わっちの『4』福を取りんせん でくんなまし!
〈大災害〉
12番目の新拡張パッケージ〈ノウアスフィアの開墾〉適用当日に起きた、常識を越えた出来事に対するプレイヤー間での呼称。
ゲームをプレイしていたに過ぎないプレイヤーが、この異世界に引き込まれ脱出不可能になってしまった事件を差し〈大災害〉以降、あらゆる変化が〈エルダー・テイル〉の世界に巻き起こっているのであろう。
そして私が今までに感じた変化は以下の通りだ
「人格が肉体に影響を受けている」
「サブ職業のアイテム作成の縛りが緩んでいる」
と言う事だ。
まだ推測の範囲でしかない事柄だが私が考えるに〈エルダー・テイル〉に魔法等級最高ランクの世界級規模の魔法が発動した可能性がある・・・
世界級魔法・・・〈エルダー・テイル〉の世界では過去に2回発動しているが、たかがゲームの〉設定内の魔法がプレイヤーにまでも影響をあたえるとは思いたくはない・・・
真実はまだわからないが、言える事は一つある。・・・この魔法はまだ終わっていない
これから先、〈エルダー・テイル〉は私達に何を見せてくれるのか・・・誰も知らない・・・
『第12回!どき☆エルダー・テイル追加パック!~人の不幸は蜜の味~』 著作者:くずのは
より抜粋・・・
「今回の見出しは微妙ざんすな、しかし・・・」
彼女はソファーに横になったまま、尻尾の方を見つめ・・・
「もう僅か 優しくお願いしんす」
「はい!わかりました、くーさん!」
住処に新しく加わった少女に毛繕いをして貰っていたのであった・・・
ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~
第4尾 ニートの本気!・・・わっちの戦闘能力は・・・・にゃん♪
「わっ!?待ってください!まだそっちの尻尾が終わっていません!」
「ふふふ、コレはまだ違った至福でありんすね 。今度はコチラをお願いしんす」
「はい!わかりました!」
「セララさん、くーち。お茶が入りましたにゃ」
「「はーい」」
・・・・ホームドラマである
妹に世話されて喜ぶ姉を見て微笑むお爺ちゃん・・・ホームドラマである
昨日、押し掛けてきた二人に世話をしてもらっている家主の彼女は、二人を受け入れた事を心底正解だったとしみじみに感じている。何故ならセララは希望するサブ職業が取得できるまでの隙間埋めとしてサブ職業〈家政婦〉を取得し、昔からの知人のにゃん太は〈料理人〉しかも彼の作る料理には味があるのだ
なにもしなくても家は綺麗になるし美味しいご飯まで出てくる!まさに至れり尽くせり!彼女の駄目人間成長速度を爆走させるには十分にな環境になってしまったのだ
・・・セララにいたっては彼女の世話もしているので〈メイド〉の職業も選択肢にはあったであろう
そんな訳で彼女は一人では得られなかった『至福』を堪能していたのである
・・・だが彼女の『至福』は長くはないであろう。聞いた所によるとセララとにゃん太はアキバの救援が迎えに来たら2人揃ってアキバに行ってしまうとの事だ
彼女にとっては宜しくない事態だ。折角手に入れた『至福』があと数日でなくなってしまうのだから・・・
彼女は考えた・・・救援がいらない位に〈ススキノ〉を彼女自身の武力を持って更生させるか?むしろ救援に来るお邪魔虫をPKしてアキバに送り返してやろうか?などなど・・・動きたくない彼女にとっては『苦痛』な事だが『至福』がなくなるよりは断然にマシだと考えたのだ!
しかし問題が生まれた・・・彼女は〈大災害〉後、一度もフィールドには出ていないのだ
戦い方も魔法の使い方もわからない。考えて行くうちにドンドンと問題点が浮かんで来てしまった・・・・
もとより考えるのが苦手な彼女の取った行動とは・・・
「セラララ~、一緒に湯浴みするでありんす♪」
「くーさん『ら』が多いですよ?いまタオルを持ってきますね?」
・・・・現実逃避。救援が来てから考えると言うモノであった
そして、セララと一緒に入浴している為いつもよりも30分遅くあがった2人は冒頭にある様に毛繕いと言う名のブラッシングを楽しんだ後、にゃん太の淹れた『アップルティー』に癒されるのであった。
そして夕食中の話題は救出しに来る人達の事になっていた。セララ曰く「セララの所属するギルドマスターの友人で人数は3人、LVは3人とも90で腕利きの〈冒険者〉」だそうだ。
それを聞いた彼女は顔を顰めた。救出者を倒しようにもLV90。ピン切りはあるが彼女一人では対応出来ない場合、『至福』が奪われてしまう可能性が出てきたのだ。自惚れてはいないが彼女もLV90、如何様にも対処は出来ると思うが人数で来られたら一環の終わりだ。ただへさえ少ないHPバーが一気に吹っ飛ばされるかもしれないのだ!
