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ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~  作者: 祈願
〈乙女〉 : 狐が斬る!
42/47

『4』ロエとの再会!1万年と『2』千年ぶりでありんす!

〈口伝:その2〉


ゲームの仕様には無かった新しい技・魔法の事を言う。取得方法は判りつつある

一説に「自身の技の昇格」「枠組みを取り払う」「常識を否定する」「口伝の否定」が口伝に至る術だとされているが……どれも未確認なモノが多く、他者のマネをしたから習得できると言う訳ではない

同じ思考を持ち、同じ感情で、同じ着目でいれば習得は出来るであろうが、世界に同じ人間は一人としていない為、同じ力が得られるとは限らないだろう…


だが、忘れないでほしい……『力』は『守る』事に使えるが同時に『壊す』事にも使える事を


「秘密事項項目:世界級魔法と冒険者」著作者:くずのは

より抜粋…



「口伝の習得……アカツキやナズナが使用する口伝は『技』の見方を変える事によって習得できるモノ、セタは自身の力を現実で強化したモノ、私やシロエ…濡羽の口伝は世界を現実とし手を加えるモノ……口伝と言っても3つの種類がある」


あの討伐戦が嘘だったかの様に静寂に包まれたテラスで一人、月明かりを頼りにしながら彼女は本を書き進める…


「後者は兎も角、前者はこれから増えていくでしょうね…それで―――」


筆を止め、自身に近づいてくる影に視線は上げぬまま語りかけた……


「主役が抜けて来ていいのかしら?」

「主役はココにいるみんなだと…私は思う」

「ふふ、そうだったわね…」


視線を移した先にはアカツキが寝巻姿のまま、顔を伏せながら彼女の横に腰を下ろしたのであった




ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~


パジャマ?…わっちのパジャマは林檎柄でありんす




アカツキが〈くずのは〉の隣の席に腰を下ろしてから早10分、一言も会話がなく時は過ぎていた……

アカツキは書き物に集中している〈くずのは〉の邪魔をしてはいけないと感じながらも話をしたいと思いこの場に留まり続けているのだが、当の〈くずのは〉はそんなアカツキの事など気にも止めていないとばかりに筆を進めていた


アカツキが話しかければ、この悪循環は終わるのだが元よりコミュ障に近い彼女にとって作業に集中している人物に手を止めさせてまで話しかけるコミュニケーション能力は無い


どうするものかとチラチラと〈くずのは〉の横顔を見ながら、話しかけるチャンスを窺っているが……12月の夜のアキバ、パジャマと言う薄手の洋服だけを着た状態は流石に堪える。案の定――――


「くしゅん!」


―――寒さに体を冷やしクシャミがでるのは当たり前

身を震えさせ、手を擦り合わせて暖を取ろうとしていたアカツキの肩に淡い色をした毛布が掛けられるのは時間の問題であった


「いくら〈冒険者〉でも薄着では風邪を引くわ。使いなさい」

「す、すまない」


何処から取り出したのか判らない毛布はアカツキの体をすっぽりと覆い隠すほどの大きさで暖を取るにはちょうど良かった。暖かさに包まれ頬が緩んでいくと同時に緊張していた心も緩んでいった


「〈くずのは〉はココで何をしているのだ?」

「見てわからないかしら?本を書いているのよ」


あぁ、体は暖かくなってきたのに〈くずのは〉の態度は冷たい

だが、言葉足らずだったのは自分の方だったと開き直り、更に〈くずのは〉に話しかける


「どうしてココで?…寒いだ、ろ?」


最後の言葉が疑問形になってしまうのは仕方がない事であった。〈くずのは〉は、自身の尻尾を巧みに体に巻き付け暖を取っていたのだ……自給自足、その場合『自給自温』だ


「そうね…人には見せられないモノを書いているから、と言う事にしておくわ」

「そう、か……なら仕方がないな」

「ええ、仕方がないわ」


特別、追求するつもりはなかった。内容が気にならないと言えば嘘になるが、アカツキの目的は違うところにあり、先の内容は話かけるキッカケになればよいとしか考えていないからだ


