少女』が会話しているのかって?


 本当ですね。僕自身も自分で話してて『これ、どういうシチュエーションなの?』とか『鎧を纏っている美少女とか何?』とか『新手の援交ですか?』……等、いろいろと突っ込みたくなりました。でも、そんな突っ込み事案も『今の僕の状況』からすれば納得せざるを得ない状況……というか、『納得しないと次に進めない状況』となったので、とりあえず、今は、この身に起こっている『現実リアル』を受け入れました。


 まあ、そんな説明だけされても、まだ、よくわからないですよね? なので、とりあえず『今の状況』までをお話させて頂きます。


 ちなみに、僕の名前は『薙九十九なぎつくも』。スペックは…………『三十九歳の中年のおっさん』です。


 そんな、『三十九歳の中年のおっさん』と『蒼の鎧を纏った銀髪の美少女』が、どうして『中二的』な会話を交わしていたのか……。


 すべてのはじまりは、今日の朝――。


 いつもより早起きをして、会社近くのカフェに入ろうとしたら、予想に反するいらないサプライズが起き、仕方なく、公園へと足を運ぶこととなる僕はそこで……あの『蒼の鎧を纏った銀髪の美少女』と出会った。



****************



『今日の朝』



「……いってきます」


 一人暮らしの僕……『薙九十九なぎつくも』は、いつものように六畳一間の古いアパートのドアの前で、誰も居ない部屋に向かって『いってきます』の言葉を呟く。


 誰もいない部屋に『いってきます』の挨拶をする……こんな状況を人が見たら、僕のことを寂しがり屋なのだと感じるのかもしれない。でも、それは違う。今のは小さい頃からのクセに過ぎず、僕は、別に、ひとりぼっちが嫌いなわけではない。いや、むしろ、僕は一人の時間が好きな人だ。理由は、まあ、よくある理由だけど、いわゆる『人見知り』って奴です。僕は昔から『人見知り』な性格なので、友達を作ることが苦手で、こんな年になっても友達はほとんどいない。


『こんな年』……そう、僕は今年、誕生日を迎えて『三十九歳』になった。あと一年経てば『アラウンドフォーティ』から『アラウンド』が抜けるという何とも残酷な時の流れを痛感することになる……そんな『こんな年』のおっさんです。


 時刻は朝の六時半。僕はコールセンターで派遣社員として仕事をしている。そして、これからその職場に向かうのだけれど、今日はいつもより早起きをして出てきた。理由は、最近、会社の近くにカフェができたのだが、そこは、なんと朝六時からオープンしている。何でも『朝活』なるものが都心のセレブに流行っているらしく、その客層狙いのカフェとのこと。まあ、理由はどうあれ、僕にとっても朝の出勤前にゆっくりと熱いコーヒーを飲みながら『小説』を書こうと思っていたからありがたいことだ。


 そう、僕は小説家。ついでに言うと、小説家は小説家でも『ライトノベル作家』!………………になりたい人だ。


……願望だ。


 僕は、ラノベ作家を目指し書き始めてから今年の誕生日でちょうど九年を迎える。つまり、僕が小説を書き始めたのは三十歳の頃。きっかけは、その時、ふと見た深夜のアニメ。以来、アニメが好きになり、そして、その時ハマった作品がライトノベル原作だったことを知り、今度はライトノベルにハマった。そして、何故か読むだけでは満足しなかった僕は『自分が観たいアニメを創るためにラノベ作家になろう』という『残念な病』を患い、そして……今に至る。


 大抵は、中学や高校生の時に、そういうきっかけで「ラノベ作家になろう!」と思うのが良くあるパターン……いや症例だろう。しかし、僕の場合、十代ではなく三十代で……患った。


 それにしても『ラノベ小説を書く』ことにどうしてこんなにハマッてしまったのか……自分で言うのも何だが今でもよくわからない。


 まるで、何かに突き動かされているかのように……と、一人かっこつけてみた。


 そして、すぐに、そんな『かっこつけた自分』を殴りたくなった。


 まあ、これが、いつものよくある僕の日常だ。


 ちょっとしたすし詰め状態の電車を降りた僕は、真っ先に会社の近くにできた『カフェ』へと足早に向かう。そして、十分程したところでお店の入口に到着。店の名前は『カフェ・ディライツ』。何だか、すごくおしゃれな感じだ……まあ、『ディライツ』の意味はわかりませんけど。


 そんな『カフェ・ディライツ』に入ると……入ると……入れ……入れない?!


