吾が輩、にゃん太といいます。よ『6』しくお願いしますにゃ
〈放蕩者の茶会〉
活動期間およそ2年。4年前に発足された伝説的な個人プレイヤー集団である
彼らはギルドと言う枠組みに縛られず『死霊が原』や『ラダマンテュスの王座』、『ヘイロースの九大監獄』等、サーバの歴史に残る大規模戦闘の先駆け争いを規模的には弱小に過ぎない団体で行なっていた28人の集団だ
私が思うに、当時の〈茶会〉メンバーはカオスである。
リーダーは自由奔放だし、リーダー大好きメイドは恐いし、ご隠居は猫紳士だし、〈パンツ〉とか〈祭り〉を連呼する守護戦士はいるし、眼鏡の付与術師の作戦は恐いし、ハーレム製造機は居るし、同族のハーレム製造機の姉は御節介だし、THE幕末浪人の暗殺者と言う武士だろ?お前!って奴はいるし、ちんどん屋がいるし・・・・カオスだ。
でも、カオスでも・・・・楽しかったのは言いようの無い事実である
また、あの時のように楽しい世界を見せてくれるのなら・・・私はまた参加したいと思う・・・
『第12回!どき☆エルダー・テイル追加パック!~人の不幸は蜜の味~』 著作者:放蕩者の茶会〈九尾のくずのは〉
より抜粋・・
「ご隠居が昔話をするモノでありんすから ・・・こな 見出しになってしまいんした な~。しかし・・・」
視線を緊張した面立ちのセララといつも通りなにゃん太に向ける・・・
「・・・PKの準備が出来てありんせん」
彼女の思惑を裏切り、救出隊はすぐそこまで来ていたのであった・・・
ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~
うなれーてっけーんロケットパンチー(某:魔人我Z)
「まことでありんすか!?」
彼女はガラでもなく大声を上げた!予想外な事が起きたのだ。
セララを迎えに来る救出隊が既に、〈ススキノ〉に到着していると言うモノであった。本来なら喜ばしい事なのだが彼女にとっては死刑勧告でしかない。彼女の〈至福〉が今日をもって終了するのだから・・・
ニコニコと嬉しそうに報告するセララ、それを自分の事のように喜ぶにゃん太、同じように喜ぶ狐・・・しかし、心の中では号泣
それぞれ三者三様の表情を浮かべるが、彼女の心の中は救出者を一発殴らなければおさまらない怒りが渦巻いていた
|閑話休題《荒ぶる怒りを拳に込めて!》
セララが言うには今いる廃墟の近くにある「――ラオケBOX」の看板があるビルの一室で合流する予定との事・・・
本当なら自分の住処で彼女達を見送る筈であった彼女は、にゃん太に連れられるがままに合流地点のビルに来てしまった。・・・・いつもなら連れられた事に対し文句を言う彼女だが今は一向に話さず只じっと扉の方を向いていた
不思議に思ったセララが彼女に話しかけようとした時、ピクっと彼女の耳が動いた・・・
「・・・ご隠居」
「なんですかにゃ?」
「男性型、数は1、こちらに接近中。・・・救出隊は3人の筈だが?」
セララは目を大きく開き、手を口に当てた。セララの驚きは『昔の彼女を知る』にゃん太も同じであった
「これはこれは・・・暗殺者でもないのに感知できるモノなのですかにゃ?」
「・・・スキルも使わないで無謀に歩く輩ぐらいわかる。どうする?」
「ふむ・・・こちらから出向いてみますかにゃ?」
「え、えぇぇ!?」
「・・・わっち は働きたくないでありんすぇ」
「最初にセララさんに話しかけて貰い、私が相手の出方をみますにゃ」
「・・・わかりんした」
「では、セララさん、いきますにゃ」
「は、はい」
流れるように行われた策にセララは本日3度目の驚きを味わった
1度目は、彼女がいきなり真面目に話しはじめた事に、2度目は彼女の言葉を聴きすぐさま対応策を考えたにゃん太に、3度目は言葉少なくして互いにする事を理解した2人に対して・・・
(知り合いって事もあるとは思うけど・・・高レベル者ってこんなに凄いのかな?)
