ぱち『8』と 赤く燃えるよ 焚き火かな
〈にゃん太〉
〈放蕩者の茶会〉の一員として数々のクエストを攻略してきたベテランプレイヤー。
所属ギルドは〈ねこまんま〉と言う猫人族による猫人族の為のギルドに所属していた。〈大災害〉後、ギルドは解散してしまった
語尾に「にゃ」「にゃー」「にゃぁ」と付く緑のコーデュロイジャケットを着こなし、針金のように痩せた紳士の姿を持った身長の高い〈猫人族〉を見かけたら紳士的に対応しよう
相手も紳士的に対応してくれるはずだ
「第12回!ドキ☆エルダー・テイル追加パック!~プライバシーなんてぶっ飛ばせ!~」著作者:くずのは
より抜粋・・・・
「新しい見出しはコレで決まりでありんすな~。しかし・・・」
飢えた獣の如きに肉を喰らい付く3人に目をむける・・・
「美味しい! これすっげぇよ。にゃん太班長すごいっ! おぱんつの次くらいに愛してる!!」
「大げさですにゃぁ」
「あっ!くーさん焼けましたよ?」
「・・・・わっちは何故ここにおるんでありんしょう?」
セララに鹿肉を貰いながらも夜空に光る星を眺めるのであった・・・・
ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~
先生!林檎はオヤツにはいりますか!?
時は流れ、ここは「ライポート海峡」を渡ったばかりの海沿いの丘陵地帯。
五人が適当な丘陵地帯を見つけてグリフォンを着地させたのは既に闇が迫ってきた時刻だった。もう少しで町に着く予定であったがグリフォンがもう飛べない程の闇が空を覆っていったので 仕方なく丘陵地帯で野営の準備を始めたのだ。
直継とセララは小さな天幕を張り始め、 アカツキとにゃん太は互いに声を掛け合うでもなく、無言のコミュニケーションで森へと向かった。おそらく枯れ枝を集めに行ったのだろう。
シロエはマリエールに念話による報告を行ない、マリエールを安心させていた。
シロエの後ろから声を上げるセララからの報告も聞いて喜んでいるのが手に取るように判った
本来ならこのような遅い時間から始める野営は効率が悪い。魔法の明かりがあるとは言え、闇の中では天幕の設置も、薪集めも時間が掛かってしまう。
この分では朝までに十分な休養も取れないかも知れないが、それでも5人の表情は明るかった。何と言っても救出作戦は山場を越えたのだから。
グリフォンでいくつものゾーンをまたいできた以上、追っ手が掛かる心配はまず無い。残る任務は安全にアキバに帰還することだが、セララとすでに合流した以上、迎えに来たときに比べて速度を要求される旅ではない為、体調によってはこの丘陵でもう一泊したって構わないのだ。 そんな余裕が、みんなの表情にも表れていた。
そう一人を除いて・・・・
言わなくても判るとは思うが勿論、彼女である。彼女は火が灯ってから一歩も動いてはいなかった。皆が野営の準備をしてるのにも関わらず、只ずっと揺ら揺らと揺れる炎を見つめながら「何故?」やら「わっちの住処が」とか「お風呂が・・・」等、光の灯っていない瞳でうわ言を呟いていた
最初はアカツキも先の戦闘での連携について話を聞きたく、一緒に枯れ枝を拾うのを誘おうとしたが彼女の醸し出す暗い雰囲気に後退りしてしまったのは仕方ないことだ
一人が働かなくても野営の準備が整い、夕食の時間になったのだが、〈アキバ〉から来た3人には嬉しい事件が起きたのである。
事の発端は、にゃん太が一頭の鹿を狩って来た事から始まる。〈ススキノ〉組はさも当然のように鹿を料理7するにゃん太7を見ていたが〈アキバ〉組は奇怪な目でにゃん太の行動を見ていたのだ。
どのように調理したってこの世界では『味』と言う物は欠落している事が重々に判っていたので、にゃん太がとっている行動が無駄だと目で語っているのだ・・・しかし、次第にその目が驚きに変わっていった
自分達が『調理』して起きた現象が何故か起こらず、しまいには串に刺さった肉から肉汁が垂れ『俺は旨いぞ!』と自己主張しているかのように旨そうに見えるのだ
