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ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~  作者: 祈願
〈海外〉 :海を渡る狐
25/47

『2』くたいは?『5』めん!無理!

〈カナミ〉

伝説の集団『放蕩者の茶会』のリーダーだった〈冒険者〉

『放蕩者の茶会』の戦果だけ見れば優れたリーダー、トップだと思われるだろう、しかし実態は180度違い、放蕩者と呼ばれる集団の中で一番、自由奔放に振舞って『茶会』をかき回していただけなのだ

はた迷惑な存在ではあったが、実力は折り紙つき、全世界〈エルダー・テイル〉でも5本の指に入るほどの実力を持った〈盗剣士〉であった

リアルの関係上、一時期〈エルダー・テイル〉を離れていたが、新しくアカウントを作り直して〈武道家〉として再出発を果たした


……放蕩者の復活だ。ことはどうであれ、彼女の存在は〈ヤマト〉の国に多大なる影響を与えるだろう






「番外!Who? So you are name?~出会いは突然襲ってくる!~」著作者:くずのは

より抜粋……







「……こりゃ~、〈茶会〉で『カーミン復活際』でもやるべきでありんすかね~?しかし」


彼女は馬に乗って自分の前を走る3人に視線を向けた


「亀、厨二、人形……また個性的なメンバーでありんすね~」

「んっ!?…で、でしょ~!面白いよね?だからーあんッ!…声掛けたんだ~」


一緒に〈白澤〉に跨ったカナミと優雅に会話を交わすが……どうやら様子が可笑しい

現に彼女から『亀』や『けろナルド』と呼ばれる青年の顔が赤い事が証拠だ……決して気候の性ではない


「でもまぁ~…暫く会わない間に随分と感度がよくなりんしたね?」

「いや~、久しぶりだからかな?あはははは」

「……俺の上で乳繰り合うのはやめろ」


空は快晴、地は荒野、馬上は絶賛乳繰り合い中、彼らの旅は順調に進んでいたのであった


「………」

「レオナルド、慣れろ。俺は慣れた」

「………僕には無理だ」


………彼らの旅は順調?に進んでいたのであった






ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~


第一村人発見!!ってなに!?残像だと!?





日本サーバー〈ヤマト〉へ行く長い旅路に同行するようになった青年レオナルド

彼はここ数日でパーティーの面々とそれなりの友好関係を築いていたと考えていた


自分の横を走るメイド服を着た少女。名前はコッペリア。

最初は何処かずれた人だと思っていたが万事控えめで、好感の持てる少女だと認識を改め交友を深めた

そんな彼女と並走するのはエリアスさん。

その設定が、妖精族と人間の間に生まれた英雄という、何というか非常にコメントしづらいものではあるが、性格自体はさっぱりした、付き合いやすいもので時たま混じる誇大妄想じみた発言に注意さえすれば、旅の道連れとしては、悪くない相手なのだった


そしてカナミ

我が儘ではあるが、それを無理強いしようとする陰湿さや、その我が儘で私欲を満たそうという強欲さは欠片も見て取れない。万人向きはいえないが、憎めなく気を使わない性格なので此方としてもありがたい

そのカナミが跨る〈白澤〉……正確には〈幻獣憑依〉を使用したカナミの知己〈召喚術師〉KR

彼は何を考えているか全くわからない人だが、その軽薄ぶりにはいつも助けられている……仲良くなりたいと思う人だ


この4人は好感を持て友好を気づけたと思う、しかし……しかし駄狐、貴様は駄目だ

この数日で起こった戦闘は勿論不参加、夜の見張りも初日だけ、こちらが話し掛けても無反応は当たり前、最近やっと話しかけられる様になったと思えば『亀』や『けろナルド』等、失礼なあだ名をからかう為だけに呼ぶ始末……絶対友達いないぞ、彼女


しかし、こういう…自分で言うのはなんだが『空気』を相手にしている様な態度をとるのは僕だけ

コッペリアやエリアスさんには少し違和感を覚えるが普通に対応している。以前カナミが「彼女は人間嫌い」と言っていたが、なぜ彼女達だけは受け入れられているのだろうか?