「主君は…いまどうしているのだろうな?」

「さぁね、連携を取らない屑やステータスが前回と変化したレイドボス、更には小難しい交渉相手に苦戦しているんじゃないかしら?」

「…直継はどうしているかな?」

「さぁね、無意識的に現地に女でも作って迷惑をかけられているんじゃないかしら?」

「………なにか知っているのか?」

「さぁね、何も知らないわ」


適当に返答されているのはわかっているが、やけに具体的な返答内容にアカツキは頬を引き攣らせてしまう。が―――


「…シロエの元に行きたいかしら?」


〈くずのは〉が初めて本から視線を外しアカツキの目を見て話しかけてきた事によって疑心な思いと思考が吹っ飛んでしまった


「私なら時をかけずに転送する事が出来るわ。貴女の主の元へと…」


彼女の言う事は理解できる、今を尚強大な敵と戦っている主君の元へと送ってくれると言っているのだ。主君達が大規模戦闘で得た〈グリフォンの笛〉で、いや、彼女なら本当に時をかけずに主君の元へと送ってくれるだろう。……あの時は力も覚悟も足りなく主君に連れて行って貰えなかったが、今なら私にもやれる事があるはずだッ!………即答でYESと答えた








んだろうな、昔の私なら……


「お前は意地悪だな。…私はココでやる事がある」

「ふふふ、ごめんなさいね?性分なの」


〈くずのは〉は口を手で隠しながら笑っている、たぶん私も笑っていたと思う

私は主君にレイネシアの助けになってほしいと言われた。…最初は、不満はあったが今は違う

主君との約束だけではなく、レイネシアの友として助けたいと思っている。私だけじゃない…ここにいる全ての人達と一緒にレイネシアを助けていきたいと思っているんだ

……だから主君の所にはいかない。主君を信じココでレイネシアを守る事が私の今やるべき事なのだから…


その事を気付かせてくれたみんなには感謝している。もちろん、私とみんなを結ぶ架け橋になってくれた〈くずのは〉には同じギルドに所属する仲間として仲良くしていきたいと思っている