にゃん太に焼きあがった肉串を貰い、じっと見つめる。
臭い、焼き具合ともに完璧!・・・だが『味』がしない。所詮、臭い付きの味無し煎餅だと思い口に入れた・・・が
「美味しい!……けど。――なんでっ?」
シロエ達もこれには驚きの声を上げてしまった。
直継もアカツキもあっけにとられている。ただセララとにゃん太だけがニコニコと自慢げな表情・・・彼女は肉が刺さっていた串に林檎を刺して焼き始めているが・・・
そして冒頭へと戻る・・・
「班長っ。おい! にゃん太先生っ。何でこんな味なんだ? っていうか、何で煎餅味にならないんだよっ!? 被告の証言を求めます祭りだぜっ」
直継は両手に串を一本ずつ握りながら尋ねる。「お代わりは沢山あるからそんなにがっつかないでも良いですにゃ」というにゃん太の言葉に納得しない直継はこうして食べる分をキープしなければ安心できないようだった。
「料理するときに、素材をそろえてメニューから作りたい料理を選ぶと、食料アイテムが完成するですにゃ?」
にゃん太は慎重な手つきで内臓を切り分けながら言葉を続ける。
「そうやって料理をすると、どうやってもあの味の食料アイテムになってしまうのですにゃ。素材を集めて、メニューを開かないで直接切ったり焼いたり煮たりして料理をすれば良いんですにゃ。現実世界とまったく同じですにゃ」
にゃん太はこともなげにそう説明する
「でもそれは――」
肉を飲み込むアカツキに水筒をわたしながら、シロエが台詞の後半を引き取る。
「それはやってみましたけど、その方法でやっても結局は謎アイテムが出来るだけでは? 魚を焼こうとしたときも魚とは無関係な奇妙な消し炭か、スライムみたいなペーストが出来るだけで……ほら、くーさんが作っている焼き林檎の様にはなりませんでした・・・・・え!?」
三人は一斉に焼き林檎に嚙り付く彼女に視線を向けた
程好く焼けた林檎の表面は湯気と一緒に出た林檎の蜜でコーティングされて、まさに光る宝石のようであった
「どう言う事だよ!班長!〈ススキノ〉では調理スキルを習得できるのか!?説明を求める祭りだ!」
「にゃにゃにゃ、それは、〈料理人〉ではないか、〈料理人〉であっても調理スキルが低いために起きる現象ですにゃ。・・・くーちは例外にゃ。 ……つまり〈料理人〉が料理作成メニューを使わないで、普通の手順で料理をする。そうすれば素材の味を生かした料理になるのですにゃ」
シロエはにゃん太の言葉に呆然として、やがて納得する。
考えてみれば、食料アイテムに塩をかけて食べていた事がすでにおかしかった。もし仮に料理は料理メニューでしか作れないとするのならば、塩をかける事すらもメニューから選択しなければ出来なかったのではないだろうか?
〈料理人〉などの生産職は未習得の場合でも、経験値5程度の最小限の値は持っている。「塩をかける」という最小限の調理は、〈料理人〉ではないそのほかのサブ職業を持つ者でも出来る最高のレベルの「現実的な調理」だったのだ。
「んじゃ、もしかして班長達はさっ」
「そうですよ。直継っち。〈料理人〉ですにゃ。」「ん?わっちは違うでありんす」
「班長は兎も角、くー!お前は納得いかねぇよ!」
肉に飽きてしまった彼女は懐から林檎を取り出し今度は生で齧り始めた。その傍らには、にゃん太が、あのススキノの街で作っておいたというアップル・ブランデーが置かれ、食事を終えた〈アキバ〉組にも振る舞われて、賑やかな夜の宴は続く。
にゃん太がセララのことを3人に紹介する。
ギルド〈三日月同盟〉の〈森呪遣い〉(ドルイド)。現実の世界では女子高生。
「はじめましてっ。ご挨拶も遅れましてっ。今回は助けて頂いてありがとうございます、セララですっ。〈森呪遣い〉の19レベルで、サブは〈家政婦〉で、まだひよっこ娘ですっ」
セララはたき火の周りに車座になって座っている最中だったのに、丁寧に立ち上がってぴょこんと頭を下げた
「ほら、くーちも。」
「・・・わっちもでありんすか?ぬし達は知っておりんしょう?