「ド、ドアが開かない?!」


 押しても引いてもドアは開かない。鍵が掛かっているようだった。


「す、すみませーん! あ、あのう~……」


 シーン。


 ドア越しに声を掛けてみた。反応がない……『どうやら、ただのしかばねのよう……kgjwsqふじ子』。


 店の中は電気も点いておらず、人の気配もまるで感じなかった。


「!? ま、まさか……」


 僕の頭に、絶望的な不安がよぎる。そして、その不安は見事的中……。


『本日は、店長の"もの凄く独善的な都合"により午前九時からの開店となります。ご迷惑をおかけします。  スタッフ一同』


 その張り紙は、ドアの横にある看板に貼り付けられていた。


「のおおおおおおおおおおおおんんんん~~~!!!! て、てて、店長~~~~!!!!」


『独善的な都合』って何だよ、店長~~~~!!!


 出勤前の朝一発目から、まさかの『いらないサプライズ』。


「そ、そんな~……仕事が始まるまで、まだあとニ時間もあるってのに……」


 会社の周囲はオフィス街なので、駅前まで行かないとカフェやファーストフードの店はない。しかも、この時間だと早めの出勤をしてきたサラリーマンや学生が席を埋め尽くす時間でもある。


「ど、どうしよう……今から駅前に戻っても席なんて確保できる……だろうか?」


 僕は『二つの選択肢』で迷っていた。一つは席が空いていることを願い、駅前まで戻ること。もう一つは、ここの近くにある公園で、カフェに来る前に駅前のコンビニで買った昼飯用の弁当を、朝飯代わりに公園で食べ、本でも読んで仕事まで時間を潰すか……。


……僕は『後者』を選んだ。


 公園に着いた僕は、昼飯用に買った弁当を食べた後、ボーッとベンチに座り、今にも雨が降り出しそうな曇天の空を眺めていた。ちなみに、昼飯用に買った弁当なので、当然、レンジでチンもしていなかった為、冷えた弁当をそのまま流し込んだ。


「あ~……まずかった。まったく、なんて一日だ!……て言うか、まだ一日は始まったばかりだと言うのに……! 仕事が始まる前の早朝からこんな目に会うなんて……酷い、酷すぎる」


 元々、くじ運は良いほうではないが、だからと言ってこんな仕打ちはいかがなものかと心で呟く……しかし、


「まー、でも、僕らしい……か」


 すぐに納得する。


 そう、これは、まったくいつもの僕らしい、僕らしさだった。いつも何かとツイていない、というか、間が悪いというか、そんなところがあって、それは、もはや『体質』のようにさえ感じる。


 そんないつもの『残念な結果』を受け入れた後、何故か、ふと、いろいろとこれまでの自分を振り返るような気分が押し寄せてきた。


「はああ……正直、三十九にもなってコールセンターで派遣社員だなんて……もうマトモじゃないよな、僕……はは」


 僕は、三十歳のときにラノベ作家になるとその場の勢いで決め、『小説を書く時間を確保したい』という理由で、前いた会社を辞めた。


 今、思えば、そのまま仕事を続けながら書けばよかったのだけれど、仕事は保険の営業だったということもあり、人見知りな僕にとって保険の営業の仕事はただの苦痛でしかなかった。だから『ラノベ作家になる』という覚悟よりもむしろ『今の仕事から解放されたい』という気持ちが先行していたのは言うまでもない。


 まあ、苦痛でしかなかった仕事ということもあり、僕はクビになるギリギリの成績しか取れていなかったので、会社も特に止めることはなかった。だから、辞める時はあっけらかんとし、簡単なものだった。最初は、会社から引き止められると断れる自信が無かった僕は、その事をすごく心配していたのだけれど、実際は、そんなこともなく、むしろ、あっさりと、めでたく辞めることとなった。