……だからこそ、あの頃きく事の出来なかった事を聞こう


「……口伝は実在したな」

「そうね、貴女の成長は素晴らしいモノだったわ」

「主君の言う事は正しかった」

「…素直すぎる事は良くない事よ、たまには疑いさない」

「でも、実在した。だから今から言う事も正しいのだろうな」

「……」


〈くずのは〉は茶々を入れない。いまから私が言う言葉を察しているのであろう


「『口伝を誰よりも把握しているのは〈くずのは〉だ』…主君はそう言っていた」

「……」

「ぶしつけの質問で申し訳なく思う。だが聞きたい……口伝とはなんなのだ?」


視線が重なり合う。私もだが、〈くずのは〉も決して逸らす事無くただジッと見つめ合った

そして、〈くずのは〉の方から視線を逸らすとタメ息を一つこぼし「シロエにはお仕置きね」とぼやくと、再び私の目を見て口を開いた


「昔の貴女ならば教えなかった事だけどいいでしょう……私の持論で構わないかしら?」

「あぁ」


手に持っていた書物を懐にしまい、何故入っているのかわからないが、今度は卵を取り出して私に手渡してきた


「貴女…コロンブスの卵は知っているかしら?」

「?」


最初、〈くずのは〉が何を言っているのか判らなかったが、彼女に問いだされたモノは有名な話であり、私も知っていたので、卵の尻を潰してテラスの手すりに立たせた


「コロンブスが卵の尻を潰して立ててみせたという逸話だったな」

「そうよ…私はね、口伝はそういうモノだと思っているわ」


〈くずのは〉は、手すりに立たされた卵を手に取り、月に照らし始めた


「一見簡単そうなことでも,初めて行うのは難しい。ナズナの口伝も貴女の口伝も蓋を開けたら簡単なモノが証拠よ」


簡単と言われ眉間に皺が寄ってしまったが、〈くずんは〉の訂正は早かった


「言葉が足りなかったわね、ごめんなさい。そこに行き付く為にはそれ相応の努力が必要だったでしょう。でも…セタやナズナが言っていた言葉が口伝の全てを語るわ」


〈くずのは〉の口から出てきた人物は、私に口伝習得のヒントをくれた人達…


「『口伝をくだらないと言えることが本当に口伝』…口伝が自然発症なモノではなく使い方を変えて使った技が口伝になっていた。『強く望み、そのために考え続けること。諦めずに、鍛錬を続けること』…自分の力を信じ現実に適応させたら口伝となって表れた」


二人の言葉は私の心に深く刻まれている。『口伝』へと導かせてくれた言葉だ


口伝とは〈エルダー・テイル〉におけるシステムを理解し、〈大災害〉の変化を越えたその先で、個人が努力によっていたるひとつの境地。それは些細な工夫 でもあるし、修練の結果でもある。たとえばにゃん太老師の料理が、老師のサブ職〈料理人〉と老師本人の実際の技量の結合であるように、あらゆる口伝は気づきと本人の研鑽で完成する。


