怪異未満@情報管理運営室
よろしくお願いします。
全面改稿作業を進めています。
軽やかだが恐ろしく正確で早いタイピング音が情報管理運営室に響いていた。
ここはその名のとおり、この巨大な学園の中枢、又は大脳組織そのものともいえる場所で、厳格な保守設備をもって管理されている場所だ。
9月30日23:50。
数十台のパソコンのディスプレイに右下に表示されたデジタル時計の表示がその時間に変わった時に、全く乱れることなく全く同じペースで正確に響いていた小さな物音は止まり、小さな吐息が本来であればキーボードを操作しているであろう空間から一斉に聞こえ、やや物憂い雰囲気がデジタルの城の本丸であるこの室内に満ちる。
運営室そのものの証明は落とされている。
室内を照らすのは、数十台におよぶディスプレイののほのかに青い輝き。
タイピングの手を止め、一斉に吐息をついた何かたちはその室内で一斉に静かに立ち上がり、室内のホストコンピューター前へとその気配を収束させた。
姿は見えない。
ただ、確かに気配はあった。
収束する前にはここにあるパソコン全てを一斉に操作するだけの気配が。
ただ、その気配も今は一つだけ。
収束した気配は、高さにして150cmほどの位置から、小さな笑い声をあげ、
「うふふっ。楽しみだなぁ。何人、このアプリを認証してくれるかなぁ。」
とさも楽しげにつぶやいた。
「うふふっ。楽しみよねぇ。きっとたくさんの人が認証してくれるわよぉ。」
投げかけた呟きに応えるように、一斉に何かが答えを返す。
同じ波長の同じ声が予定調和のように、声を交わす。そして、小さく笑いあう。
23:55
「明日が楽しみ。」
ホストコンピューター前の何かが、楽しそうに囁く。
それは、小さな悪戯に早く気が付いてほしくて仕方がないという……そんな雰囲気を強く醸し出していた。
すべてのディスプレイに同じ画像が現れ、それは数秒と経たずその姿を消し、全てのパソコンがスタンバイモードに変わる。
ほのかな青い明りに満たされていた室内は、非常用電源と床に示された経路灯以外の明かりに照らされた空間へと変わる。
情報管理運営室の扉へ、姿の見えない何かが、経路灯の明かりを遮りながら移動し、扉の電子錠も解除せず、気配を消した。
10月1日0:00
室内の全てのパソコンが再起動し、間もなく同じ画面を示した後、間もなく再度待機モードへと移行する。
画面には、あるプログラムがこの学園に通うすべての生徒に配布されているタブレット端末に同一のアプリケーションが配布されたことを通知する文面が現れ、そして、その文面すらも画面内で溶けて消えるように消失してしまった。
――このアプリケーションがインストールされた記録は、全く存在しない。