今更疑問に思う事ではないが、なにか理由があるのだろうか?単純に僕が嫌いなら解決するのだが、どうも胸の突っ掛りがとれない


考えが纏まらず、頭の中がぐにゃりと混ざりそうになった時、隣で走る少女から確認に意味を含めながらも声があがった


「前方に、村落とおぼしき影を感知しました」


コッペリアが指し示した先には、透き通った玻璃のような青空に、まるで白い糸のような煮炊きの煙が幾筋か上がっているのが見える


「そう、あれだ。あれが探していた村、セケックのはずだ」


KRの声が周囲の仲間たちにも同時に伝えられ、目的に付いたことを知らせるのであった





「随分とまぁ~、埃っぽいお家でありんすな~」

「雑に扱って壊すなよ……警戒されているのだからな」


日干し煉瓦や、節くれ立った木材で作られた家々を見て彼女は感想を漏らす。口には出さないが皆、同じことを思っている事であろう

カナミ達一行が訪れたのはセケックの村。何の変哲もない、〈大地人〉の手によって作られた如何にも荒野に立てられた、遊牧の民らしい村である


「警戒、か……〈冒険者〉は噂では聞いているって所か?」

「そうだ。余計な争いは起こしたくない、軽率な行動はとる「ねー! ご飯売ってるところある?」…」


レオナルドの前方を進んでいたカナミは、明るい声で〈大地人〉の男性に尋ねていた……KRの忠告を受け取る前に……

後を振り返ったレオナルドには長い首を垂れる〈白澤〉が、どうも本体を見た事はないが頭を抱えるKRに見えて仕方がなかった

しかし、垂れていたのは一瞬、次の瞬間には一気に首を上げ辺りを見渡し始めたのだ


「どうしたんだKR?」

「……〈くずのは〉は何処に行った」

「〈くずのは〉?……あぁ、クーの事か。彼女ならあそこに…ってあれ?」


レオナルドが指差した先には彼女はいなく、あるのは埃っぽい家のみ。暫くの間、頭の中に「迷子」と言う言葉が浮かび顔を青くされていたが、この数日での彼女の行動、更にはコッペリアの言葉を聞き顔を赤くさせた


「クーから伝言がありマス。「ちょっと世界の果てを見に行って来んす!」っだソウデス」

「な!?……か、彼女は団体行動って言うモノはできないのか!」


青のうち赤、レオナルドは青くさせていた顔を赤く染め上げ怒りをあらわにした


「カナミの知己と言うモノだからそれなりに年配の方だとは思っていたが、まさか彼女は子供なのか!?いや、あの傍若無人が子供な筈がない!妙に難しい言葉を並べて逃げていく狐だ!」

「世界の果て……そうか、〈くずのは〉はそのうち戻ってくるだろう。いくぞ」


彼女が言っていた言葉を呟くと何かを確信したかのように頷きKRはカナミの後を追う為に足を進めようとして……立ち止まった


「っち、馬鹿が。カナミがいないぞ」

「な!?」


レオナルドは驚き声を上げようとしたが前方方向、紹介された村長の家よりはるか先で、大きな破壊音と共に土煙が上がった。騒ぎには悲鳴も含まれている。


「エリアス」

「ああ、KR殿……カナミめ!また突っ込んで行ったな!?」


 KRとエリアスは、騒ぎへ向かって一直線へ駆け込んで行き……。


「~~~!あの駄狐共がぁぁぁ!」


レオナルドの怒りの叫びは虚しくアオルソイの荒野に響いて消えたのであった




「ん~、けろナルドの声が聞こえんすね~?お!カーミンも来んしたか」


彼女は目の前で起こっている怪奇現象を眺めらがら誰にも聴こえることなく呟いた

当然の様に、村から聞こえる悲鳴は彼女の元にも届いており、皆と違う行動をとっていた彼女は逸早く駆けつけ民家の屋根に陣取り林檎を齧りながら傍観に徹していた………助けろよ、駄狐


怪奇現象

現代科学では解明できないとされる、奇妙な現象を意味する。元がプログラムの塊である〈エルダー・テイル〉においてプロフラム構成上起きえるバグは「構成ミス」と判断され修正されるモノだが、ゲームが現実になった今、中から修正できない事を考えれば〈大地人〉や〈冒険者〉にとってバグは怪奇現象にあたるであろう