誰かから口先で解説を受けたから使えるようなモノではない、ゲームシステムから許可されれば、レベルアップのように一瞬で身につくものではない。

口伝は口伝を得ようとは思わず、ただひたすらに悩み、己を鍛えたその先にある。

それはこれで上級の〈冒険者〉だなどといたずらに誇るための力ではなく、もっと大事な、あの日に触れたなにかの欠片なのだ


だからこそ…私は…〈くずのは〉の口から〈くずのは〉の思う口伝を聞きたい…


「私が思う口伝とは…現実(ゲーム)の常識を壊し、ゲーム(現実)にする事よ」


現実(ゲーム)を壊し、ゲーム(現実)にする……常識を取り払い、新たに作り直す…

それが〈くずのは〉の『口伝』に対する答え……


「…〈くずのは〉も使え、いや使えるのだろうな」

「ふふ、どうかしら?とりあえず〈記録の地平線〉ではシロエと貴女…そして猫老人が使えるわ」

「料理、のことだな」

「あら、気づいていたのね?」

「……少し前の私だったらわからない事だ」


誰が思うであろうか……

口伝が強力な攻撃技や魔法だと噂だっていると言うのに普段おいしく口にしている料理が口伝の恩恵であると言う事に…


「話過ぎたわね。…私は休むわ」


貴女も早く戻りなさいと肩に優しく手を置き〈くずのは〉は立上ると、レイネシアの執務室へと足を進めていった


…欲を言えばもっと話したい事はある。もっと聞きたい事はる。だけど…今日は―――


「きょ、今日は〈くずのは〉の事を知れて良かった!また…また話そう!」


今日はこれで十分であった。別に二度と話せない訳ではない!私達は同じギルドの仲間であり―――友達なのだから


私の言葉を聞いて立ち止まった〈くずのは〉は、猫背になりながら振り返り、手に持った卵を片手で器用に割ると大きく開いた口の中に落とし、私に笑いかけた


「うにゃ~♪今度はわっちの事も知ってほしいでありんすよ?」

「ッ!?あぁ!もちろんだ!」


そうだとも!私はまだ〈くずのは〉の事も〈くー〉の事も何も知らない

だからこそ…私達は歩み寄る事が出来るのだ


アカツキは大きな毛布を引き摺りながら、彼女の後に続く・・・


途中退場した小さな忍と途中参加した9本の尻尾を振る狐の加え、共に戦った少女達は、レイネシアの客間と執務室を占拠して、昼過ぎまでパジャマで騒いだのであった


後に、ささやかで小さな討伐隊に参加した少女達は、水楓の乙女と呼ばれる様になったのであった



























時は数日たち・・・・・



「もうそろそろですね、マリエ?」

「そうやね。…グリフォンちゃんも後もう少し飛べたら良かったのにぃ」

「まぁ、野営をする距離でもありませんですし、シロエ様達も早く帰りたいでしょう」


日が暮れるまであと一時間二時間ほどであろうけれど、様々な色合いのコートを来た一団…〈記録の地平線〉と〈三日月同盟〉の面々がアキバの町の外に集まり、長きに渡る戦いを終えて帰還してくる人達を待ち望んでいた


「シロエさんと会うの久しぶりです!」

「あぁ!俺も直継師匠に修行の成果を見て貰わないとな!」

「そうさ!ギルマスも僕達の成長に驚く事だろう!」

「もう!ルディ~、修行の成果もいいけど、今日はご飯が先でしょ!」

「今日は〈三日月同盟〉との合同でお帰りなさいパーティーですもんね!にゃん太さん!」

「そうですにゃ~、吾輩もシロエっち達の為に腕を振るいましたにゃ」


待ち望んだ人の帰還に少年少女達は笑みを浮かべる。いな、浮かべるのはここに集まった全員であった……二人を除いて


「……顔の表情かたいわよ」

「そ、そんな事はない!き、今日が一段と寒いだけだ!」

「はぁ~…私を引っ張り出したと思ったら、こんなくだらない事で読んで……殺すわよ?」

「そ、そんな事を言ったって…クーのアドバイスなど期待できないであろう!」


一人は、寒空に呼ばれ不機嫌になり、もう一人は久しぶりに会う思い人への緊張から忙しなく表情を変えていた


「…あながち(クー)のアドバイスも捨てたモノではないわよ?」

「普段通りって…本当に普段通りでいいのか?」

「シロエ達は、アキバに居たら味わう事の出来ない『非日常』を経験してきた。ならばアキバに帰ってきたと言う『日常』は何よりの安心へと繋がる。…普段通り接してあげればシロエ達は自分達の家に帰ってきたと言う『日常』を味わえ、安心するでしょう」

「そう、なのか…」



〈くずのは〉のアドバイスに小さく頷くが、聞き覚えのある奇声に体を硬直させた

崩れかけた瓦礫の山の横から奇声を発しながら飛び出てきた人物にマリエールは声を上げる


「直継やん!」

「ぇぇぇってえぇ!?マリエさん!?」


待機組が出迎えに来ているとは思わなかったのか、飛び出したマリエールに腕を抱きかかえられ驚く直継

……その後ろでは、唖然と立ち尽くす小竜が仲間に慰められていた


「屑が来たと言う事は、シロエはもうす……」


自分の隣にいる少女に言葉をかけようとしたが、少女の姿はなく〈くずのは〉の言葉は途切れてしまった……彼女の顔に皺が寄った。彼女にとって誰もいない場所へ話しかける行為はなにより屈辱なのであろう


「はぁ~…口伝を習得してから気配を断つのが上手くなったわね……シロエも含めてあの子もお仕置きよ」


最初に再開を果した直継は、後からやってきた見知らぬ男に抱き付かれマリエールと揉めているので完全に無視し瓦礫の山へと向かっていく


瓦礫のせいで判りずらかったが、知った匂いと動いた気配でそこに誰がいるのか見当がついたのだ


〈くずのは〉はそのまま、歩み続け瓦礫の山に隠れていた人物へと声を掛ける


「おかえり、シロエ。……随分と大人になったわね」

「ッ!…ただいま、〈くずのは〉。大人かはわからないけど成長はしたよ」


見つめ合っていた二人に帰還の挨拶をかわすのであった……


「シロエは鞭打ち。アカツキは水責め、ね」

「「なんで!?」」


・・・・・・・のであった



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