セララの心のうちは、新しく生まれたこの疑問とお世話になった2人の事で一杯になっていった・・・
前者は期待と不安、この人達なら〈ススキノ〉から私を助け出してくれる!・・・でも追手のデミタスも高LV者なので失敗してしまうのではないか?というもの・・・
後者は純粋に、〈ススキノ〉から出た後、2人はどうするのか?である
にゃん太は笑っていなされてしまうし、彼女に至っては『住めば都!メイドがいれば天国!』と理解不能な言葉を言うばかりでまともにとりあってくれないのだ
「―――さん?―ララさん?セララさん?」
「え、は、はい!」
いつの間にか下を向いて考え込んでいたようでにゃん太に話しかけられてやっと現実へと戻ってこれたようだ
「例の方がいましたにゃ」
「は、はい!」
長身にローブ、杖を片手に持っている男性にセララはゆっくりと近づいて行った・・・
「あ、あっ。〈三日月同盟〉のセララですっ。今回はありがとうございます」
彼女は一陣の風になった。男性が振り返った瞬間、身を屈めて一気に間合いを詰めたのだ!
「はい、って班長じゃないです「魔人拳!!!」かぁぁぁぁ!?」
魔人拳・・・・と言う名の腹パンチを男性に叩き込んだのだ!
見た目通りのひ弱そうな面立ちの男性は膝から崩れ落ちた・・・
「これが!わっちの!全力全壊!WRYyyyyyyyyyyyy!」
まるで時を止められる吸血鬼のように.勝利の雄叫びをあげる彼女に、セララとにゃん太は苦笑いしかできないのであった・・・無念、シロエぇ・・・
「って、くーさんもいるんですか!?」
なんとか持ち直したシロエは2人の知人に驚きながらお腹を擦りながらも話しかけてきた
「あっ。えっと、すみません。セララさん。僕はシロエと云います。こっちのご隠居と駄狐とは知り合いです」
「そうそう、セララさん。この子はシロエちといって、とっても賢くて良い子だにゃぁ。見所のある若者なんだにゃぁ。彼が来てくれたならば今回の作戦は成功間違いなしなんだにゃー」
「根暗で眼鏡で腹黒で貧弱でありんすが、ぬし、頭の回転の速さはぴか一でありんすぇ」
「とってつけたような猫語尾と花魁風は健在ですね御二人とも」
シロエは意地悪な笑みを浮かべる。
にゃん太のこの語尾をからかうのは、〈茶会〉時代からの彼の楽しみなのだ。そして、その後、彼女から帰ってくる罵倒も今では懐かしく思い出す
「何を言ってるのかにゃ? シロエち。これは我々猫人間の公式語尾だにゃ。にゃんとわんだふるな言語なんだろうにゃぁ」
「いやでありんすね 、甲斐性のない殿方は・・・ご隠居みたいに器をおおきぃ持ったほうがええでありんす ぇ?」
陽気に交わされる3人の応酬に、セララは目を白黒させている。それでもなんとか気を取り直したように「3人はお知り合いなんですか?」と尋ねることに成功した。
「わりと知り合いだにゃぁ。昔はシロエちに蚤取りをお願いしてたにゃ」
「そんな事をした覚えはありません」
「今をなお、わっちに酷い事をさせぇる殿方でありんす・・・しくしく」
「だから、そんな事をした覚えはありません」
どうしても救助隊に一泡吹かせたい彼女は、ある事無い事を語りシロエを陥れたいようだった
終いにはセララに抱きつきながらh泣き真似をするぐらいに・・・
「シロエちが来たということは……あとの二人は?」
「はい、直継とアカツキというーーー」
「シカトでありんすか!?」
彼女が居ては話が進まないと判断したのか、シロエとにゃン太は彼女に構うことなく脱出する手段を確認しながら部屋を後にするのであった。その間、セララはガチで落ち込む彼女の手を繋ぎながら慰めるのであった。。
自由気まま、やりたい事しかやらない彼女はガラスの心であった。
シロエとにゃん太が脱出に関する意見を求めても「およよ~」や「わっちは所詮、駄狐でありんす」などと言って取りあわなくなってしまった。折角、久しぶりに再開したのに係らず彼女は協力の姿勢をとるスタンスを放棄した