「初めての方もいらっしゃいますにゃん」
「・・・わかりんした。くーでありんす。以上終わり」
(元気な女の子だなぁ・・・・くーさんは相変わらずか)
少女らしい穏やかな顔の少女にそんな感想と昔と変わらない自己紹介をする彼女にシロエは軽く笑みがこぼれる
「セララちゃんは・・・クラスの三大可愛い娘で云うと三番目なんだけどラブレターをもらう数は一番多いとかそんな感じだぜっ」
「は、はひぃっ!?」
初対面のはずの直継の、返答に困るような評価に言葉が詰まるセララ。アカツキはそんな直継の顔面に膝蹴りをたたき込もうとしたが・・・銀の閃光が直継の額に突き刺さった
「グァ!?―――って串!?あぶねぇじゃねぇか!ちびっこ!」
「いや、私はまだ何もしていない」
「あぁ?・・・じゃあ誰がーーー」
直継が振り返った先には両手に串を持ち威嚇する彼女が第二投の準備を始めていた
「ってパンツ神かよ!?なにすんだよ!」
「セラララは一番でありんす!そな微妙な評価・・・おこりんすよ!パンツ君!」
額を擦りながらも物申す直継と彼女のやり取りにセララは笑みを零す。
「ふふふ、そう言えば、にゃん太さんとくーさん、シロエさんは昔からのお知り合いなんですよね?」
「直継っちもそうですにゃん。・・・〈放蕩者の茶会〉。かつて吾が輩達が所属していた集団ですにゃ」
「なんと!主人はあの伝説的なギルドの出身だったのか!?」
「はは・・・そんなに驚く事でもないよ」
「だなー、それにギルドじゃねぇって・・・なんつーか、たまり場だよ、あそこは」
〈放蕩者の茶会〉。いまは解散してしまったが、少人数で幾たびの大規模クエストに先陣を切って攻略し行ったと言う伝説的なパーティー
それを聞いてアカツキの表情には納得と悔しさの色が浮かび上がった。前者は主人とにゃん太が見せた連携、直継とくーが見せた連携に合点がいったのだ。そして自身の未熟さをしってしまった
やるせない気持ちが渦巻く中、ふっと直継が彼女に対して言う〈パンツ神〉と言う言葉に疑問を感じた
「主人、バカ継が〈パンツ君〉なのは承知しているが・・・どうしてクーはパンツ神なのだ?」
「え!?・・・あぁ、何と言うか・・・その~」
いつもと違い歯切れの悪いシロエに疑問を感じ、視線をにゃん太にも向けるが「にゃ~」と無くばかりで、それと言った返事が返って来ない。・・・どうせくだらない事だと判っていたが、興味心の方が勝ってしまったので仕方なく直継達に聞いてみる事にした
「・・・で、どうなんだエロ継?」
「おまえ、人にモノを聞く態度じゃないよな、それ?」
「いいから教えろ、アホ継」
「たっく・・・・・たしか一日中語り続けたんだよな?」
「そうでありんすな~・・・わっちの知り得る全てのアングルをパンツ君に伝授したでおりんすぇ?」
「・・・・アングル?」
アカツキの脳内に警告が鳴った。これ以上は聞いてはいけない!また良からぬ事だ!と警告が鳴り響いていたが・・・止めるよりも速く直継の口が開いた!
「どのアングルにカメラを移動させれば画面の向こうのキャラのおパンツが見えーーーッ!!」
直継の言葉を遮るようにアカツキの怒りが篭った膝蹴りが顔面にたたき込まれた。
「膝はやめろっ! 膝はっ!」
「主人、変態に膝蹴りを入れておいた」
「そして、わっちは〈全てのパンツ信者〉にとっての生き神になったでありんす!」
「・・・主人、この駄狐に膝を入れてもいいだろうか?」
「なんで俺だけ事後報告なんだよっ!」
彼女達のやり取りは更に話を弾ませ ギルドのことや互いのこと、美味しい食事と、この世界の星空のこと。飽きもせずに話合い、夜は更けて行く。
久しぶりに食べた味わい深い食事と、オレンジ色の炎に6人の冒険者の笑い声が重なる。とうとうにゃん太が断固として就寝を宣言をしたのは、もはや東の空が白み始める頃で3人はそれぞれの寝袋にくるまって、たき火のぬくもりの中で眠りについたのであった。
・・・勿論、寝袋反対派の彼女は何故かストレージに入っていたベットを取り出しセララとアカツキを両脇に入れて休んだ事はご愛嬌
NEXT アキバ帰還
「おい!パンツ神!なんでベットがあんだよ!」
「持ってきたからに決まってありんしょう?」
「なら俺にも貸してくれ!」
「セラララ、ツッキー。一緒に寝んしょう?」
「シカトかよ!?」
「うるさいぞ!バカ継!・・・ところでツッキーとは私の事か?」
「そうでありんすよ?」
「そう、なのか。・・・でもいいのか?」
「可愛いは正義!・・・少しばかり御胸が欲しかったでありんすが」
「胸!?」