そして現在、そのバグが表立って現れた


元は〈大地人〉、職業が〈開拓民〉の少年が職業〈灰斑犬鬼〉という職業は明滅を繰り返しながら狂気な表情を浮かべ暴れまわっているのだ


「モンスター構成における対象の誤り、かしら?」


〈くずのは〉が考えたのはモンスターの復活に対するバグ

ある特定のプレイヤーが、あるゾーンの獲物を根こそぎ狩りまくってしまい、他のプレイヤーがまったく手出しできないとすれば、これはフラストレーションがたまる事になる。だからゲームの仕様上、モンスターを倒しても、そのモンスターは一定時間後に復活しプレイヤーに新しい獲物を提供する

このシステムを以前シロエが言っていたミラルレイクの賢者の話と照らし合わせ魂素材が亜人間発生の材料と考えれば、あの少年の魂を糧にモンスター〈灰斑犬鬼〉が復活されると考察したのだ


しかし、腑に落ちない点があるのか〈くずのは〉の表情は険しいままであった


「生魂を糧にする?いえ、違うわね。糧にされているのかしら?」


本来、亜人間の材料とされる魂は死魂。死んだ者の魂が使われるが生きた魂が使われている、そして未だに点滅を繰り返すステータスを見て彼がモンスターになる事を抗っている事が見て取れたのだ


「……どちらにせよ、たかが〈大地人〉。私が関与する事ではないわね」


もう興味は失せたとばかりに再び林檎を齧り始める〈くずのは〉を尻目に現場は次なる展開を迎える

騒ぎを聞きつけた一行が、カナミに助けに入り狂気に歪む少年と戦闘を開始し始めたのだ


LVは34、LV90ましてや90以上がいるこのパーティーならば楽に勝てる相手なのだが相手の姿が手を止める理由となり苦戦を虐げられる事になった

何度かの攻防ののち、レオナルドの大仰なかけ声も必殺技の名乗りあげもない言葉と共に剣が振るわれ、少年を地上に貼り付け戦闘の余波からか動けない少年を拘束する事に成功した


「コッペリア……」

「大丈夫です。コッペリアは、事態を認識しています」


少年の傍らに跪いたコッペリアは、回復呪文を詠唱する。

コッペリアが何を考えて回復しようとしているのかは判らなかったが、彼女が近づいた途端に、少年の様子が変わる。怯えたような、興奮したような痙攣は一層強くなり、声も出せないその喉からはひぅるひぅると絶息にも似た呼吸が漏れ出した。


「……七つある鐘、鳴らして褒むべきかな白き翼、打ち鳴らしたる幸い用いて御心に叶え――〈セイクリッド・キュア〉」

「ッ!?……へぇ」


屋根の上で横リなり、事を傍観していた〈くずのは〉は驚いたのちに、感心したように言葉を漏らす


「魂からの侵食、ね」


手に付いた果汁を綺麗に舐めとりながらも〈くずのは〉は怪しげに笑うのであった





事は泣きを得た一行は情報収集と先の騒動の原因を訊ねるためにセケック村の村長であるヤグドの家に訪れていた

……一行といってもKRや〈くずのは〉は其処にはいなく、KRに至っては見た目が馬な為、隣接した馬小屋に繋げられてるしだい、しかしそこは割り切って隣から聴こえる声を聞き取り情報収集に励むのであったが……