・・・・メンドクサイ狐である。それと同時にシロエは相変わらず変わっていない元〈茶会〉メンバーに口元を緩めるのであった
そして一行は、ゲートの目の前。すなわち町の出口まで歩みを進めていた
シロエ達の考えた作戦は至ってシンプル明解であった。
敵ボスであるリーダーを倒し怯んだ鋤を見て此処からエスケープを図ると言うものであり、それを聞いたセララは青ざめた
それでは作戦ですらなく、殆ど行き当たりばったりではないか。ある意味自殺行為のように思える。それを咎めようと声を出そうとするが、上手く言葉にもなってくれない。
それどころか、恩人であるにゃん太は、作戦の要となるリーダーの撃破を買って出たのだ
ベテランプレイヤーだとは聞いていたけれど、PKとの戦闘はモンスターの戦闘とは違う。〈エルダー・テイル〉がネットゲームであったときからそうだったのだ。
数少ない攻撃技を繰り返す「本能」に支配されたモンスターと違い、プレイヤーは何をしてくるか判らない。戦いの緊張感は数倍どころではなく、どんな腕利きでもミスをする――少なくとも、セララはヘンリエッタなどからそう聞いている。・・・・PK戦にこんなにあっさり頷ける人物が此処にいる事に驚きを隠せなかった
「・・・そんな無謀ですよ」
「どうしたでありんすか?セラララ」
一人静かに呟いた言葉であったが、隣で手を握る彼女には聞こえてしまっていたようだった
「・・・うまくいくんでしょうか?相手は集団に対して私達は4人。シロエさんの援軍が来たとしても6人、成功する可能性が低いですよ」
セララの手は震えていた。もしうまくいかなかったら皆、聖堂に送られてしまう。・・・そして今度は隠れ住む事はできない。逃れようの無い恐怖に一生怯えながら、〈アキバ〉にも〈三日月同盟〉にも戻れないで〈ブリガンティア〉の元、奴隷のようにすごさなければいけない!と思うと自然と手が震えてくるのであった・・・
「・・・ダメですね、助けに来てくれた方を信じられないなんて。でも私、ふあっ!!??」
――――震えていた手が止まった。いや、彼女の両手が震えるセララの手を優しく包んだのだ・・・
「心配ないよ?悔しいけど、シロエの作戦は失敗した事はない。安心して事を終えるのを待っていてちょうだい。ね?」
ドキッと心臓が高鳴った。セララの正面に立ち、優しく手を包む込む彼女は、普段の花魁口調で自由奔放な女性ではなく、慈愛に満ちて頼りになる女性の雰囲気を醸し出していたのだから・・・・
不覚にも同姓ながらときめいてしまったセララ・・・自身の胸の高鳴りのせいで後に言った彼女の言葉が聞こえなかった・・・
「・・・失敗しても私が〈ススキノ〉を支配するから」
彼女はそう言い残すとにゃん太と肩を並べるように歩きはじめた・・・にゃん太も彼女が近づいて来たのに気づき歩幅を合わせシロエとセララから少し離れて歩き始め、隣の者しか聞こえない声量で言葉を紡ぐ
「流石ですにゃ♪やはり、同姓には同姓の方がお話した方が良いみたいですにゃ」
「戯け猫、本気で言っているのなら消し炭にする所だぞ?・・・まぁ、これで心置きなく屑共を潰せるだろう?」
「貴女も手伝ってくれるのならもっと安全にいきますにゃ?」
「ふん!御免だね。そう言う舐め合いは『くー』に言え」
「・・・『くーち』も貴女と同じにゃんですが?」
「・・・『くずのは』もわっちも基本的には傍観でありんすぇ?」
「残念ですにゃ、しかし久々に食い散らかしますから、よく見ているですにゃ~。・・・セララさんの事はお願いしますにゃ」
「・・・わかりんした」
彼女は深く頷いた後、自身の懐から50cm程の扇子を取り出し軽く振って見せたのであった・・・
NEXT 脱出2
「さっき、くーさんの雰囲気が違ったような?」
「どうしたでありんすか、セラララ?」
「『ら』が一個多いですよ?・・・くーさんも真面目に話す時があるんですね!」
「わっちはいつでも本気ですぇ?」
「・・・そう、ですか。いえ、ありがとうございます!」
「?・・・変なセララララでありんすな~」