ゲートが使えないのは事前に確認済なので、〈アキバ〉から〈ススキノ〉までは陸路、彼女達の様に特殊な移動手段を持っていない限り3週間は遠征に時間を費やす・・・
彼女は決意した!三ヵ月間、腕を磨き救出部隊を叩く事を!
「よかったでありんすな~♪」とセララに笑いかける彼女の笑みの本当の意味を知る者は誰もいないであろう・・・
月が最も光り輝く頃・・・彼女の住処には3つの寝息と・・・カチャカチャっと鍵穴を弄る金音がきこえるのみ
一つは奥部屋にあるシンプルなベットから・・・一つはほのかに林檎の臭いが染み付いたベットから・・・一つは林檎を抱えながらソファーに横になっている彼女から・・・最後の一つは出入口の扉から・・・
〈エルダー・テイル〉が現実になった今、『睡眠』は重要要素に値していた・・・だが、〈冒険者〉が・・・〈大地人〉が寝静まった夜に良からぬ事を働く輩も存在する
月には人を惑わせる魔力があると昔から伝えられているように今宵は月に魅せられたモノ達が悪事を働く為に彼女の住処に集まってきたのだ・・・
「・・・おい、開くのか?」
「俺の7サブ職は〈鍵師〉だ。・・・家の鍵くらい俺のLVでも開けられるぜ」
「へへへ・・・俺達、〈ブリガンディア〉に逆らった事を後悔させてやるぜ!」
数は三人。彼は〈ブリガンディア〉〉に所属し、ギルドマスターの命を受けて少女〈セララ〉と彼女を奪った猫人族を捜索していたが、暇潰しにPKした集団から有力な情報「東の外れにある廃墟に出入る猫人族がいる」と言う情報を仕入れ、この廃墟にやって来たのであった
「へっ!空いたぜ?」
「おう!行くか!」
「ひゃははは!寝首を狩られるとは思っていなかっただろうよ!」
音をたてずに部屋に侵入した三人組が最初に目に付いたのは、大きなソファーと|大きな毛皮のクッション《・・・・・・・・・》。辺りを見渡すと一人で使うには大き過ぎるテーブル、食器棚には数枚の食器とグラスが綺麗に並べられていた
「ビンゴだぜ!部屋を調べろ!あの猫と女は此処にいる筈だ!」
「おう!・・・しかし良い生活してやがるな、この野郎」
「へへへ、あいつ等をボスに差し出したら此処を俺達の拠点にするか!・・・居たぞ」
〈ブリガンディア〉〉の一人が開けた扉の先には幸せそうにな顔で少女〈セララ〉が眠っていた。
三人はニヤつく顔を隠そうともしないで静かにセララに近づいていった
「へへへ、静かに眠る事が出来るのは今日で最後だ」
一人は林檎を齧りながら静かに彼女に宣告した
「あっ!てめぇ!良いモン食ってんじゃン?俺にもくれよ!」
一人は既に、目標を達成したと思い、傍に置いてあった林檎を齧った
「おい!あまり食べるんじゃねぇ!・・・って言っても此処にある物は俺達のモノだったな」
一人は声を殺して笑った・・・
「ここにある林檎はわっちのモノでありんす!・・・食べ物の恨みは重いでありんすよ?」
|彼女《大きな毛皮のクッション》は鳴らないのに指をポキポキと鳴らす仕草をしながら三人の後に立って微笑んでいた・・・
「「「え!?」」」
三人組は予想外の人物の登場に驚きはしたが、直ぐに状況を理解した。1対3、しかも相手は妖術師で女。いくら高LVの妖術師でも数の暴力には勝てない存在・・・さらに此処はフィールドではない為、魔法や特技の使用は出来ない。
三人が同じ考えに至ったのだ。・・・背後に立つ女は弱者であると言う事を!