「疫鬼、か……しかし、っち!」


激しくKRは苛立っていた

理由は極簡単、馬小屋の中が騒がしいのだ。それはまるで転校生がイケメンで色気立つ女子生徒の雰囲気と酷似しているのだ


KRも男、モテることに対して嫌気がある訳ではないが……相手は馬である、嬉しくもなんともない

そんな雰囲気にKRの機嫌は底辺に達していたが、ある者の登場で底辺を貫き通した


「モテモテね、KR?子作りでもしたらどうかしら?」

「黙れ女狐。犯すぞ」

「あら、見た目も獣だけど本心も獣ね?」


口元を扇子で隠しながらKRに近づき頭を撫でようとするが、寸前の所で〈白澤〉の歯が手に喰らい付こうとしたので大人しく手を引いた


「ふふふ、冗談の通じないのは昔からね」

「貴様の冗談は裏がありそうで危険だ」

「それは、どうかしらね?」


ブルルっと息を立て上げ威嚇するが如く、睨みつけるKRに又もや口元を歪めながら笑う〈くずのは〉

KRは兎も角、〈くずのは〉に至っては先の少年の様に狂気に染まっていた


「付き合いきれん。……どうだった、世界の果ては」


〈くずのは〉は用いた隠語『世界の果て』についてKRは訊ねた


「収穫無し、カナミ達が今〈大地人〉に聞いている内容と遜色ないわ」

「随分と小さい世界だったな」

「時間が少な過ぎるわ……あの騒動もあったしね」


皮肉染みたKRの言葉に特に気にする事無く答える〈くずのは〉

二人にとってこの程度の皮肉は所要範囲なのであろう


「疫鬼、か……どう考える」

「バグね、一般的に考えたら」

「……おまえはどう考える」

「魔術の実験」

「……話せ」


有無も言わせないKRの言い様に答えるべく〈くずのは〉は〈白澤〉の背を一撫でした後、背に腰を乗せた


「あくまで推測……私が思うにアレは魔法の一種、その実験ね」

「魔法……口伝か?」

「さぁ?でも規格外であるわ。他人をモンスターに変える、もしくはモンスターの力を取り入れる魔法の類だと思うわ」

「あの小僧の呪文解除はどう説明する」

「あるソースから魂魄理論と言われるモノを聞いたわ。HPは体、MPは魂もしくは精神とも言うわ……これに基くと説明がいくわ」

「・・・」

「〈大地人〉は魂に己が情報を刻む。魂に刻まれた情報は〈職業〉、ステータスの点滅、姿の変化は無し、この二つから魂に影響を与える魔法だと想像できるわ」


〈くずのは〉は〈白澤〉の頭を撫でたが、続きを早く話せと言わんばかりに頭を振った


「もう、せっかちね?……あの〈大地人〉は戦闘前、HPMP共に消費は無かったわ、均等が取れた状態ね。でも亀の攻撃により均衡は崩された、肉体が強化された精神に着いていけなくなり自己防衛が働きシャットダウン、気絶する事を肉体は選択したわ」


ふぅっと息を吐き、そちらを羨ましそうに見つめている他の馬を嘲笑い、更に言葉を紡ぐ


「人間が自分の精神を守る為に働く自己防衛本能が掛けられた魔法に打ち勝った、人間に適用する事が〈大地人〉にも適用されるなんて驚きだわ。でも……」


〈白澤〉から飛び下り、〈白澤〉の…KRの目を見て―――


「相手も三流ね?未完成の魔法を使い情報を漏らすなんて」


―――狂気で歪んだ笑顔を向けた


「最後はお前が好きな精神論になっていたが、やけに具体的だな」

「そうかしら?シロエあたりなら思いつく推測よ」

「あいつは甘い所がある。お前みたいに冷酷には考えられないだろう」

「誉めているのかしら?誉めるなら周りのお馬さんにしなさい……今晩は寝れなくなるわよ」

「アレが誉め言葉に聴こえるのなら精神科に行く事をオススメする」


因美な笑みを浮かべながらそっと〈白澤〉から離れると扇子を開き、KRに向ける


「貴方なら言わなくてもわかると思うけど、他言厳禁よ」

「あぁ、あいつ等には狐の推測など聞かせるつもりはない」

「そう、所詮は狐の推測。……本当は呪い、疫病もしくは新パックの新しいクエストなのかもしれない」

「真相は誰にもわからない、か」


小さな馬小屋の中で狐と馬は静かに笑うのであった……



NEXT  亀?――-ふ、犬以下でありんすね




朝の出来事


  

「う~ん!気持ちいい朝だね!」

「……そうか、俺は余り寝れなかったがな」

「ッ!全世界の狐がわっちに今、言えとお告げを伝えておりんす!」

「……想像できるが言ってみろ」

「昨日は、お・た・の・し・――ガッ!~~ッ!痛いでありんす!ちんどん屋がけった~!」

「カナミ、その駄狐を黙らせろ」



狐は星にならなかった

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