――正直、それはそれで、五年勤めていたそれまでの自分は何だったのかと、少し、寂しさと無力さに軽く打ちのめされた。


 その後……しばらくは少しの退職金と少しの蓄えで一年程は小説を書くだけの生活を送っていた。しかし、最初の一年は正直、ほとんど何もしていなかったのに等しく、今まで仕事で朝から晩まで働いている生活をしていたこともあって、いざ、時間が空くと小説を書くよりも、これまでできなかったこと……例えば、ただ、寝て起きての生活だったり、ゲームをやったり、ラノベを読んだり、アニメを観たりと、所謂、『ニート状態』になっていた。


 そして、そんな生活が1年も続けば、当然、お金も底をつく。そして、その後はまた生活のために仕事をするのだけれど、もう前みたいな『正社員』というものには嫌気がさしていた僕は、『小説を書く時間を確保する』という自分の中の『大義名分』を言い訳に『正社員』ではなく『派遣社員』として、できるだけラクで、今の自分にもできるような仕事を探した。


 結果、それが今やっている『コールセンター』だった。人見知りな僕だけど、実は、目の前に相手がいなくて電話だけでの会話なら案外、しゃべれることを前の保険の営業をやっているときに気づいていた。当時、営業する前段階の相手とのアポイントを取るのは、けっこうスムーズにできていたからだ。まあ、その後の商談でだいたい失敗していたのだけれど……。


 とまあ、そんなこんなで僕はコールセンターの仕事を始めた。仕事を始めたおかげで生活にリズムができ始め、そこでやっと小説を書き始めることとなる。ちなみに、今の仕事は、前の時と違って特に残業も無く、きっちり定時には帰宅することができたので、生活リズムで見れば、最適な環境だった。まあ、その分、お金は以前の半分近かったので、かなり、生活レベルは落ちたけど……。まあ、でも、それは『自由の代償』だと、当時は、『新しい一歩』という希望が優先していたから苦じゃなかった。


……最初の二年くらいまでは。


 実際、書き始めの頃は『僕は今、小説を書いているんだ!』という楽しさと充実感で満たされていた。しかし、いざ、書き続けていくと、中々、うまくかけない……というより、イメージをうまく文章にできなかった。


 それもそのはず、僕は基本的な文章の書き方や表現がまったくわからないド素人だったからだ。


 僕は、独学でネットや本を見て勉強した。でも、作家を志望したのは三十歳で、昔から書いていたわけでもなく、本を読む趣味もあったわけでもなかったので、中々、理想どおりな小説を書くことができなかった。十代から書いている人ならば、近い仲間もいて、いろいろと学べる環境があったのだろうけど、今の僕にはそんな知り合いはいない。そもそも友達もいないし……。


 かと言って、この年で、どっかの作家を目指す人たちのサークルみたいなのに入るようなことはどうしてもできなかった。理由は人見知りの性格……故だ。


 それでも、僕は自分なりに書き続けた。最初は完結まで至らず、途中で終わることばかりだったけど、一年目の終わりに初めて『完結』まで小説を書き上げることができた……これが僕の初めての完結作品……処女作だ。


 ちなみに、そのタイトルは…………そ、その話は、またの機会に……します。


 その後、僕は小説を書き続けた。そして、これまでの9年間で『十二作品』を書き上げている。これは僕にとってちょっとした自慢だ(いや、完結まで創るのってけっこう大変なんですよ)。


 ちなみに、僕はネットの小説投稿サイトを利用して執筆している。別に、書いたらお金になるわけじゃないけど、定期的に『小説大賞』のイベント等もあったし、デビューできるチャンスもあったし、何よりも自分の作品を読んだ人の反応が返ってくることもあるので(超たまにですけど……)、それが楽しかったし、何より、やる気にもなった。


 しかし、九年経った今……何度もネット小説の『小説大賞』で応募したけど、入賞なんて一度もしたことがなかった。いや、それどころか、一次審査でさえ通過したことがない。


「センスや才能がない……てことだよなぁ~」


 まあ、いまさらな発言をしてみた。


「でも、そうは言っても、一人で、独学でデビューした人だっているはず。だとしたら、単に、僕のセンスや才能の問題だけじゃなく、それだけの努力をまだしていないってことなんだろうけど……でも……はぁぁ……」