「へへへ、大人しくしてろよ?―――っ!!テメェ・・・自分の立場ってモンをわかってねぇのか?あぁ!?」
〈ブリガンディア〉〉の一人が、彼女の肩に触れようとしたが、彼女は持っていた扇子で男の手を払いのけた
彼らは弱者が歯向かった事にイラつき、彼女を見る目が鋭くなっていく・・・が
「わっち に触りんせん でくんなまし 。折角、セララに毛繕いして貰ったわっち の毛並みが台無しになりんす」
彼女には関係ない。まるで子犬に睨まれているが如しに涼しい顔をしながら尻尾を撫で回していた
彼女の態度に更にイラつく彼らはジリジリと彼女に近づいていく・・・そして・・・
「あっ!猫でありんす!」
「「「なに!?」」」
彼らは彼女が指差した方向に一斉に向いてしまった・・・向いてしまったのだ
彼らの最大の障害になるであろう猫人族に背後を取られる。彼らにとって現状、最も避けたい状態であるが故に全員が示す方向へと視線を向けてしまったのだ。・・・もし、誰か一人でも彼女から視線を放さなかった者がいれば、二ヤリと怪しく笑う彼女を見る事が出来たであろう・・・
「一夫多妻去勢拳!!!一撃必殺破壊脚!!!」
チーンーーーチーンーーー
「「ぐふ!!!」」
彼女の対男性用究極技が2人の男を捉えた!・・・2人は股間を押ええながら崩れ落ちた
・・・確認しておこう、確かにプレイヤータウンでは魔法や特技は発動出来ない。しかし、ゲームが現実になった〈エルダー・テイル〉において〈冒険者〉の行動表現力は格段に上がった。そして彼女が行った行動とはゲーム内では設定されてはいない行動、男性を恐怖のどん底に叩き落す究極にして最凶な行動・・・・・金的である
ダメージ判定はゼロ、ただ股間を蹴り上げただけなので当然ではある。しかし、2人はいまだ悶絶している
顔を蹴られ痛い!と感じる様に股間を蹴られれば痛いのだ、それはものすごく・・・ある意味で男性に対しては一撃で、しかもノーダメージで倒せる究極技であろう
男は焦った。数は1対1、だが相手は自分を一撃で仕留める事が出来る技を取得している、状況は一気に劣勢になったのだ。焦りながらも男は考えた・・・考えた末に取った行動は・・・
「覚えていやがれ!テメェ!次はこうはいかないからな!」
逃亡であった。いま危険な橋を渡る必要はないと判断したのだ。
本来の目的は〈セララ〉と〈猫人族〉を見つけ出す事、倒す必要はない・・・後日、仲間を引き連れて殺せばいいだけなのだから
男は一目散に扉へと向かって行ったが・・・敵を目の前にして背中を向けてよいのだろうか?
否、それは否!男が背を向けた瞬間、彼女は動いたのだ!
逃げる男より速く動き、手を組み、両方の人差し指だけを突き立てて・・・狙いを定め!そして!!!
「狐尾族究極奥義!『千年殺し』ぃぃぃぃぃぃ!」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
・・突き刺した。彼女はまたしても規格外な行動〈浣腸〉を最後の男に食らわしたのだ
床に崩れ落ちる3人・・・彼らはPKされずに只、悶絶するばかりである。そして3人を倒した彼女は・・・
「・・・・寝んすから後はお願いしんす ね?」
大きな欠伸をしながらソファーに戻っていったのだ。ただ一言、セララの部屋とは逆の位置にある扉に声を掛けてから・・・
そして夜が明けた時・・・彼女の住処はいつも通り平穏な空間にへと戻っていたのであった・・・
「くーさん、起きて下さい!ごはんですよ?」
「まだ眠いでありんすぅ~」
NEXT セララは今!
彼女が眠り出して数秒後・・・
セララとは逆の位置にある扉が開いた・・・
「にゃったく・・・くーちは食べたら食べっぱなしにする方なのにゃ。」
文句を言いながら次へ次へと侵入者を縄に縛っていく・・・
「時間はありませんにゃ・・・救助隊が来るまで何処かに隠さなきゃいけにゃいですにゃ。」
懐から笛を取り出し、吹く・・・
「にゃあ、おひさしぶりですにゃ?重いと思いますがこの人達を『安全で遠い所』まで運んで下さいにゃ」
笛の音色に呼び出された・・・に侵入者を運んで貰う・・・・
「にゃて、これで暫くは大丈夫ですが・・・いざとなったら貴方も手をかしてくださいにゃ?」
眠っているであろう彼女に語りかける・・・
老人は彼女の耳が動いたのを確認してから自身の部屋に戻っていったのだ・・・
・・・・後始末は他人任せ。『部屋から出たくないでござる!』