 いつも、こんなことを考え始めると、最終的には自分のセンスの無さと努力不足に絶望して終わる。まあ、実際、独学で学んでデビューしている人達はいっぱいいるだろうし、そんな人達の多くは、センスよりも書き続ける努力をしてきた人のほうが多いのだろう……と思う、いや、思いたい、いや、思わないとやってられない。


「でも、さすがに九年も書いて一次選考にも引っかからない結果を見ると……」


 へこみます。


 今は、一人暮らしなので家に戻っても特に誰かに何も言われることは無い生活だけど、実家に帰れば、両親や妹に『もう、いいかげん諦めてマトモな仕事に就け』とか『妹としては、もう兄はいないと思っているから……』等と言われる始末。


 まあ、普通に考えれば至極、真っ当な反応なんですけどね……。


 そんなヘコみ気味の僕は私服で公園のベンチで座っていた。僕の職場はコールセンターということもあり、人と会う仕事ではなかったので仕事着はカジュアルな格好で問題なかった。


 そんなジーンズにパーカーの格好した僕の前では、ビシッとしたスーツを着たサラリーマン達が足早に駅へと向かっている。その中には、僕の年よりも一回り若そうな奴もいて……しかも、そんな年下っぽい奴でも、何だか自分とは住む世界が違うような……まるで成功者のように見えた。僕の身なりはジーンズにパーカーという、何と言うか……『小汚い』の一言に尽きる格好だった。ヘアースタイルも寝癖がちょこちょこあったし、また、その寝癖混じりの黒髪の中にはポツポツと白髪もいくつか見える…………時の流れとは残酷なものだ。


 なので、社会で立派に勤めている人達を見ると、僕は、つい、今の自分と比べて落ち込んでしまう。だから、できるだけ、そういう人達には意識を向けないよう……『今の不甲斐ない自分』を守るように毎日を過ごしていた。


 しかし、今日は何だかいつもと違い、かなり、気持ちが落ち込んでいた。


「もう……こんな生活をして九年も……経っているんだな」


――パキッ。


 気持ちが、心が……折れた音が聞こえた気がした。そして……、


「もう、こんな生活……やめよう。ラノベ作家になるのはもう……あきらめよう」


 まだ六分咲き程度で、花見には少し早い大きな桜の木のある公園のベンチで、僕は灰色の空を眺めながら、誰に言うでもなく、ひとり、そう呟いた。


――その時。


「やっと……みつけました」

「!?」


 突然、声が聞こえた。


 女性の……声?


 その声は僕の右横から聞こえた。振り向くとそこには、透き通りそうな程の透明感の高い『蒼』の鎧を纏う銀色の髪をなびかせた美少女が…………近距離で、顔を近づけていた。


「薙九十九様……ですね?」

「!? う、うわあ……!!」


 僕は、その子が鼻先がくっつきそうになるくらい顔を近づけていたことにビックリして、思わず、反射的に後ろに身を引いた。あまりにビックリしたこともあり、僕のリアクションはベンチの尺では足りず、結果、地面に思いっ切り頭を打ち、そのまま…………気絶した。


 気絶する直前、目の前には倒れた僕を見下ろす『蒼の鎧を纏いし銀髪の美少女』が…………微笑んでいるように見えた。




  「更新あとがき」



お話を読んでいただき、ありがとうございます。


mitsuzoです。



2015年2月――。


ついに『新作』を投稿することができました~。


今回の『新作』のタイトルは……、


『ラノベ作家(願望)がラノベの世界へ行ったとかww』


です!


まだ、書き始めで、プロットのほうも完全にはできていないので、何度も確認しつつ、ある程度、変更しなくても大丈夫な状態となったら投稿……という形となるので、更新頻度は一週間に一回あるかないか……という感じになると思います。


一応、いろんな小説大賞にも応募したいので、どんどん書いていくつもりです。


とは言え、遅筆なので、どうなるかわかりませんが、今後とも、また、よろしくお願いします。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


<(_ _)>( ̄∇ ̄)



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